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21 小さな害も無数に集まればとてつもない脅威になる

 足を突っ込んだ瞬間に虫に食われた。

 足の表面が膨れあがり、凸凹になっている。



 おそらく、階段の下には大量の虫がいる。

 それらが踏み込んだ先導者の足に食らいついたのだ。

 それを察して、探索者達は顔を見合わせた。

 少し踏み込んだだけで、それと分かるくらい血を吸われている。

 こんな状態の所に飛び込んだらどうなる事か。

 簡単に想像できるその時の状態に、全員背筋を凍らせる。



 だからその場で帰還を決意した。

 何の準備もなしに突入できない。

 それにだ。

「なあ、頼む」

 足だけ踏み込んだ先導者が涙目ですがっていく。

「早く解毒してくれ。

 痒いんだ!」

 猛烈に痒いのだろう、止まることなく足をひっかいてる。

 皮膚が破け、肉を裂いても止まらないほど。



 慌てて治療役の者が解毒と傷治療の魔術を施していく。

 霊気で蚊の毒を消し、ひっかいて切り裂かれた傷を塞いでいく。



 大げさに見えるかもしれないが、割と深刻な状況だ。

 一匹の蚊によるい毒は大したことは無いだろう。

 せいぜい痒みをおぼえる程度だ。

 だが、それが何十匹にも何百匹にもなったらどうなるか?

 それらが一斉に襲ってきたら?

 それらの毒が身体に注入されたら?

 もしかしたら、命に関わるほどの毒素になるかもしれない。



 そこまでいかなくても、痒みでまともな行動もとれなくなる。

 集中力はかなり落ちる。

 魔術や超能力を使う妨げになる。

 精密作業を行う事は難しくなる。



 痒みとバカにする事は出来ない。

 それも積もり積もればとてつもない障害になる。

 無視して突破する事は出来ない。



 その対策の為にも、一旦戻って考えることにした。

 準備も必要だ。

 とりあえず用意できるだけの虫刺され対策を集めていく。

 同時に、何があるのかを依頼人である役所にも報告する。

 どのみち、経過報告が必要になるのだから。



 とりあえず殺虫剤を大量に集める。

 それから、虫をとおさない防護服を。

 他にも、魔術や超能力で虫を遠ざける事が出来ないか考えていく。

 無人ドローンも一応用意していく。

 人が入れなくても、ドローンならどうにかなるかもしれないからだ。



 とにかく、出来るだけの準備をしていく。

 ただし、予算の範囲内で。

 赤字になるのは避けたかった。



 そうした準備に一日を費やす。

 なんだかんだでそれくらいの時間はかかってしまう。

 それから探索者達は、迷宮3階に向かっていった。



 まずは迷宮3階にドローンを突入させていく。

 これなら虫に襲われる事もないからだ。

 だが、すぐにそれだけでは駄目な事を察する。

 予想していた事だが、無人ドローンから送られてくる画像を見る事が出来ない。

 すぐ上の暗黒地帯では画面が表示されないからだ。



 画面に表示する映像は基本的に光である。

 暗黒地帯ではそれらが表示される事はない。

 予想していた通りだが、残念な結果だった。



 仕方ないので、防護服をまとって3階におりていく。

 潜水服のような密閉された服なので、虫が侵入してくる事は無い。

 生地も厚みがあるので、蚊に刺される心配もない。

 通気性と呼吸の問題はあるが、それは酸素ボンベを持っていく事で解消する。

 なお、重い酸素ボンベは台車で運んでいる。



 迷宮探索としては場違いな装備だと探索者達も思っている。

 だが、そこにある脅威に対抗するために必要な装備だ。

 そう割り切って彼らは3階へと進んでいった。



 階段をおりて少しして、持ってきた対策を使っていく。

 まずは殺虫剤。

 市販のスプレー型のものを周囲にふりまいていく。

 先が見えないほど密集している虫の大群が、それに触れて次々におちていく。

 それを見て探索者達も安堵する。

 迷宮にいるから通常とは違う種なのかと思っていたからだ。

 普通に殺虫剤が効いて安心した。



 だが、とにかく数が多いのであまり効果が出てるとは言えない。

 それこそ雲霞の如く、霧や霞や靄の如く。

 視界を奪うほど大量に密集している。

 市販の殺虫剤ごときでは大きな効果は見いだせない。

 当たれば確かに虫は死んでいく。

 しかし、一度に倒せる以上の虫が密集してるのだ。

 焼け石に水である。



 そんな虫の群れを退けるために、風の結界をはっていく。

 飛んでくる物体を退ける魔術・超能力だ。

 使えば、一定時間の間、ある程度の飛来物を避ける事が出来る。

 ある程度以上の威力のあるものはさすがに阻めないが。



 これは、魔術・超能力が使えるかどうかを調べるためでもある。

 もし、使えるなら探索はかなり楽になる。

 だが、この階でも使えないなら、かなり厳しいものになる。

 それを見極めるためでもあった。



 ありがたい事に、この階では魔術・超能力が使えた。

 空気の流れが変わり、探索者達を覆うような空間が作られていく。

 その中から、飛び回る蚊の群れが排除されていく。

 それを見て、探索者達は胸をなで下ろした。

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