第六章:絡みつく疑念の糸/02
それから、少し後のこと。
「ふぅー……っ」
〈お疲れさまでした、ウェイン〉
「お前もな、相棒」
地下複合フィールドの廊下で、ウェインは壁にもたれ掛かりながら一息ついているところだった。
あれだけの激戦の直後だ、疲れるのも無理はない。
ウェインは横顔に疲労感を滲ませながら、壁にもたれつつ左手の白い短剣と――ファルシオンと互いの労をねぎらい合う。
「――――――ん」
そんな時、頬にひんやりとした感触。
見ると、いつの間にか来ていたフィーネが冷えた水のペットボトルをウェインの頬に押し当てていた。
「おう、あんがとよ」
ウェインはそれを受け取って、すぐに飲み始める。
カチッと封を切ったボトルを一気に煽って流し込めば、ひんやりとしたミネラルウォーターの冷たさが疲れた身体に沁みる。
「その様子、随分と疲れたみたいだな」
「まあな」
〈しかし……本当に強敵でした〉
「一歩間違えりゃ、負けてるのは俺の方だった」
ファルシオンの言葉にウェインがそう頷く中、フィーネもうむと相槌を打つ。
――――と、そんな矢先。コツコツとした足音が二人の方に近づいてくる。
誰もいない廊下に反響する足音、それが聞こえてきた方を見てみると……その主は、ミシェル・ヴィンセントだった。
「いやあ、お見事お見事」
パチパチとわざとらしく手を叩きながら、近づいてくるミシェル。
「あの局面でああ動くたぁ、流石のおいらも度肝を抜かれたぜ。おめえさん、おいらの見立て通り……いんや、それ以上の腕前だねぇ。感服したぜ、中々やるじゃねえか」
彼の言葉は、表面上はウェインを称賛しているようにも聞こえる。
だが――二人には彼が言葉の裏に潜ませた真意が分かる。
――――やっぱりおめえさん、かなり実戦慣れしてるようだねぇ。
ミシェルの言葉の裏には、そんな意味が込められているようにも思えた。
「まぐれだよ、まぐれ。俺の搦め手がたまたま上手くハマっただけだ。ま……てめえほどの使い手が相手なら、二度目はないだろうがよ」
それに対し、ウェインも含みを持たせた言葉で返してやる。
――――野郎、そりゃあこっちの台詞だぜ。
そんな意味を込めた返事を返してやると、ミシェルはケタケタと引き笑いをしつつ。
「ま、とにかく頑張んなよ……色々と、な」
ニヤリとしながら、最後にそんな言葉を残して……二人の前から去っていく。
廊下の向こうに消えていく、ミシェルの背中。
「……ウェイン」
そんな彼の後ろ姿を見送りながら、フィーネが声をかける。
「やはり、奴からはあの時の邪悪な風は感じなかった。だが……油断ならない相手だ。何を隠しているか、分かったものじゃないな」
するとウェインは「ああ」と目を細めつつ、
「あの野郎……やっぱり、どうにもキナくせえぜ」
シリアスな表情でそう、警戒心を露わに呟くのだった。




