表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/110

69 より強い兵力をぶつけるという分かりやすいパワープレイ、でもこれが戦いの基本

 それはいくつも設置された迷宮の出口から出てきた。

 総勢数十人の集団であるそれは、気配を消して探索者の潜む建物へと近づいていった。



 探索者が寝泊まりしてる場所は地下最下層でも把握している。

 迷宮の影響範囲の中なのだ、様々な監視が可能だ。

 情報は事前に簡単に手に入れられる。

 それをもとに集団は探索者へと向かっていく。



 最初に犠牲になったのは、建物の外で警戒していた者達。

 それらが接近してきた者によって瞬時に殺害されていく。

 急所を瞬時に突かれた探索者達は、一瞬にして絶命していった。



 障害を排除した集団は、建物を囲んでいく。

 中に入るための準備である。

 探索者がこもってる建物を包み込むように結界を作っていく。

 気力を練り合わせ、仕組みを作っていく。

 その仕組みによって結界が動き出していく。



 その気力の動きは建物の中にいる者も察知した。

 いずれもそれなりに高いレベルの者達である。

 気力の動きを感じ取る事もできる。

 そんな探索者達は即座にその場から逃げようとした。

 あるいは結界を破壊しようとした。

 しかし、その全てが遅かった。



 探索者を襲う者達の動きは早い。

 単なる動作だけではない。

 魔術や超能力を展開する速度もだ。

 探索者が気付いた時には、すでに結界は作られていた。

 規模が大きく、構造が複雑な魔術や超能力は、発現させるまでに時間がかかるにもかかわらず。

 探索者を取り囲む者達はそれを瞬時にやってのけた。



 建物の中にいた探索者は結界の効果によって、動きを押さえ込まれていく。

 完全に動きが止まるわけではない。

 しかし、まともに動くことができない。

 身体に結界の気力が絡みつき、動きの邪魔をしていく。

 思考も同じで、頭が普段のように働かない。



 それを見て集団は次の行動に移っていく。

 爆薬を建物に仕掛け、一気に破壊していく。

 かつていた娯楽殲滅派によって荒らされた建物だ。

 誰も住んでないし、壊しても問題は無い。

 むしろ、更地にした方があらたに何かを建てるのに都合がよい。



 その為、躊躇う事無く爆破していく。

 破壊された建物の中にいた探索者の多くが巻き込まれた。



 爆破と建物の崩壊に巻き込まれた探索者の多くが埋められていく。

 本来の能力を発揮できれば、難なく脱出できただろう。

 しかし、結界で能力を大きく制限されていた彼等にはそれも難しい。

 それでも一般人よりは高い能力を発揮できたが、爆発の衝撃と崩壊から逃れる事ができる程では無かった。



 逃げ出せなかった多数がその場で殺されていく。

 瓦礫の下で身動きがとれない状態で魔術や超能力の標的にされていく。

 距離や障害物の影響を受けない術が用いられていく。

 それらによって瓦礫の下にいた者達は死んでいった。



 何とか逃げだした者達も安全だったわけではない。

 追跡する者達に追いかけられ、次々と殺されていく。

 高レベル探索者であるにも関わらずだ。

 それが抵抗もできずに殺されていく。

「なんでだよ!」

 死んでいく仲間を見て、生きてる者達は誰もが思った。

 そう思った次の瞬間に殺されていく。



 最後の一人が死ぬまで、それほど時間はかからなかった。

 結界に取り込まれた建物から脱出して10分。

 トモヒロの迷宮にやってきた者達は全員死んだ。

 呆気ないほど簡単に、迷宮攻略部隊は壊滅した。



 この事実を、政府や軍隊、娯楽殲滅派に探索者といった人類側は数日ほどして知る事になる。

 これらの死骸が迷宮の影響でゾンビ化したからだ。

 それが迷宮の影響範囲を超え、ゴブリンが制圧した地域を横断していったのだ。

 それが迷宮側からの言伝だと思いながら。

『近づいたらこうする』という意思表示だと受け取った。



 これにて軍隊は送迎に出る必要がなくなった事を知る。

 同時に、政府はトモヒロの迷宮攻略を中止する。

 事実上、断念したと言ってもよい。

 中止や中断が再開される事はほとんどないからだ。

 攻略不可能な迷宮は、基本的に放置される。

 周囲に包囲網を作って。



 そうでなくても、地下5000階の迷宮である。

 全滅する前に無線で伝えられたこの情報に誰もが戦慄をおぼえた。

 深さだけなら世界有数の迷宮。

 そんな所を攻略できる者などそう多くは無い。

 実際、攻略に向かった高レベルの探索者も全員死んだ。

 そんな所を攻略しようとすれば、より高いレベルの者を用意しなければならない。

 出来るわけがなかった、そんな余裕は今の人類には無い。



 こうしてトモヒロは、当面の安全を確保する事に成功した。

 誰からも干渉されない場所と時間を。

 いずれ再び誰かがやってくるだろうとは考えているが。

 それでも、当分は平穏に暮らしていける。



「やれやれ……だよなあ」

 迷宮最下層でしかめっ面をする。

 当分の安全は今後永久に続くわけがない。

 そう思うと不安がどうしても残る。

 それでも、今はとにかく安全なのだという事実を喜ぶことにしていく。



「そっちもご苦労さん」

 地上に繋がってる通信器具に声をかける。

「悪いけど、そのまま町の警備を頼む。

 暫くは大丈夫だろうけど」

『わかりました』

 地上にいる者達からの返事を聞いて、トモヒロは通信を終えた。

 とにかく、これで暫くは大丈夫と自分に言い聞かせて。

気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ