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20 何も考えずに踏み込んだらとんでもない目にあった

 暗黒地帯のせいで目で見えない2階。

 その中を進む探索者達は、だんだんといらついていった。

 その理由は簡単。

 壁が無いからだ。



 2階には何もない。

 罠がないのはありがたいが、目印になるものもない。

 壁すらないので、今どこにいるのか分からない。

 障害物がないのも考えものだった。



 もとより暗黒地帯で暗く、先が見通せない。

 頼りになるのは感覚だけ。

 こんな状態なので、どうしても悩み惑ってしまう。

 本当にこっちで良いのか?

 正しく進んでいるのか?

 途中でどこかに曲がってやしないか?

 どうしてもこういった迷いが生まれてしまう。



 疑念は不安を生み、苛立ちになっていく。

 罠や怪物と遭遇してないので危険は無いが、それだけに余裕が生まれてしまう。

 余裕が色々と考えさせてしまう。

 これで良いのか、上手くやってるのかと。

 確かめようのないこれらの事実が、どうしても疑問や疑念になってしまう。

 そして、答えの出ない問題を抱える事で、苛立ちにもなる。



 こうした様々な理由で探索者達はいらついていった。

 それが迷宮探索では間違いのもとになると分かっていてもだ。

 意識が散って集中力がなくなる。

 それが危険を察知する妨げになるのだ。

 そうと分かっていても、気持ちをなだめるのはむずかしい。

 思考や意識を持て余しながら、探索者達は進んでいく。



 そんな彼らも、突き当たりにたどり着いて少しだけ安堵した。

 この空間も無限に広がってるわけではないと知って。

 そして、突き当たった壁沿いに移動していく。

 その壁がどこにどのように続いてるのかを確かめるために。



 壁沿いに歩いて分かったが、それが2階の外殻だった。

 縦横400メートルずつ、標準的な区域でいうなら、縦横20区域で出来上がっている。

 壁沿いにあるいてそれが分かった。



 大まかな枠組みが分かった事で、探索もしやすくなった。

 あとはその内側をしらみつぶしにしていくだけだ。



 そこからは早かった。

 大まかな形が分かり、どのくらい歩けば良いのかも分かった。

 その中を埋めていくのはそう大変ではない。

 精神的な負担は大きく減る。

 人間、どこまで頑張れば良いのか分かれば、意外とやる気を保てるものだ。



 そうなった探索者達は、2階をいくらか穏やかな気持ちで探る事が出来た。

 下に続く階段も見つける事が出来た。

 それでも部屋全体の探索が終わってなかったので、もう少し2階に止まったが。

 それでも1階よりも探索を早く終えることが出来た。

 暗いだけで障害物がないのだから楽なものだった。

 この階は真っ暗なだけで、罠も怪物もいなかった。



「それじゃ、3階に行くぞ」

 意気揚々とまではいかないが、少しばかりやる気が回復した探索者達。

 そんな彼らは階段を下っていく。

 残った期間で少しでも迷宮を調べ上げるために。

 だが、その足は階段を少し下ったところで止まる。



「なんだ?」

 先を進む者は妙な違和感をおぼえた。

 足に何かがまとわりついている。

 そこから違和感がこみ上げてきた。

 すぐに引き返し、階段を駆け上がる。

「何かある」

 まだ2階に止まって様子を見ていた仲間に告げる。



 それが何なのか分からないが、何をされたのかはすぐに分かった。

 3階に足だけ踏み入れた者が叫びだしたからだ。

「痒い、かゆかゆかゆかゆ、かゆい!」

 そういって靴を脱ぎ捨ててひっかき出す。

「治療、治療!」

 叫ぶ先導者に、あわてて魔術・超能力を使おうとする仲間。

 しかし、すぐに思い出す。

 この2階も魔術・超能力が使えない事を。



「やむを得ん、帰るぞ」

 その場で全員、帰還の魔術を使っていく。

 探索を中断し、一度外に出る事にした。



 そして外に出たところで何が起こってるのかを知る。

 先に進んだ先導者の足。

 靴を脱ぎ、ズボンをまくりあげたそこには、大量の凸凹が発生していた。

 一目見てそれがなんであるのかも分かった。

「これ、蚊に血を吸われた跡じゃ?」

「そうだな」

 間違いなくそれは、虫に食われた跡だった。

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