表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/110

44 突入前におこる決定的な衝突

 トモヒロの迷宮に突入する者達。

 それらはこれまでの情報から攻略計画を練っていく。

 だが、これがすぐに頓挫していく。



「なんだこれは……」

 トモヒロの迷宮についての情報を手にした者は一様に驚く。

 あまりにも情報が少ないからだ。

 それだけ足を踏み入れた者が少ない。

 役所などが調査を依頼しても完遂された事はない。

 なので、どうしても情報が少ない。



 迷宮攻略にとって、これは致命的だった。

 情報がないと、どう攻略すれば良いのか分からない。

 やってやれない事はないが、一階ずつ調査をしていく事になる。

 時間も手間もかかってしまう。



 分かってる情報からも、目の前の迷宮がどれだけ面倒なのかが伝わってくる。

 回転床だらけの1階、暗黒地帯の2階。

 蚊が飛ぶ3階に、ゴキブリだらけの4階。

 想像するだけでも気が滅入った。



 何より、そこから先の調査がなされてない。

 誰もが入りたがらなかったからだ。

 分からない手探りで調べるしかない。

 だが、入る前に大半の探索者が嫌悪感をもよおしていく。



「そりゃあ、攻略されないわけだ」

「俺も入りたくねえ」

 あちこちからそんな声があがっていく。

 トモヒロの迷宮を破壊・殲滅しようとする漫画・アニメといった娯楽撲滅派の者達ですらもだ。

 生理的な嫌悪感に打ち勝つのは難しいものがあった。



 それでもやるしかなかった。

 このまま放置したらもっとまずい事になる。



 より巨大化する前に破壊しようとするなら、今すぐにでも突入するしかない。

 漫画・アニメを駆逐するためにも、出来るだけ早い段階で処分するしかない。

 理由は別々だが、意見は一致する。

 後回しにすればするほど、処分が大変になると。



 その為、出来るかぎりの準備をして挑む事になる。

 とりあえず判明している4階までを突破する。

 その為に何が出来るかを考えていく。

 数少ない調査記録・報告をもとにして。



 なのだが、ここで衝突が発生する。

 理由は簡単。

 娯楽殲滅派がすぐにでも突入しようとするのだ。

 なんの準備もせずに。



「なんでだ?」

 攻略優先の者達は驚いた。

 あわ食ったとか、呆れたとも言える。

 ろくに準備もせずに迷宮に突入しようとする娯楽殲滅派。

 その考えが理解出来なかったからだ。



「この迷宮は面倒な仕掛けがされてるんだぞ。

 準備もなしに突っ込んだらとんでもない事になる」

 当然といえば当然な考えだ。

 全てに対しては無理でも、事前に分かってる事くらいには対処する。

 出来るだけの準備をして対策をする。

 それが当たり前だからだ。



 しかし、この当たり前が娯楽殲滅派には当たり前ではない。

 そういった慎重さや用心深さに不満や不服すら抱いていく。

「何言ってる!」

 準備をする、ただそれだけの事に食ってかかる。

 理由は単純だ。

「急がないと迷宮が拡大するんだぞ!」



 もっともではある。

 確かに迷宮はどんどん拡大している。

 そうなれば攻略は更に難しくなる。

 漏れ出る霊気も増えて、迷宮周辺の変化も大きくなる。

 変化する範囲も拡大されていく。

 放置は出来ないだろう。

 すぐにでも片付けたいというのも分かる。



 だが、攻略する準備もととのってないのだ。

 そんな状態で突入したら、損害が増えるだけだ。

 そうなったら攻略どころではない。

 損害の立て直しに時間と労力と費用をとられる。

 迷宮攻略を中断しかねない。



 それを避けるためにも、可能な限り調査をしながら進むしか無い。

 初見では避けられない罠などはどうしようもないとしてもだ。

 発見できる罠や仕掛けなどには対策をしておきたい。

 それが結果として攻略を円滑に、最速で進める事にも繋がる。



 迷宮探索者ならば当たり前の心得だ。

 初心者であってもこれくらいはわきまえる。

 最初に教えられることなのだから。

 教えられても守れない者もいるのは確かではある。

 そういった者は早い段階で死んでいく。

 生き残るのは、事前の調査と対策を重視する者だ。



 そんな当たり前のことを、娯楽殲滅派は理解してない。

 知ってはいるかもしれないが、無視して進もうとする。

 それが攻略優先の者達には理解出来なかった。

「なんでそんな無茶なことをする?」

 思わずそう聞いてしまう。

「迷宮を放置出来ないだろ!」

 怒鳴り声で返事が飛んできた。



「あんなものを放置できるのか?!

 今も迷宮周辺から、あんないかがわしい物が溢れてきてるんだぞ!」

 これが娯楽殲滅派の言い分である。

 彼等は少しでも早く、溢れてくる娯楽物を排除したいのだ。

 その為に準備もろくにせずに突入しようとしている。



 それを見て攻略優先の者達は呆れた。

 せめて3階と4階の虫対策くらいは待つべきだ。

 報告や記録によれば、対策もなしに突破出来るようなものではない。

 気密性のある服が必要だ。

 潜水服や、それこそ宇宙服のようなものが。

 それも無しに突入するのは自殺行為である。



 なのに娯楽殲滅派は厚手の服くらいでどうにかしようとしている。

 あとは魔術や超能力、防虫剤に殺虫剤でどうにか出来ると考えてる。

 それが難しいから、調査に赴いた者達は作業の断念を選んだのに。



 こういった理由を攻略を優先する者達はうったえた。

 今のままではどうにもならないと。

 せめて装備が揃うのを待つべきだと。

 だが、娯楽殲滅派は聞き入れない。

 とにかく迷宮突入を優先しようとする。



 それを見て迷宮攻略を優先する者達は諦めた。

 説得する事を。

 娯楽殲滅派と共に行動する事を。



「分かった」

 叫んで騒ぎながら自分らのやりたいことを主張する娯楽殲滅派に向かって突きつける。

「そんなに行きたいなら勝手に行け」

 それは突き放すような物言いだった。

 それもそのはず。

 彼等はすぐに、

「俺らはおりる。

 お前らとはやってらんない」

 絶縁宣言をしたのだから。

気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ