31 快適な中で気付く外の異変
そうしてなった迷宮の主人。
それはトモヒロに快適さを提供してくれた。
誰もいない空間。
自分に必要な居場所と物資。
刃向かわない、余計な絡みもしてこない各施設の従業員達。
これらが作り出す空間は、トモヒロにとって最高最良の場所だった。
誰かといるのが苦痛でしかないトモヒロだ。
誰もいないというのはありがたい。
作業員という、各施設・設備を動かす者は居るが。
それらは動く人形、ロボットのようなものなのでトモヒロに近づいてくる事は無い。
無言で作業をするだけの存在だ。
この環境のおかげで、トモヒロは人生における最高の瞬間を味わう事が出来ていた。
他に何も必要ないと思えるほどに。
ただ、最近はそうも言ってられなくなった。
胸騒ぎをおぼえるようになった。
その原因は、商店街で手に入れる漫画やラノベにあった。
これらに問題があるわけではない。
相変わらず、面白いものもあればそうでないものもある。
それは作品による違いなのであれこれ言うような事ではない。
おかしいのは、これらの数が減り続けてる事だった。
何かあったのかと思い、原因を調べてみた。
どういう経路を通って迷宮最下層の商店街に流れこんでくるのかは分からない。
だが、並んでる商品が一般に流通してるものなのは確かだ。
それが品薄になってるという事は、地上でも数が減ってるという事になる。
何があったのか?
気になって確認していく事にする。
その為の偵察要員を作っていく。
これはそれ用の怪物がいるので、これを大量に作っていく。
加えて、外に出るための通路も作っていく。
こちらは通常の迷宮とは別に専用のものを用意した。
これはこれで霊気を消耗する。
出費が痛い。
だが、情報を得るためだから我慢した。
何も知らないでいるよりは良い。
地上に向かう道は、地上に一気に転移する空間を作って対応した。
脱出用の転移魔術・超能力と同じだ。
それを発生させる区域を造り、地上用の門とした。
一気に地上まで出る事は出来るが、戻ってくる事は出来ない。
片道の出口専用の門になる。
だが、それで構わなかった。
送り込むのも、使い捨て出来る怪物なのだから。
その使い捨ての怪物は、巨大な目玉のような存在だった。
単に見るだけ、観察するだけ。
その目でみたものを召喚者に伝えるだけ。
遠隔操作できるビデオカメラのようなものだ。
戦闘能力などは一切なく、たんに見聞きした情報を伝えるだけの能力しかない。
能力は限定されてるが、召喚や維持の為の魔力が少なくて済む。
この、空飛ぶ目玉というべき怪物を大量に召喚し、地上に送り込む。
その数、数百。
それらが地上に転移していき、あちこちに飛び散っていく。
魔術・超能力で透明になり、そこかしこに潜んでいく。
そうしてトモヒロに情報を送り込んでいく。
そうして得た情報は、トモヒロを困惑させ、幻滅させていった。
最後には憤りを抱かせ怒りを発生させた。
10年ほどご無沙汰にしていた地上。
そこでは漫画・アニメなどが息も絶え絶えになっていた。
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