74 地下活動の活性化もしつつ
諜報活動を拡大しつつ、迷宮の階層も増やしていく。
最下層の環境も改善しながら。
とはいえ、最下層の環境も悪いものではない。
問題なく生活出来るようになっている。
少なくとも生活環境は地上の世界と変わらない。
さすがに空や海といったものはない。
迷宮の機能として、こういったものを作り出す事も出来る。
だが、階層を増やす事を優先してるので、そこまで手が回らない。
迷宮内にこういった自然のある環境を作るには、多大な気力・霊力が必要になる。
今のトモヒロにはそれを用意する余裕がない。
いずれ作り出したいとは思ってるが。
なので、生活環境そのものはそう悪いものではない。
やるのは微調整くらいなものになる。
道や建物の配置変更など、見直すべき部分はどうしても出て来る。
最初期と今では人口も違う。
それに合わせた変更は何かしら必要になっていく。
ただ、この調整も気が抜けない。
ちょっとした変更で、以前よりも格段に良くなる事もある。
その逆に、わずかな変更で恐ろしいほど生活が悪化する事もある。
それを見極めねばならないので、どうしても頭も気も使う。
トモヒロの考えだけで決めるわけにもいかない。
他の大勢の住人の事を考えねばならないのだ。
出来るだけ多くの者達の意見を聞き、それでいて不要な意見は排除しなくてはならない。
この見極めが面倒になる。
迷宮と共に向上したトモヒロの能力をもってしてもだ。
全員の希望をかなえる事は出来ない。
どこかで誰かに不便を強いる事になる。
それでも、以前より悪くならないように。
可能な限り多くの者が快適になるように。
その為に何をするべきかを見つけていかねばならなかった。
これらを怠るわけにはいかなかった。
迷宮の階層を増やすのを優先したいが、住んでる者達を蔑ろにも出来ない。
そんな事をすれば、創作活動に支障が出る。
創作は、よりよい環境がなければなしえない。
衣食住が揃ってるだけではなく、快適な生活環境がなくてはならない。
余計なストレスを抱えるからだ。
ストレスは創作の妨げになる。
アイデアもやる気も出てこなくなる。
作品の品質も下がる。
トモヒロにとってそれは最悪の事態だ。
そうならないように、出来るかぎり最高の状態を作り出しておきたかった。
その為に、階層の増加を抑えて、生活環境の改善にも手を尽くしていた。
戦力拡充を考えると、無駄といえる。
それでもトモヒロは手を抜かなかった。
創作物を蔑ろにしたら、迷宮を作って引きこもってる理由を失う。
なにより、生きがいを無くす事になる。
それだけは出来なかった。
己の欲望と生存戦略の間でトモヒロは苦悩をしていく。
それもまた、望んで迷宮の主人になったためと割り切って。
なにより、面白い漫画やアニメなどのためと自分に言い聞かせて。
そんな欲望を乗せながら、迷宮の最下層は少しずつ少しずつ深く沈んでいく。
より多くの気力・霊力を手にしながら。
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