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64 動く者は見えないが、積み上げられた物がある

 ゴブリンに制圧された地域。

 そこを突破するのは困難を極める。

 誰もがそう覚悟していた。

 だが、踏み込んで暫くして戸惑う事になる。

 抵抗らしき抵抗がほとんどないのだ。



 ゴブリンに制圧された地域には人がほとんど残ってない。

 大半が殺されてるからだ。

 わずかに生き残ってる者もいるかもしれないが、それを確かめる術もない。

 そんな所なので、進めばかなりの数のゴブリンが出てくると思われていた。



 しかし、意外な事に戦闘らしい戦闘は無い。

 道を塞ぐように瓦礫が積み上げられてたりはする。

 だが、それだけだ。

 進行を妨げるものはあるが、攻撃などはされない。



「静かなもんだな」

 予想外の穏やかさに驚いていく。

 それでも、どこかに潜んでるかもしれないので油断は出来ない。

 もしかしたら待ち伏せをしてるかもしれないからだ。



 それに、戦闘は無くても面倒ではある。

 道が塞がれてるので移動がどうしても遅くなる。

 瓦礫をどけるにしても、回り道するにしてもだ。



 道はドローンを使って偵察しながら探る事になる。

 どこか通れる道はないかと。

 残念だが、主要な道路にはほぼ確実に障害物がおかれてる。

 それらを取り除いて進むのも手間がかかる。



 ならば迂回して、と考えるがこれもそうはいかない。

 そうなると細い通りに誘い込まれる事になる。

 襲撃を受けたらひとたまりもない。



 それが無くても、延々と遠回りさせられる。

 直進すれば1キロもない道を、右に左に筆界回され、何キロも走る事になる。

 そうなれば燃料も時間も無駄に消費する事になる。



 そうなるように瓦礫を置いてるのだろう。

 制圧された地域に踏み込んだ者達はそれを察していく。

 たかがゴブリンなどと相手を低く見積もったりはしない。

 そうした侮りが命を失う事につながる。

 実際、ゴブリン程度にと舐めてかかった者がいいように弄ばれる事も多い。



 確かにゴブリンは劣ってる。

 人間に比べれば能力は低い。

 しかし、無能でもなければバカでもない。

 頭を使って行動する。

 稚拙であっても作戦を立てる。

 まともな指導者がいれば恐るべき戦力になる事もある。



 軍勢の足留めをしてるのが良い証拠だ。

 戦闘をする事無く、行く手を阻んでる。

 それも、瓦礫を積み上げるという、ある意味雑な方法で。

 高度な機械を使ったり工作をしてるわけではない。

 たんに労力を割いただけだ。

 それだけで700人の戦闘団の進軍を止めている。



 ただ、これらは事前の偵察である程度把握されていた。

 対策として、ブルドーザーなども持ってきている。

 作業に時間はかかるが、こういった工事用の車両が道を開いてくれる。



 それでも瓦礫の除去には時間がかかる。

 どうしても進行速度は低下する。

 そこに焦れったさを感じながらも、戦闘団は進んでいく。

 敵からの襲撃を警戒しながら。



 この警戒というのも厄介なものだった。

 しなくてはならないのは分かる。

 だが、警戒し続けるのは疲れるものだ。

 どこから何時やってくるのか分からないのだから。

 嫌でも周囲に気を張らねばならないし、そんな事を続けていれば気持ちがまいっていく。



 なまじ、何もされないのが辛い。

 攻撃されないから、緊張を常に強いられる。

 忍耐力をためされる事になる。



 いつ戦闘になるか分からない緊張。

 それでいて、戦闘ではない作業による疲労。

 時間を消耗させられる焦燥。

 様々なものが神経を苛んでいく。



 ようは嫌がらせだ。

 したくも無い事、しなくて良い事。

 それを強いられていく。

 道を塞ぐ障害物がその役目を果たしてる。



「迷宮と一緒だ」

 トモヒロの迷宮を知る者達がうんざりしていく。

 傷や死といった直接的な損害を受ける事は無い。

 だが、遠回りに嫌がらせによる精神的な疲労を強いてくる。

 それを迷宮の外でやられてる。

「あの迷宮らしい」

 そう愚痴るしかなかった。

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