46 動かせるものは安全な場所に移動させる、それ以外はどうにもならないならば
ヒロインという名の怪物達。
トモヒロの迷宮周辺にあらわれた者達。
これらをどうにか逃がす事を優先していく。
町を動かすことは出来ない。
さすがに迷宮の能力をもってしても難しい。
なので、建物などは放置する事にする。
出来ないものは出来ないのだ。
やれない事をやろうとしても無駄でしかない。
費やす時間と思考と労力と資源とその他諸々がもったいない。
だが、そこにいる者達はどうにか出来る。
基本的に人間と同じ姿形をしてる。
足もあるので、歩いて逃げる事はできる。
そんなヒロイン達に、金や持っていける荷物を持たせて脱出させる。
これらも漏れた霊気によって発生した存在だ。
厳密に言えば生き物とは言いがたいだろう。
だが、確かに存在している生命体ではあるはずだ。
それが無惨に殺されるのは避けたかった。
トモヒロの利益になったり損失になったりするわけではないが。
さすがに命をもってると思われる者が死ぬのはしのびない。
なにより、娯楽を敵視してる連中にやられるのが許せない。
何でもかんでも思い通りになると思わせたくもない。
一つくらいは思い通りにいかない事も起こしておきたい。
そんな考えから、迷宮周辺に発生したヒロイン達を逃がす事にした。
ついでに、様々な者達に協力を頼んだ。
迷宮周辺を訪れる一般人達である。
漫画、アニメ、ゲーム、ラノベといった娯楽。
これらの新作を手に入れるためにトモヒロの迷宮周辺にやってくる者は多い。
加えて、こういった作品の登場人物にそっくりなヒロイン達による店もある。
メイド喫茶にコスプレ喫茶などに近いものがある。
2・5次元と呼ばれるものに近いかもしれない。
ここに足繁く通う常連も生まれている。
そういった者達に事情を説明。
店や町はどうにもならないが、ヒロイン達だけでも避難させられないかと。
話を聞いた常連達は快く応じていった。
トモヒロもそれらの助けになるように、迷宮で産出される物資などを渡していく。
それこそ金銀などの資産価値のあるものから。
透明化するための魔術道具などまで。
せめてものお返しと、潜伏がやりやすくなるような道具を渡していった。
おかげで迷宮周辺が攻撃される前に、ヒロイン達を逃がす事ができた。
それらはあちこちに散らばり、市井の中に隠れる事になる。
そのまま、一般人として過ごしていく者もいる。
見た目が人間と同じな者なら、特に怪しまれる事は無い。
さすがにエルフや獣人などの異種族な者達は難しいが。
とりあえず、当分はそうして協力者達の所に身を隠してもらう事になる。
迷宮に攻め込んでくる者が消えるまで。
せめて、その数が大幅に減少するまで。
それがいつになるか分からないのが辛い事だった。
だが、トモヒロはこうして多くの協力者を手に入れることが出来た。
言葉は悪いが、ヒロインを使った美人計ともいえる。
昨今の言葉で言えば、ハニートラップとでも言えようか。
更に悪い言い方をすれば、共犯者を作ったと言える。
そうして協力してくれた者達がネットワークになっていく。
これらが人間社会の情報を集める情報源になってくれる。
使いようによっては社会に影響力を与える事もできるだろう。
今はまだそれほどの力は無いが。
しかし、上手く成長させれば、今後を有利にしていける。
その為の布石をうてたとも言えた。
迷宮に攻め込んでくる連中は面倒だが、それらのおかげで危機感を強める事ができた。
この危機感から身を守るために、大事なものを助けるために動く者が出てきた。
それらと手を取り合えたのは大きな収穫だった。
そうとは知らず、娯楽殲滅派は迷宮周辺の町を破壊していく。
そこにいたヒロインという怪物を倒すことは出来なかったが。
だが、迷宮の影響を受けた場所を破壊して、とりあえず満足していく。
実質的な成果など全く得てないのに。
そして、破壊した町に駐留し、迷宮攻略に乗り出していく。
彼等が嫌悪する娯楽を消滅させるために。
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