37 妄想の中の住人を迷宮の機能で現実の存在にしていく
漫画、アニメ、ゲーム、ラノベ。
様々な作品に登場する人物。
それらが現実にいたら…………オタクなら一度は妄想するのではないだろうか。
それをトモヒロは実現出来ないだろうかと考えた。
迷宮の機能を使って。
迷宮の機能には様々なものがある。
その中に、各種施設を運営する作業員を発生させるものがある。
人形のような存在で、心や意思、自我といったものはない。
それに、人型といっても人間そのものの姿をしてるわけではない。
どちらかというとマネキン人形に近い。
だが、これと似たようなものに、人間そっくりの存在を産み出す機能がある。
人造人間、合成人間、ホムンクルスというものに近い。
限りなく人間に近い、人工的に作られた存在だ。
これを作り出す機能を使い、創作物の登場人物を現実に発生させる。
これが出来るのではないか?
トモヒロはそう考えた。
画面の中にいる者。
紙に描かれた者。
ゲーム画面に表示される者。
これらをどうにかして現実に引き出す事は出来ないか?
迷宮の機能を利用して、架空の存在を作り出す事は出来ないか?
そう考えて迷宮の機能を探っていった。
その結果が、似たような存在なら作り出せるかもしれないという事だった。
さすがに全く同じ人物を作り出す事は出来ない。
どうしても再現出来ない部分もある。
例えば、動物の耳をもった人型種族とかだ。
各作品ごとに設定されてる特殊な能力も難しい。
魔術・超能力で出来ることならともかく。
そうでないなら、さすがに実現出来ない。
しかし、似たような存在なら何とか作れる。
見た目や性格、思考など。
創作物に近い状態の存在を作り出す事は出来る。
作業員を作る施設に、「こういった人物が欲しい」という要望を出せば良い。
そうすると、可能な限り要望に近い作業員が作られる。
現実に無理なものは再現されないが。
例えば、巨大な目だ。
漫画的な巨大な目はさすがに現実にするのは不可能である。
そういったものは、現実として問題ない形に修整される。
だが、現実的な範囲でなら要望をかなえていくれる。
この機能を使って、まずは身のまわりの世話をする人間を作り出してみる。
いわゆるメイドさんを。
今も身のまわりの世話をする作業員はいる。
なので生活に困る事は無い。
だが、どうせなら見た目くらいは自分の好みにしておきたかった。
早速、迷宮の機能を使っていく。
自分の欲望と願望をかなえるために。
必要なのは、作業員寮の段階を最大にする事。
これで、作業員に望む事を入力出来る。
普段は、持ってる知識や技術を設定する程度なのだが。
機能を最大にした今は、見た目や性格、しゃべり方なども指定出来る。
とりあえず、トモヒロは自分の好みのキャラクターの設定を読み込ませていく。
アニメのキャラクターの設定資料に原作漫画。
アニメのDVDなどを読み込ませていく。
その中で、気に入ってる登場人物の情報をもとにした作業員を要求する。
作業員寮は入力された情報をもとに、設定に沿った作業員を作っていく。
ただ、すぐに出来上がるわけではない。
完成まで一週間ほどかかるので、それまでは待たねばならない。
仕上がりがどうなるか気になるが、すぐに確かめる事は出来ない。
一応、気に入らなければ改造も出来る。
なので、そう難しく考える事はない。
駄目なら変えれば良いだけだ。
この先ずっと気にくわない存在をそばに置く必要は無い。
それでも、出来るだけ失敗は少なくしたい。
無駄に時間をかけるのももったいない。
なにより、作成には霊気を使う。
まだ階層を増やしたいので、無駄な消耗は出来るだけ避けたい。
出来れば、最初の一回目で無事に成功としたかった。
気を揉みながら一週間が過ぎる。
登録した存在が作成出来たという報告が入ってくる。
頭の中に入ってくるその情報を受け取ったトモヒロは、すぐに作業員寮に向かった。
居室からもっとも近い作業員寮。
そこに行くと、目当ての存在が立っていた。
「初めまして」
そう言って頭を下げるのは、まぎれもなくアニメの中の登場人物だった。
「よろしくお願いします、ご主人様」
そう言って笑顔をうかべる女に、トモヒロは年甲斐もなく胸を高鳴らせた。
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