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23 簡単な道、だけど進みたくない場所

 進むのはそれほど大変ではなかった。

 防護服のおかげで危害を加えられる事はない。

 視界をふさぐ蚊の大群は鬱陶しいが、進路を妨げるわけでもない。

 なんなら、魔術も超能力も使える。

 1階や2階よりは手数は増えている。



 ただ、鬱陶しかった。

 効果があるとはいえ、殺虫剤で倒せる範囲は限られている。

 噴出されるスプレーの範囲の蚊を倒しても、それ以外の方面から迫ってくる。

 渦巻き型の殺虫剤からは、煙によって広範囲に殺虫剤がばらまかれる。

 それは周囲の蚊をまとめて倒すが、効果範囲が狭い。

 完全に遮る事は出来ないでいた。



 そんな中を進むのは精神的な疲弊をもたらす。

 備えが万全なら安全に進めるのは確かだ。

 しかし、進んでる間、絶え間なく襲われている。

 害がほとんどないとはいえ、それは精神的にこたえるものがあった。



 しかも、迷宮の造りがいやらしい。

 視界も良好、罠もない。

 そういう意味では1階と2階よりは良い。



 構造も簡単で、一本道が続いている。

 階段でおりて来た部屋から真っ直ぐ進み、奥まで到着するとすぐ隣の区域に折れ曲がる。

 そこからとなりの列に移動し、再び突き当たりまで移動する。

 そうして突き当たりで隣の列に移ってまた進むのくり返し。

 1列20区域400メートルを何度も行き来する。

 ただそれだけだ。



 その間、常に蚊にまとわられ続けながら。

 それを20列16000メートル続けるだけ。

 歩く距離が長いだけで、障害らしい障害はない。

 じつに単純な構造だ。

 それだけに、底意地の悪さが目立つ。



 距離はあるが、迷うこと無く進める道。

 準備が万全なら無理なく進んで行ける。

 ただ、その間、絶えず蚊にまとまりつかれるだけだ。



 それが嫌なら、魔術や超能力で転移・テレポートすれば良い。

 瞬間移動のこの方法を使えば、わざわざ歩く事なく移動出来る。



 だが、転移を使えるのは一定以上の力量を持つ者だけ。

 しかも、これは多大な霊気を消耗する。

 使えばその後の探索に支障が出る。

 それを覚悟で転移をするのか。

 それとも、消耗を控えて、時間をかけて歩いていくのか。

 その決断を迫られる。



 なまじ、魔術・超能力が使えるのが質が悪い。

 使えないなら諦めて開き直る事も出来る。

 だが、ここでそれは出来ないのだ。

 どちらを使うか選択を迫られる。

 備えを万全にして歩いていくのか。

 時間を節約するために、霊力を消費するのか。

 二つに一つだ。



 そんな選択を強いるあたりに、この迷宮の底意地の悪さがあった。

 探索者達はこの迷宮を作った奴は、そうとう性格がひねくれてると感じていた。

 でなければ、これほど嫌な思いをする空間を作れるわけがない。

 特に致命的な罠があるわけでもない。

 倒せない敵がいるわけでもない。

 だが、進むのを躊躇わせる造りになっている。



「最悪だ」

 誰もがそう呟いた。

 この迷宮を作った誰かを評して。



 それでも彼らは歩いていく。

 調査のために来てるからだ。

 どんな道になってるのか、どんな仕掛けがあるのか確かめなければならない。

 その為、道を道順通りに進んでいく事になる。

 途中で感じる嫌悪感を押し殺して。



 片道16キロだけですんだのは幸いだった。

 半日もかければ歩ききる事が出来る。

 そこで終わりにする事が出来る。

 しかも、変な仕掛けもないので、歩ききれば階段にたどり着く。

 4階に続く下り階段が見えてくる。



 それを見た時、探索者達は安堵の吐息をもらした。

 これでこの階から抜ける事が出来ると。

 しかし、ここまで歩いてきた彼らには別の考えも浮かんできた。

 これまで最悪の状況を強いてきた迷宮である。

 この先も最悪の状況が待ってるのではないかと。



 その予想通り、4階に続く階段には嫌悪感を抱くものがあふれていた。

 それを見た8人の探索者は誰もが膝から崩れおちていった。

「嘘だろ」

「やめてくれ……」

 力なく避難する彼らの目の先には、下に向かっていく階段がある。

 そこを埋め尽くすほどの虫の姿も。



 3階の蚊とは別の虫。

 それらは目にした者達に吐き気をもよおさせていく。

 実害があるかどうかによるものではない。

 見た目による嫌悪感によって。

 それほどそれは割とよく目にする、ある意味もっとも嫌われた存在だった。



「ゴキブリかよ、今度は」

 一目見て分かるほど馴染みのある生活害虫。

 それが4階へと向かう階段の上を這い回っていた。

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