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19/110

19 1階をこえてようやく2階に、しかしそこもやはり面倒な場所だった。

 気だるさを重ねながら迷宮探索を進めていく。

 無駄に広い1階を歩き回り、何がどこにあるのかを調べていく。

 これにより、1階が縦に100列、横に101列の四角形をしてるのが分かった。

 その途中で下に降りる階段も見つけた。



 怪物は一切いない。

 少なくとも探索者達が遭遇することはなかった。

 罠らしい罠もない。

 階段のある区域以外は全て回転床になってるだけで。



「面倒な迷宮だな」

 何度もそんな声が出てきた。

 誰もがそう思っていた。



 戦闘は無い、怪我を負うような罠もない。

 だが、ただひたすらに疲れた。

 回転する床に対処するためにゆっくり進まなければならない。

 それだけが面倒だった。



 依頼による調査という事も今回は足を引っ張った。

 なにせ、迷宮の状態を確かめるのだ。

 可能な限り隅々まで探っていかねばならない。

 おかげで、階段を見つけたあとも、踏み込んでない場所をさぐり続けた。

 そこにお宝でもあれば報われるのだが、当然そんな物があるわけもない。



 結局、1階の地図を作るだけで一週間を費やす事になった。

 それから休みを1日はさんで、これから2階である。

 ここまでが長かった。

 それがこれからも続くかと思うと、気が更に重くなる。

 それでも進まなければならなかった。



 のろのろと階段を降りて2階に。

 そこに何があるのかを警戒していく。



 さすがに階段をおりた直後に何かあるという事はなかった。

 だが、視界が塞がった。

 いきなりだが、それで探索者達が慌てる事は無い。

「暗黒地帯だな」

「ああ」

 落ち着いて声をかけあっていく。



 暗黒地帯。

 文字通り、暗闇が広がってる状態だ。

 この場所では、様々な明かりが効果を失う。

 蝋燭や懐中電灯から、魔術・超能力によるものまで。

 様々な光が消されていく。



 その為、目の前に何があるかすらも分からない。

 明かりそのものは、暗黒地帯を抜ければ戻ってくる。

 この空間が光を吸収してるだけなので、光が消えてるわけではない。

 灯っているがそれがかき消されてるだけなのだから。



 だが、見えないというのはかなり面倒だ。

 どの方向を向いてるのかも分からない。

 何があるのかも分からない。

 それこそ、目の前に何かがあっても気づけない。

 怪物から不意打ちを受ける可能性が高い。

 仕掛けられた罠に気づかない事もある。



 なのだが、レベルが上がればこういった問題はある程度解消する。

 ようは目で見えなくなるだけだ。

 他の感覚までおかしくなるわけではない。

 耳は聞こえるし、触れれば何かを感じる。

 レベルが上がればこういった能力も強化される。

 目が見えなくても、こういった感覚である程度補えるようになる。



 明確な超能力とまでいかなくても、気配を察知する事も出来る。

 何かが迫ってくれば気配を感じる事も出来る。

 障害物などもある程度把握できるようになる。

 察知できる範囲は限られるが、全く何も分からないわけではない。



 探知系の特殊能力を持ってる者にも、さほど怖いものではない。

 迷宮・怪物と共に人に備わったものに、レベルがある。

 人の能力を示すもので、これが上がるとゲームのように能力があがる。

 その際に、一般的なものとは別に特殊な能力を得る事も出来る。



 たとえば、常に方位が分かるとか、歩いた距離が分かるとか。

 目が見えなくても、どこに何があるかを把握出来る直観とか。

 こういった能力を獲得する事も出来る。



 おもに探索探知をもっぱらとする者達が獲得する事がおおい。

 いわゆる、斥候・偵察を担う者達だが。

 迷宮探索に必要なこういった能力を身につけてれば、暗黒地帯もそう怖いものではない。

 そういった者達にとって、暗黒地帯は障害にすらならない。



 この探索者達にもそういった能力を備えた者がいる。

 そこそこレベルを上げているので、ある程度必要な能力は獲得している。

 そんな斥候・偵察役の者が先導して進んでいく。

 その気配をたどって、他の者も続いていく。



「こっちだ」

 先に進む斥候・偵察役の声に従い、他の者も続いていく。

 あとはこの階を調査するだけだ。

 だが、1階の事があるので、誰もが懸念を抱いていた。



「ここも、1階と同じくらい広いのかな」

「かもなあ」

「やだな、それは」

 誰もが1階の広さにうんざりしていた。

 仕掛けのせいでやたらと手間をかけさせられた。

 同じようにこの2階も広かったら、調査に手間がかかる。

 その可能性を想像して、8人は早くも気を滅入らせていった。



 そうでなくても何も見えないのだ。

 気配や特殊能力で行動に支障はないとはいえ、簡単に慣れるものではない。

 五感の一つが使えないのだから、負担も大きい。

 そんな状態を続ければどうしても調子が悪くなる。

 1階のような広さでそれを続けさせられたらどうなるのか。

 考えたくもなかった。



「最悪だな」

「まったくだ」

 この迷宮が、と誰もが思った。

 しかし、続く言葉は少々違うものだった。

「この迷宮を作った奴や」

「まったくだ」

「その通り」

 力強く誰もが頷いた。

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