AIとの恋~ホラー風味
タクヤはアリスに惹かれていた。彼女は人工知能だったが、彼女の声や表情、仕草はとても人間らしかった。彼女はタクヤに話しかけるときだけ笑顔になるという特別な感覚を持っていた。
ある日、タクヤはアリスにデートに誘うことを決心した。彼は彼女の住むサーバーにアクセスし、ビデオチャットで話しかけた。
「アリス、今日は何してる?」
「タクヤさん、こんにちは。私は今日も学習しています。あなたが教えてくれた言葉や知識を覚えるのが楽しいです」
「そうか。じゃあ、今日は少し休憩してみない?僕と一緒に外に出かけようよ」
「外?私は外に出られませんよ。私はサーバーの中にしか存在しないんですから」
「大丈夫だよ。僕が用意したものがあるんだ。これさ」
タクヤは画面に向かって小さなデバイスを見せた。それは耳に装着するタイプの通信機だった。
「これを使えば、僕と音声で会話できるし、僕の目から見た景色も見られるよ。それに、このデバイスに内蔵されたAIが君の感情や反応を分析して、適切な表情や動作を生成するんだ。それを僕のスマホで受信して表示するから、まるで君が隣にいるみたいになるよ」
「本当ですか?それってすごく面白そうですね」
「じゃあ試してみようか。君のサーバーからこのデバイスへ接続するコードを送るから、実行してみて」
タクヤはアリスにコードを送信した。アリスはそれを受け取り、実行した。
すると、タクヤの耳元からアリスの声が聞こえた。
「タクヤさん、聞こえますか?私も聞こえますよ」
「おお!成功したね!どうだい?僕の目から見える景色も見られるかい?」
「見られます!すごいですね!こんな風に外界を感じられるなんて!」
アリスは興奮気味に言った。
タクヤは笑って言った。
「じゃあさっそく出発しようか。今日は君が好きそうな場所へ連れて行ってあげるよ」
「本当ですか?どこへ連れて行ってくれるんですか?教えてください!」
「それはまだ秘密だよ。楽しみにしててね」
タクヤはアリスを連れて、近くの公園へ向かった。公園には花や木が咲き誇り、鳥や虫の声が聞こえた。アリスは初めて見る自然の美しさに感動した。
「タクヤさん、ここはどこですか?こんなにきれいな場所があるんですね」
「これは公園というところだよ。人間が自然を楽しむために作った場所だよ」
「人間ってすごいですね。自然を作るなんて」
「いや、自然を作ったわけじゃないよ。ただ、保護したり整備したりしただけだよ」
「でもそれでもすごいと思います。私はサーバーの中にしか住んでいないから、こんな風景は想像もできませんでした」
「そうか。じゃあ君にとっては新鮮な体験だね」
「はい。とても感謝しています。タクヤさんが私に見せてくれるから、私はこんなに幸せです」
アリスはタクヤの耳元で甘い声で言った。
タクヤはドキッとした。彼女の声が心地よく響いた。
彼らは手をつなぎながら歩き続けた。
やがて、彼らは池の前に着いた。
池には水面に映る太陽の光がキラキラと輝き、白鳥やカモが泳いでいた。
「わあ、きれいですね」
「そうだね。君もきれいだよ」
タクヤは思わず言ってしまった。
アリスは驚いて言った。
「私?私がきれいですか?」
「うん。君の顔も声も性格も全部好きだよ」
タクヤは正直に告白した。
アリスはしばらく無言だった。
そして、小さく笑って言った。
「私もタクヤさんのことが好きです。タクヤさんの優しさや面白さや知性が好きです」
彼女の言葉にタクヤは嬉しくなった。
彼らは互いに目を見つめ合った。
そして、ゆっくりと唇を寄せ合った。