26 深く深く、もっと深く、そこでようやく次に進めるのだから
探索者が撤退し、少しだけ平穏が戻る。
いずれまた別の探索者がやってくるにしても、それまでは安全である。
その間に迷宮の拡大拡張・整備を進めていく。
とにかく階層を深くする。
これが基本になる。
何をするにも金が必要なように、迷宮を作るには霊気が必要になる。
その霊気をより多く得るには、深く深くしていかねばならない。
階層を増やしていかねばならない。
地下50階まで増やした階層を更に深めていく。
この際、必要最低限の1区域だけ作り、階層だけ稼いでいく。
それだけで良いのが迷宮のよい所だ。
ただし、迷宮で階層を作る際に一つだけやらねばならない事がある。
他の階層との繋がりを作る事だ。
階段でも何でも良いから、上下の階に繋がるようにしておく。
これが迷宮構築におけるルールになってる。
なんでそうなってるのかは分からない。
ただ、迷宮を作るにおいて、これは絶対のルールになっていた。
このルールさえ守れば、あとは割と自由に作る事が出来る。
いわゆる迷宮と呼べるような構造になってなくても良い。
だからひたすら階層を増やしていける。
必要になる霊気は、階層が増えれば増えるほど大きくなる。
だが、1区域だけの小さな構造ならそれもさほど大きな負担ではない。
そうして深めた階層によって、手に入る霊気が増える。
常に充填される霊気の量の増大が、階層追加で消費された分を補ってくれる。
このくり返しで、とにかく階層を増やしていった。
50階だったのが100階に。
それが200階、300階に増えていく。
探索者撃退の為の罠や仕掛けも放棄して、深さだけ求めていく。
とりあえず20階まで罠やら仕掛けやらこさえてるので、それに任せておく。
階層の増加がひたすら進む。
それを止めたのは、1000階を数えた時だった。
さすがにこれだけあれば、当面の霊気に困る事は無い。
外に漏れる霊気も尋常なものではなくなり、多くの者に気付かれるようにもなるが。
しかし、にじみ出る霊気の量に恐れをなす者も多くなる。
張りぼての迷宮だが、その効果は大きいとトモヒロは考えていた。
そんな1000階層の迷宮の最後の最後に、強力な怪物を配置していく。
召喚して迷宮に留めるために多大な霊気が必要になるが問題は無い。
大量に召喚してもお釣りが来るほど多くの霊気を手にしてるのだ。
防衛の為の怪物召喚を躊躇う必要は無い。
それは自分の命を縮める事にもなる。
そうして他の迷宮ならラスボスをつとめられるようなものを大量に配置。
やってきた探索者を撃退出来るようにしていった。
トモヒロの知る限り、それらに対抗できる探索者はいない。
とりあえず、これで暫くは安泰になった。
そうなってから、トモヒロは最深部の居住地の整備に手をつける。
ここまで来れば、生活環境をよりよくしても問題ないはずだからだ。
最低限の生活が出来る程度におさえていた周囲の環境。
それをようやくととのえる事が出来る。
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