80 特にする事もなくなった日々
「暇だ……」
迷宮の階層を増やす日々が続く。
探索者などが押し寄せる事もないので、迷宮は平和なものだ。
おかげで自堕落な日々を送る事が出来る。
漫画やアニメも見放題だ。
見ることも出来ずに積み上げ、重ねたままになってる作品はない。
その分、暇だった。
やる事がほとんどない。
全く何もしないわけではないが、やるべき仕事はほとんどない。
一応、最下層と地上にいる者達の調査などはしている。
悪さをしてる奴がいないかは見張ってる。
だが、あえて面倒な事をしようという者はいない。
やらかせば即座に処分されると知っているのだ。
危険に挑戦しようなどと馬鹿な事をする者はいない。
それでもやらかす者がたまにいる。
そういった者は容赦なく処分する。
しかし、そんな挑戦的すぎる者は極めて少ない。
ありがたい事である。
迷宮周辺の警戒態勢の更新・増強もある。
階層の追加・増加に伴って、迷宮周辺の拡大もしている。
そう多くはないが、そこに探索者がやってくる事もある。
それに備えて、周辺警戒のゴブリンと、影響範囲内に配置する人間型怪物も増強しなくてはならない。
対策は常に怠りなく。
いつ何時攻め込まれるか分からないのだから。
やる事はある。
何もしないでいられるわけではない。
だが、それでも時間を持て余し気味になる。
費やす労力は少なくなり、余裕が生まれている。
それがかつてない程に多い。
どう使えばいいのか分からない。
こういう思考が既に、ある種のワーカホリックなのだとも思うのだが。
不安や不満が減ったのは良い。
しかし、やる事がないのもこまってしまう。
面倒な事など起こって欲しくはないのだが。
面白い催しなど起こらないものかと求めてしまう。
贅沢な話である。
やるべき事はやっている。
そして、やりたい事をやっている。
理想的な状況だ。
だからこそ暇になる。
なにかにせき立てられる事はない。
急がねばならない事はない。
それを張りがあるというのも違うだろう。
しかし、やり甲斐がなくなってるのは確かだった。
もっとも、問題が全くないわけではない。
外にも内にも何かしら煩わしい事はある。
解決しきれない事と、したと思っても出てくるものと。
迷宮の外、人類側の圧力は続いている。
こちらは解決しきれないでいる。
どうにかしたくても、どうにもならない。
やろうとしたら、人類との全面戦争になってしまう。
さすがにそこまでやる力はトモヒロにはない。
迷宮を更に巨大にすればともかく。
そして、内側の問題。
問題を起こす者を一掃しても、どうしても不満や不安は出て来る。
それらのほとんどは大きな問題になる程では無い。
しかし、現状を良しとしない者は出て来る。
理にかなってるかどうかはともかく、何かしらの思いを抱く者は出て来る。
それらの大半は無視している。
本当に聞く必要もないようなものだからだ。
また、受け入れられないものや、かなえられない事もある。
付き合いきれないものがほとんどだ。
急いで解決しなければならない問題ならともかく。
そうでないものがほとんど。
たいていが個人的な不満でしかないものなのだから。
そういったものにトモヒロはただ一言で言い返す。
「だったら、お前が迷宮を作れ」
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