第三章:天翔ける白き翼の魔導騎士/04
――――ウェイン・スカイナイトとフィーネ・エクスクルード、純白の聖騎士ファルシオンと青き魔導騎士ジークルーネ。そんな二人と二騎の短くも熾烈なひとときは……見る者全てを圧倒するほどの熱量を持った戦いだった。
風牙やフレイアらクラスメイトたちは声すら発する暇もないほどに目を奪われていて、仮にも教師であるエイジすらも我を忘れて見入ってしまうほど……それほどまでに、二人の戦いは見事なものだったのだ。
ハッと我に返ったエイジがやっと終了の号令を出さなければ、きっといつまでも戦いは続いていただろう。それぐらいに熱量のある、互角の戦いを二人は繰り広げていた。
空中戦を得意とするファルシオンと、陸上の超高速戦闘を得意とするジークルーネ。二人の高い実力も相まって、その戦いは見る者全てを魅了するような……そんな戦いだったのだ。
「ちぇっ、もう終わりかよ。折角いいトコだったってのに」
「そう言うな、一応これも授業の一環だ。私だって残念なんだぞ?」
「へいへい……」
号令が聞こえたと同時に構えを解き、滞空していたウェインはゆっくりとスタジアムの広いグラウンドに着地。最初と同じようにフィーネのジークルーネと向かい合う。
そんな二騎のナイトメイルを見上げながら、グラウンドに降りてきたエイジは「お見事です」とわざとらしいぐらいの拍手を二人に贈る。
「ウェインさん、フィーネさん、お二人とも実に素晴らしいナイトメイル捌きでした。模擬戦とはいえ、ここまでの戦いは恒例の競技会でもそう見られるものではありません。他の皆さんにとっても良い刺激になったことでしょう。お二人とも、実に見事でした」
……と、続けてエイジが賛辞の言葉を口にしたところで、遠くで鳴り響くのはチャイムの音色。五限目の授業終了を告げる鐘の音だ。
「さて、丁度良く授業時間も終わりましたね。では皆さん、教室に戻りましょうか」
そうすれば、エイジは皆にそう言って授業を締めくくる。これでナイトメイルの実技授業は終わりだ。
観客席に居たクラスメイトたちは、その言葉とチャイムの音色でやっと我に返り、席を立って教室に戻っていく。
だが……風牙だけはすぐに立たずに、未だグラウンドに立つ二騎をじっと見つめていた。
「気に食わねえ、気に食わねえが……認めるしかねえな、こりゃあ。ファルシオン……すげえナイトメイルだ、あんなの見たことねえ」
ふわり、ふわりと白い羽根が――ファルシオンの翼から放出された、白い羽根の形の余剰プラーナが宙を舞う中、風牙はファルシオンを見つめながら一人呟いて。
「けどよ、それよりも――――」
その後で風牙は向かい合うジークルーネのの方に視線を移すと、
「…………心底惚れたぜ、フィーネちゃん……俺のフィアンセに相応しい娘は、君を置いて他に居ない……!」
ニヤリと小さく笑いながら、風牙はジークルーネに……フィーネ・エクスクルードに熱い視線を注ぐのだった。
(第三章『天翔ける白き翼の魔導騎士』了)




