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58 行けば戻ってこれない一方通行

 見た目が滑り台になってる一方通行の通路。

 そこに入っていった6人は、急な傾斜のついてる下り坂を滑っていく。

 摩擦をなくすように霊気がにじんできて、6人は勢いよく下へと向かっていく。

 らせん状に下の階に滑りながら、6人は終点を目指していった。



 これがどこまで続いてるのかは分からない。

 透視・遠視を使って通路の先を見ようとしたが、全く見通せなかった。

 探知できる範囲を超えて階層が連なってるからだ。

 1区域だけの階層がどこまでも深く。

 分かってるだけでも何十階と。



 その1区域の全てが下り坂になっている。

 最低でも、何十階かは坂の中を下っていく事になる。

 その先がどうなってるかは、行ってみるまで分からない。



 不安がどうしても大きくなる。

 しかし、行かねばどうにもならない。

 攻略するためには、先に進むしかないのだから。



 速度が上がっていく。

 延々と下り坂が続いてるのだ、その分加速していく。

 霊気によって摩擦などの抵抗がないから、加速は止まらない。

 時速何百キロにもなり、更に速度をあげていく。

 普通なら空気抵抗だけでも相当なものだ。

 それすらも霊気が遮断していく。



 その速度で階層を超えていく。

 6人は終点までらせんを描きながら駆け下っていった。



 その終点。

 最下層の一つ上の階層。

 下り坂の滑り台の終点が近づいていく。

 加速が止まり、一気に速度が落ちる。



 急激な減速は大きな衝撃になる。

 それすらも霊気が吸収していく。

 慣性の法則すらも問題の無い程度に軽減された。



 そうして到着した最下層一つ前の空間。

 そこに設置されていた転移が発動していく。



 1区域そのものに仕掛けられた魔術・超能力。

 その場に入った者を強制的に転移させる仕掛け。

 それが発動して6人を別の場所に瞬間移動させていく。



「しまった!」

 気付いた時には遅い。

 霊気にくるまれ、転移が発動している。

 逃げる事は不可能。

 そもそも、他の魔術や超能力のように回避や抵抗が出来るものではない。

 捕まったら最後、確実に効果を発揮する。

 それが転移だ。



 恐ろしいのはどこに転移するかだ。

 罠として設置されてる転移は、たいていろくでもない所に強制移動をさせてくる。

 強力な敵がいる所や、罠だらけの空間や。

 転移自体に殺傷力はないが、行く先によってはすぐに死ぬよりも酷い場合もある。

 遅効性の毒のようなものだ。

 逃げる事もできずに朽ち果てる可能性がある。



 そんな転移につかまり、6人の娯楽殲滅派は行き先の分からない転移をしていく。

 せめてその先が安全な所であるように願いながら。



 もちろんそんな事はない。

 転移をした者達は同じ階の1区域に放り込まれる。

 場所自体、滑り台のすぐ隣だ。

 そう離れてるわけではない。

 だが、そこは迷宮の壁の中。

 土や岩とも違う、迷宮を構成する素材で出来ている。

 その中に娯楽殲滅派は放り込まれた。



 すぐさま、6人は壁と融合していく。

 分子や原子、さらにはそれよりも小さな単位で。

 壁と肉体の境目を完全に無くし、物体の一つになっていく。

 そんな状態で生きていられるわけがない。



 娯楽殲滅派達はその瞬間に即死。

 肉体は即座に消滅し、霊魂が解放されていく。

 その霊魂も迷宮に吸収され、エネルギーとして迷宮に用いられていく。



 迷宮最下層、その直前で娯楽殲滅派は全滅した。



「お!」

 その感覚はトモヒロにも伝わっていく。

 迷宮と一体なのが迷宮の主人だ。

 大きな変化があればすぐに伝わっていく。

 死者の霊魂吸収もだ。

「そっか」

 ついにこの時が来たかと思った。



 嫌がらせをしているが、基本的に人が死ぬような罠はない。

 下手すれば大けが・病気などになりそうなものはあるが。

 それでも、傷や怪我を直接負うようなものはない。

 そこで撤退してくれればと思っての事だ。



 だが、そこを突破してきたなら、もう逃げる事はできない。

 最下層までやってくる可能性がある。

 そこで、最下層に到達する直前に最後の罠を仕掛けておいた。



 強制的に下の階まで移動する滑り台。

 その終着地に設置した転移の罠。

 逃げる事もできずに強制転移をし、壁の中に放り込む。

 ほぼ確実な即死の罠だ。

 この迷宮では珍しいだろう。



 その罠でやってきたものを殲滅する。

 生きて帰さないように。

 そこで足を止めるように。

 決して先に進めないようにするために。



 確実に殺す。

 その為の手段として用意しておいた。

 使う機会がないのが一番だと思いながら。



 とはいえ、生かして帰すつもりもない。

 そこまでたどり着いたなら、確実に脅威になる。

 放っておくわけにはいかなかった。

 どうあってもここで死んでもらわねばならない。

 生きて帰ってしまえば、より大きな脅威になりかねないのだから。



 そもそも、トモヒロ達を殺しにかかってる連中である。

 優しく対応してやる必要がない。

 大勢で押し寄せてきて欲しくないから、嫌気がさすような仕掛けを作っている。

 そこで撤退してくれればと思って。

 だが、それすらも振り切って押しかけてくるなら、もう殺すしかない。



 トモヒロが優しくしたところで、手を引くような連中ではないのだ。

 ここで一気に粉砕した方が得というものだ。



 それに、壁の中に放り込み、確実に殺せば霊魂を吸収できる。

 肉体が消滅し、霊魂が壁の中に溶け込む。

 迷宮の中に組み込まれる。

 そうなれば、転生も出来ずに霊魂は消滅する。

 蘇生の魔術・超能力でも生きかえる事は無い。

 二度と脅威として迫ってくる事はない。



 吸収した霊魂が迷宮のエネルギーにもなる。

 それも、最下層までやってこれるだけのレベルを持つ者のだ。

 迷宮運営において、これほどありがたいものもない。



 邪魔で憎い敵を殺す事ができて、しかも霊魂というエネルギーまで手に入る。

 こんなに効率的な事もない。



 死んだのがどんな連中だかは分からない。

 しかし、最後の最後にエネルギーになってくれた事には感謝しても良いと思った。

 たとえそれが、自分を殺しに来た連中であってもだ。

 それ以外の部分では、当然のように軽蔑しておけば良いのだから。



「この調子でどんどん死んでくれるといいんだけど」

 最下層直前まで来てエネルギーになっていく。

 そこまで来てもらいたくはないが、どうせ来るなら少しは役立ってもらいたかった。

 それくらいの価値しかないのだから。



 そのエネルギーを迷宮の強化に使う事を考えながら、トモヒロは今後の事を考えていく。

 死んでいった者達への思いはその瞬間には消えていた。

 そもそも、かえりみる必要もないからだ。

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