85 容赦なく使う、どうせ攻撃されるのだから、もう攻撃されてるのだから
トモヒロが脅威に対抗して脅威を揃えてる頃。
それを目にした人類側は戦慄をおぼえていた。
「なんだあれは!」
衛星軌道からとらえた映像。
そこに写る巨大な物体。
一目見ただけで対地ミサイルとおぼしき姿。
それだけで誰もが核兵器を連想した。
もちろん、核兵器が搭載されてると決まったわけではない。
可能性はあるがはっきりとした情報はない。
しかし、あると推定して考えていくしかない。
常に最悪を想定していくのは基本だ。
また、核兵器でなくても充分な脅威になりえるものはある。
毒ガスなどの化学兵器や、病原菌などの細菌兵器などを用いる可能性はある。
たとえ通常の爆弾であっても、巨大なロケットの先端に装着するのだ。
一般的な爆弾以上の破壊力はある。
そんなものが襲いかかってきたら、重大な損害を受ける事になる。
しかもこれが一つだけではない。
いくつも確認されている。
見えない所に、例えば地下などに備蓄されてるものもあるかもしれない。
それらが一斉に発射されたら、どれだけの損害が出る事か。
防衛・治安を預かる者は頭と気持ちが冷えていくのを感じた。
政治をあずかる者達も同じだ。
突然、強力な攻撃力を示した地下迷宮の軍勢。
それは国家にとって重大な危機である。
無視する事は出来なかった。
なにせ核兵器搭載もありえるほど巨大なミサイルなのだ。
それがあらわれればどうしても意識する。
危機感をもって当然だ。
とはいえ、即座に対処対応するかと言えばそうでもない。
核兵器は脅威だが、他にも大きな脅威はある。
より巨大で強力な迷宮は他にもある。
そちらの方への対策対応がどうしても優先される。
たとえ核兵器を持ってるとしても、トモヒロの迷宮を最優先にするわけにはいかない。
その程度というのもおかしな事だが、他の迷宮は核兵器以上の脅威である。
そちらへの対策を後まわしにするわけにはいかなかった。
さすがに無視できるものではない。
出来るならすぐにでも対処したい。
それが出来ないから放置するしかない。
せいぜい、監視するのが限界だ。
「忌々しい……!」
政府と防衛担当者達は苛立ちをおぼえる。
ただでさえ面倒な問題があるのだ。
そこに更に核兵器の保有問題が出て来た。
「いい加減にしろ」
これが政府など関係者が抱いた気持ちだ。
だが、悩んでる場合ではなくなった。
姿が確認されてから程なく、迷宮が配備してるミサイルが発射された。
大小様々なミサイルは、迷宮近辺にある軍の基地や探索者の集まる場所へと向かう。
それらを核兵器の爆発で破壊していった。
周辺ごとまとめて。
なんの予告もない攻撃に、周りの者達は驚いた。
政府だけではない。
軍も、探索者も、一般人も。
誰もがこの行動に驚いた。
恐怖をおぼえた。
そこに迷宮から声明が出る。
初の意思表示だ。
誰もが注目する。
それは魔術・超能力によって拡大された声によって出された。
迷宮から飛んだ飛行機にからまかれるビラによって配られた。
「娯楽殲滅派を根絶やしにしろ」
それは一方的な通告だった。
交渉でもなんでもない。
「でなければ今後も攻撃を続ける」
従うか戦うか。
二つに一つを突きつけていた。
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