40 迷宮の巨大化に伴う、迷宮周辺の変化
トモヒロが地下迷宮の最下層に楽園を作ってる頃。
地上ではトモヒロの迷宮の処置に本腰を入れるようになっていた。
そうせざるえない程の問題が発生していた。
トモヒロの迷宮が階層を増やすごとに、問題は大きくなっていく。
どうしても迷宮から漏れ出す霊気が増えていくからだ。
それが迷宮の入り口付近を変化させていく。
漏れ出た霊気は環境に影響を与える。
霊気によってそこに様々なものが出現する。
そこにあったものが霊気によって変化していく。
これによって、迷宮の周辺も怪物はびこる危険地帯になっていく。
たいていは霊気の濃度が低いので、そこまで大きな変化はおこらない。
小型の怪物がちらほらと見えるようになるだけだ。
その大半は小学生の子供でも倒すことが出来るくらいに弱い。
せいぜい、蚊やゴキブリの駆除程度の手間で住む。
仕掛けを設置すれば、たいていは対処出来る。
だが、迷宮が深く巨大になり、漏れ出る霊気も多大なものになると話は変わる。
出現する怪物の強さも数も放置できないものになる。
この為、巨大な迷宮周辺には、足を踏み込むのも危険な場所が出来上がる。
なので、迷宮は出来るだけ規模の小さいうちに破壊する。
これが基本的な対処となっていた。
階層だけは多いトモヒロの迷宮も例外ではない。
ひたすら階層だけを増やしてるので、そのほとんどは迷宮の体を成してない。
地下20階までは探索者撃退のために、それなりに面倒な造りの迷宮を用意している。
だが、21階から先は、1区域だけの階層を積み上げただけだ。
仕掛けらしい仕掛けも作ってない。
本当に階層を増やす事だけ考えて作ってある。
そんな迷宮でも、階層だけは多く深くまで作られてる。
吹き出す霊気は相応に大きく多い。
迷宮の出入り口付近に与える影響は無視できるものではなくなっている。
当然、迷宮周辺に漏れた霊気が、出入り口周辺を変化させている。
これにより、トモヒロの迷宮周辺は様変わりしていた。
ただ、それは他の迷宮に比べてかなり異質なものになっている。
それがまた、多くの者達を困惑させていった。
迷宮の出入り口周辺の変化は、迷宮の性質によって変わる。
迷宮の内部にあわせたものに合わせたものに変わる。
ゴブリンやオーガ、トロールや鬼といった人型の怪物が主に出るなら、周囲にもそういった怪物が出現する。
内部が水で満たされた水辺や海のような所なら、迷宮周辺は湖や海のようなものになる。
森林のような内部ならば、周辺も密林のような状態になる。
神々や天使といった者が出て来る迷宮なら、周囲も神殿や神域のような所になる。
トモヒロの迷宮も例外ではない。
ただ、それは生理的な嫌悪感を抱くように作った1階から20階とは違う。
最下層のもっとも中枢に近い所にあわせて作られる。
すなわち、オタク趣味な萌え萌え空間だ。
トモヒロの迷宮周辺はそんな調子になっている。
いわゆる中世的な世界のファンタジーから、産業革命期のスチームパンク。
さらには現代・近未来的なサイバーパンクに、宇宙時代のSF世界。
そういった世界が融合した場所だ。
そこに様々な種族の美少女・美女が歩き回っている。
この場合、時代背景は関係がない。
様々なヒロインにあわせて町並みが作られていく。
様々な科学考証や時代考証を無視した町並みが出来てるのはこの為だ。
全ては登場するヒロインに合わせている。
ヒロインをかたどった住人達もまた様々だ。
人間・人類が基本ではある。
だが、いわゆる獣耳をはやした獣人にはじまり。
エルフなどを筆頭とした異種族も多数混じっている。
機械仕掛けのアンドロイドから、身体の構造そのものは人間とかわらない細胞培養で作られた人造人間もいる。
はては人型という点でのみつながりのあるモンスター娘。
コンピューターの中にだけ存在する、AI少女も。
とかく様々なヒロインがひしめき合っている。
そんな時代もばらばら、登場する人物も様々。
それがトモヒロの迷宮周辺にあらわれていた。
この見た目と様子が多くの者を困惑させた。
いったいどんな者が迷宮の主人なのかと。
同時にこれへの対応は両極に分かれていく。
一方は、「漫画・アニメといったオタク文化は滅ぶべし!」と気勢を上げる連中。
もとよりこういった娯楽への憎しみと憎悪を自然に抱いてる者達だ。
怪物・迷宮の出現により、「そんなものにうつつを抜かしてる場合か!」と大義名分という言い分けを得た連中である。
これらは無自覚に抱いている憎悪や軽蔑を隠しもせずにトモヒロの迷宮への攻撃を実行していく。
そして。
「これぞ我らの理想郷」
「夢が実現した」
と情熱を滾らせる者達だ。
いわゆる漫画・アニメを好む者達である。
これらはトモヒロの迷宮の周辺にあらわれたワンダーランドを支持していく。
それが迷宮からあふれる霊気によって作られたものだとしてもだ。
この、両極にいる者達によって、トモヒロの迷宮を巡る情勢は面倒なものになっていく。
本来なら迷宮打倒で意見がまとまるのが普通なのだが。
トモヒロの迷宮の場合は、これを支持するものが集まりまとまっていく。
この為に簡単に迷宮打倒・破壊となる事がなかった。
もっとも、これも珍しい事ではない。
世界的に見れば似たような事例や事情はいくつもある。
それが日本でもあらわれたというだけではあった。
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