35 少しずつ着実に、なにより確実に
地上から創作活動に従事していた者達が消えていく。
トモヒロの迷宮に招かれ、その最下層で創作活動を行っていく。
居場所を得た創作者・制作者達は、活き活きと作品を作っていく。
それは商業で活動していた者達だけではない。
同人活動をしていた者達にも及ぶ。
生業として創作をしてる者達だけで創作は成り立ってるわけではない。
趣味も含めて楽しんでる者達を含めての創作活動だ。
この裾野の広さが創作の活性化を産み出す。
商業活動だけ保護すれば良いというわけではない。
それに、趣味による同人活動でも面白いものはある。
これらを切り捨てる事は出来なかった。
トモヒロからすれば、素人・アマチュアと商業活動のプロを分けるつもりはない。
大事なのは一つだけ。
面白いかどうかだ。
面白いものを作り出してくれる。
それならばプロもアマチュアも関係がない。
どちらも等しく大事なものだ。
これらを可能な限り回収して保護していく。
全ては面白い作品を楽しむため。
その為に、やれる事を何でもやっていく。
とにかく、衣食住を確保せねばならない。
その為に、最下層を拡張拡大して整備をしていく。
だが、それだけでは足りない。
招き入れたい者達の数は多い。
しかし、最下層を拡げるには霊気が足りない。
施設や設備を増やすために必要な霊気。
これが招待するべき人々の数をまかなえないのだ。
それだけ多くの者達が行き場を無くしている。
そんな者達の生き場を作るには、今のままの霊気では全然足りない。
創作活動に従事する者だけでも何千人も何万人もいる。
これらの家族を含めれば、数は数倍に膨れ上がる。
それだけの人間を収容する事が出来る空間を作るには、今の段階で手に入る霊気では足りない。
やむなく、一時的に招待・収容を中断していく。
より深く迷宮を造り、霊気をより多く集めるためだ。
階層が更に追加されていく。
居住区ごと階層を深く沈めていくので、必要な霊気が多くかかってしまう。
その為、以前ほど早く階層を追加する事は出来ない。
それでも、一階ずつ階層を増やすごとに、手に入る霊気も増えていく。
その霊気によって次の階層を増やすまでの時間が短縮される。
もっと多くの者達を招き入れたい。
行き場のない者達の生き場を作りたい。
そんな思いをあえて押し殺していく。
急いては事をし損じる。
今はとにかく霊気を、元手を増やさねばならない。
より大きな飛躍のために。
その間にも、地上にいる創作者達には可能な限りの援助をしていく。
金銭を直接渡す事は難しいが、食料などを提供する事は出来る。
迷宮で作られたこれらを提供し、当面の生活をまかなってもらう。
その間に迷宮の階層を増やし、手に入る霊気を増やしていく。
増やした霊気で、少しずつ居住区を増やしていく。
それまでの間に、地上にいる者達には別の活動もしてもらう。
居場所を失った創作者や制作者達。
それらに声をかけ、地下への勧誘を進めていく。
行きたいという希望者を増やしていく。
情報をひろめ、賛同する者を増やしていく。
今すぐ移住する事は無理でも、その下準備はしていった。
それは察知される可能性を増やしていく事にもなる。
だが、何も知らないままでは動きが鈍くなる。
慎重に根回しをし、それでいて出来るだけ多くの者達に伝える。
矛盾するこの二つをなんとか成し遂げながら、トモヒロは迷宮を拡大していった。
創作者や制作者の救済を始めて5年。
迷宮を作ってから15年。
地下迷宮は1700階になろうとしている。
その間に、少しずつ居住区も拡大し、より多くの創作者・制作者が集うようになった。
それでもまだ、救わねばならない者の全てを招いたわけではない。
まだまだ道半ばである。
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