52 越えた先もやはり面倒ばかり
いらだっても状況は変わらない。
娯楽殲滅派の探索者達は、転移で11階から12階に向かう下り階段の部屋に飛んだ。
そこにある階段を下りていく。
「次もこんな調子なんだろうな」
これまでの経緯から誰もがそう思っていた。
次はどんな嫌がらせがあるのだろうと。
どうしても憂鬱になっていく。
それでも引き返すわけにはいかない。
「行こう」
嫌気を抑えながら先へと向かう。
12階は3階から10階と同じ構造だった。
一直線の通路が延びて、奥で折り返しになっている。
見たところ、ただそれだけの通路だ。
だが、疑心暗鬼気味に警戒してる娯楽殲滅派の探索者達は、絶対に何かあると思いながら調べていく。
魔術や超能力、探知能力などを駆使しながら。
それで分かったが、この階層の通路は落とし穴だらけだった。
単純にして明快、複雑さなど欠片も無い罠。
それが通路の至るところに仕掛けられている。
避ける事はほぼ不可能。
例外的に、身軽なものなら、壁を走って進む事もできる。
能力の高い者ならば、こうした超人的な行動も可能だ。
しかし、全員が出来るわけでもない。
落とし穴のところに、渡し板を置くことも考えられる。
だが、1区域に数え切れないほど設置されている。
これが下り階段のある所まで延々と続くのだ。
さすがに手間がかかりすぎる。
そこで、身体を浮遊させる方法がとられていく。
文字通り空に浮き上がる魔術・超能力だ。
といっても、自由自在に飛び回れるというわけではない。
あくまで身体が浮くだけといったものだ。
空中を歩くというのべきか。
移動速度も、歩くのと大して変わらない。
そう大きな効果ではないが、利点もある。
移動・飛行系の魔術としては消耗が少ない。
持続時間が長い。
落とし穴などを避けて通るには便利だ。
今回のような迷宮ならば特に。
それだけに腹立たしい。
転移を使うほどの消費は無い。
何を上げるなら、歩いていくので時間がかかる事くらい。
長い通路なのでそれだけがうんざりする。
ここで選択肢が与えられるのがかえって辛い。
時間を節約するために転移をするか。
霊気の消耗をおさえるために、歩いていくか。
このどちらにするかを選ばねばならない。
どちらも一長一短だ。
時間と体力のどちらをとるかになる。
どちらの方が効率が良いのか考える。
歩いて歩けない距離ではないが、歩くのも面倒ではある。
かといって、消耗する転移をするのももったいない。
「本当に嫌味な迷宮だな」
文句もつけたくなる。
今回、娯楽殲滅派は浮遊で迷宮を歩いていく。
戦闘も、他に罠らしい罠もないので簡単に進んでいける。
ただ、浪費してるとしか思えない時間がもったいないと思った。
「次もどうなってんだか」
呆れつつ、諦めつつ先へと進んでいく。
きっとろくでもない事が待ってるだろうと予想しつつ。
この予想が外れる事無く当たると確信しながら。
そんな彼等の思いは悲しい事に成就してしまう。
分かっていた事ではあるが、階層を下る度に彼等は嘆いて呆れ、そして恨みと苛立ちを重ねていった。
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