68 突き止めた最下層の深さ
トモヒロの迷宮に向かった探索者達は、迫る怪物を次々に撃破していく。
巨大トカゲも巨大鳥も、確かに強力だ。
しかし、レベルが充分に上がった探索者の敵では無い。
今回の迷宮攻略に参加した探索者はレベル50を超える者ばかりだ。
順調に迷宮を攻略してきた中堅どころが多い。
そんな探索者にとって、図体のでかいトカゲや鳥など造作もなく葬る事ができる。
迷宮でなら、それほど珍しい敵でもないからだ。
近づく怪物を撃退しながら迷宮へと向かう。
道に迷う事もなく出入り口に到着し、その中に突入部隊が入っていく。
中に入るのは、迷宮攻略の為にやってきた高レベルの探索者。
いずれもレベル300に到達している者達による12人編成の部隊となる。
これらの道案内として、21階まで転移できる者がつく。
転移できる者によって21階まで一気に進んだ高レベル探索者達。
彼等はそこで透視と遠視を使う。
地下がどうなってるのかを探るために。
そこで彼等は驚く。
「なんだこれ」
事前に話は聞いていた。
やたらと細長く下まで伸びてると。
しかし、そうと聞いていても異様な造りだった。
ただ1区域だけの階層が下に下に連なっている。
今まで見た事もない造りだった。
「迷宮なのか、これ?」
疑問が口をついてでた。
しかも、透視と遠視でも最下層が見えない。
地下3000階まで見てるのにだ。
「頼む、気力を回してくれ」
すぐさま仲間に頼む。
魔術や超能力を使うための気力を注入してもらい、効果を高めるために。
すぐさま仲間が透視と遠視をしてる者に触れる。
気力を注入し、透視と遠視を助ける。
効果が上がり、更に先まで見通せるようになる。
「すげえな」
ようやく見えた最下層。
その深さに驚く。
「5000階だ」
さすがに探索者も驚く。
ここまで深い迷宮はそうあるものではない。
構造自体は単純だが、深さだけならかなりのものだ。
大半の迷宮はここまで深くは無いのだから。
「どうする?」
あらためて深さが分かった事で考えはじめる。
本当に攻略するのかどうかを。
深い迷宮には強力な怪物がいるのが通例だ。
この迷宮も深さだけならかなりのものである。
相応に強力な怪物がいる可能性はある。
地下5000階。
そこまでいくと、レベル300程度では太刀打ちできない怪物がいる可能性がある。
もっと高い、世界でも最高峰にいる探索者でなければどうにもならない。
5000階というのはそういう事を考えさせる深さだ。
そこにあえて突っ込んでいくのか?
無理せず撤退する事も考えるべきではないのか?
そういう思いを誰もが持っていく。
攻略が無理だと思えるなら、挑戦する事もなく撤退する。
探索者の基本だ。
無理して突進して全滅する方が愚かなのだから。
それに、情報も手に入ってる。
地下5000階という深さが分かった。
これだけでも重要な情報だ。
あえてそこまで潜る必要もない。
この情報だけでも、そこに潜んでるだろう怪物の強さがおおよそ分かる。
残念ながら、そこがどんな状態なのかまでは分からなかったが。
最下層ともなると、様々な防衛対策が施されてる。
中身が見えない、構造が分からなくするなど当たり前のようになされてる。
こればかりはしょうがない。
それでも、階層がどれだけあるかは分かった。
今の自分達ではまず太刀打ちできないかもしれない事も。
「撤退しよう」
21階で探索者達はそう結論を出した。
即座に帰還する探索者達。
迷宮の出入り口に戻り、外に出る。
攻略は中止、帰還する事を他の者達にも伝えていく。
ただ、すぐに帰れるわけではない。
迷宮の影響範囲の外には武装したゴブリンがいる。
レベルが低下するそこでは、一般的な兵器を持ったゴブリンの方が優勢になる。
軍隊の支援がなければそこを突破するのは難しい。
この為、帰還する時には軍隊に迎えに来てもらう事になっている。
通信を入れて、それから到着を待つ。
どうしても時間はかかるが、これしか方法がない。
なので、やってくるまでは迷宮の近くで寝泊まりするしかない。
怪物が出てくる危険はあるが、影響範囲の外に出るよりは良い。
迷宮の影響範囲の中でなら、銃弾ですら回避できる。
迷宮の影響で周辺地域に自動的に発生する存在も、ここにいる者達なら対処に困る事はない。
おかしな話だが、迷宮の近くにいる方がいくらか安全だった。
泊まりがけになるが、数日分の食料は持ち込んでいる。
建物も迷宮の影響で発生している。
そのほとんどが一般的な日本の建物なのもありがたい。
オタク文化を色濃く反映してる迷宮のおかげである。
その事に一部の探索者は「これでいいのか」と思った。
だが、一般的な家屋と違いの無い構造なのは素直にありがたいと思った。
通信を入れて迎えをお願いし、到着を待つ。
あとは発生する怪物に対処しながら回収を待つ。
そんな都合の良い展開があるわけもない。
迷宮の影響範囲である。
迷宮の支配下にあるも同然の場所である。
そんな所に招かれざる客がいれば、相応の対応がされる。
迷宮の影響範囲内に泊まった最初の夜。
探索者達は早速対応されていく事になる。
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