6 住む場所、必要な施設、防衛対策
現在の最深部である地下10階。
ここにトモヒロは居室を作った。
とはいっても、最低限のベッドを置いただけ。
それを縦横高さが20メートルの空間に置いたのだ。
殺風景な事この上ない。
だが、特に贅沢がしたいわけではないので、身のまわりはこの程度で良かった。
それよりも優先しないといけないものがある。
水に食料、衣服や生活用品。
これらを手に入れねばならない。
その為の施設を最下層に作っていく。
これらを手に入れるために、上水道や商店街などを迷宮に作る事ができる。
それらを配置し、最低限の生活は出来るようにしていった。
また、こういった施設を動かす作業員も必要になる。
これも専用の宿舎も作って人員を用意していく。
不思議なことに、水源に繋がってるわけではないのに水が出る。
納品がされるわけでもないのに、店には商品がならぶ。
作業員も宿舎を用意したら自動的にあらわれた。
さらに、こういったものから出て来る下水・ゴミなども、処理場に放り込むと自動的に消えていく。
いったいどこから取り寄せ、どこからあらわれ、どこに消えていくのか?
これが謎だった。
「まあ、いいか」
考えても仕方ないと思い、トモヒロは思考を停止させた。
分からない事に頭を使っていてもしょうがない。
それよりも、目の前の問題にとりかからねばならない。
最低限の生活が出来るといっても、それだけでは足りない。
ここは迷宮で、いずれ迷宮探索者がやってくる。
それらが必ずトモヒロの生活をおびやかす。
なので、撃退する用意をしておかねばならない。
その為に、怪物を呼び出せるようにしていく。
専用の施設を作り、怪物を飼育出来るようにする。
怪物厩舎という施設を作り、怪物を受け入れられるようにする。
あとはどんな怪物を呼び出すかを決めるだけ。
ここでトモヒロは、病魔の巨人と呼ばれるものを呼び出した。
能力的にはそれほど強いわけではない。
身長3メートルほどで体格は優れているし、一般的な人間よりは体力で優ってるが。
それもレベルを上げた迷宮探索者からすれば脅威と言える程ではない。
だが、トモヒロはこれを備えてる特殊能力で選んだ。
病魔の巨人はその名の通り、様々な病原菌を体内にためている。
それらを吐き出し、周囲に病気を振りまいていく。
この病原菌、かなり即効性が高い。
病魔の巨人が吐き出す吐瀉物に当たればほぼ確実に感染し、その瞬間に発病する。
そうでなくても、長時間一緒にいるだけで高確率で病気になる。
病気そのものは即死するほど強力ではない。
だが、悪寒や発熱、吐き気など、いわゆる風邪の症状に陥る。
こうなるとどうしても本来の力量を発揮できなくなる。
能力低下を引き起こす。
しかも病気の治療は難しい。
毒や麻痺などの治療魔術や超能力は比較的低レベルでも身につける事が出来る。
しかし、病気治療の魔術や超能力は、意外と高いレベルでないと修得出来ない。
おまけに、病気への耐性というのはあまり存在しない。
毒や麻痺などの状態異常にならないようにする装備品はある。
だが、病気に対抗する装備などはあまり出回ってない。
このため、病気という状態異常は結構面倒なものになる。
対抗しづらいし、対処しにくい。
それでいて、結構大きな負荷がかかって戦闘や行動に不利になる。
しかも病魔の巨人は人間型の怪物だ。
武器や防具を装備出来る。
これらを身につけたら、戦闘力は格段に上昇する。
呼び出したり飼育する際に必要な霊気の消費や飼育費も結構安い。
おかげで、何人かをまとめて用意する事が出来る。
こういった利点を考えて、トモヒロは病魔の巨人を何人かまとめて呼び出した。
それらを怪物厩舎に放り込んでいく。
あとは敵が来た時に出撃出来るようにすれば良い。
自動的に迎撃をしてくれる。
「これでいいか」
探索者対策の戦闘部隊をとりあえず配置した。
それでも不安は残る。
強力な探索者が来たら、病魔の巨人では手に負えないだろう。
だが、その時はその時だ。
諦めて死ぬしかない。
トモヒロもある程度は腹をくくってる。
迷宮の主人になったのだ、探索者との戦闘は避けられない。
そうなったら最終的には死ぬだろうと。
それも覚悟の上で迷宮の主人になったのだ。
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