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30/110

30 振り返りたくもない人生はある意味よりよいものをもたらしてくれたのかもしれない

 探索者になるまでの人生も最悪だった。

 育児放棄の親は養育の全てを拒絶していた。

 義務教育なので学校には通ったが、必要なものすら事欠くありさまだった。



 ならばいっそ、施設にでも預けられた方がましだったかもしれない。

 だが、まがりなりにも親がいるからという事で、保護される事もなかった。

 これが女の子だったらともかく、男だったのも影響してるかもしれない。

 とかく女だったら優先して保護されるのだが。

 男は何かと放り出されるものだ。



 そんな状態で小学校に通うも、良いことなどあるわけもなく。

 教科書はともかく、鉛筆・消しゴム・ノートなどすらまともに与えられない。

 そんな状態で授業をまともに受けられるわけもない。



 そんな子供だから、まわりの者達は好んで虐待していく。

 人間にとって、他人を虐げるのは娯楽だ。

 むかつくとか、何かされたからという理由で人を虐げる者はいない。

 それが楽しいから、面白いから虐待していくのだ。



 そして、それには反撃をしない者が良い。

 虐待をしても問題にならない者の方が良い。

 親に見放され、教師からも見捨てられてるトモヒロは、玩具としてうってつけだった。



 そして、日本社会である。

 反撃をゆるさず、加害者を守る。

 被害者は泣き寝入りを強要される。

 そんな社会だ。

 トモヒロがかえりみられるわけもない。



 以後、小学校の6年間と、中学校の3年間、トモヒロは虐げられて生きていた。

 死ななかったのが奇跡である。

 一度、包丁をもって虐待犯を襲ったのが効果的だった。

 学校では無く、虐待の主犯の家で待ち構えて襲った。

 不意打ちだったので上手くいった。



 さすがに問題になったが、事を荒立てたくない学校によって全てはもみ消された。

 虐待犯の親は激怒したが、それまでされてきた事を表沙汰にされたらまずいと思ったのだろう。

 トモヒロに特におとがめもなく、この問題は消されていった。

 以来、トモヒロに手を出す者はいなくなった。

 加害者になった事で、トモヒロは守られる事になった。



 そうしてなんとか平穏に、遠巻きに見られるようになった。

 いわゆる無視という状態である。

 いないもの扱いされていく。

 普通なら精神的な虐待となるだろう。

 しかし、トモヒロにとっては最高の状態だった。



 誰にも干渉されない。

 一人でいる。

 これほど幸せな事は無い。

 誰かと一緒だから虐待や犯罪被害にあう事になる。

 そうなる可能性が無くなったのだ。



 それはトモヒロにとって人生最高の状態だった。

 初めて危害を加えられない状態になった。

 それだけでこれ程幸せになれるのかと思った。



 以来、トモヒロはこの状態、誰とも接触しないでいる事を求めるようになる。

 探索者になった頃には、さすがに同行者は必要と思ったが。

 それもまともに望めないと分かってからは、無理して仲間を求めなくなった。



 これが幸いだったのだろう。

 他の者達の願望にまきこまれる事がない。

 自分のペースで行動できる。

 単独故の危険はあるが、他者の思惑によって無理や無茶を強いられる事もない。

 生活に追われる事はあっても、最低限あげねばならない成果・ノルマもない。



 全て自分一人でどうにか出来る。

 その事がトモヒロにはありがたかった。

 他人との接触という苦痛がないのだから。



 そんな探索者生活を続ける中で、だんだんと思うようになった。

 なんで社会の中で生きていかねばならないのか?

 なんで人類の中で生きていかねばならないのか?

 無理してまでその中の一員である必要があるのか?



 問題だらけの人類社会である。

 その一員である事に執着してどうするのか?

 固執しなければならない利点があるのか?

 全くそうは思えなかった。



 虐待を娯楽として楽しむ生き物だ。

 それが当たり前の世の中になってる。

 これは一部の事ではなく、人類社会全ての問題である。

 少なくともトモヒロはそう考えている。

 そう考えてしまう場所にいる理由は何なのか?



「何もないな」

 社会や世の中というものを考えた結果、この結論に至った。

 無理して人類の中にいる必要は無いと。



 そう思った途端に、目標が出来た。

 自分一人で生きていけるようになろうと。

 その為に必要な事をしていこうと。

 まずは金を稼ごうと思うようになった。



 そうして探索者を続けてる中で見つけたのだ。

 一人で生きていける手段を。

 見捨てられていた、迷宮の主人を。

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