16 回転床攻略
調査にやってきた探索者達は、とりあえず考えた対策を実行していった。
回転床の部屋は、入ったら罠が発動する。
方向感覚を確実に失う。
なので、中に入る者と、外で待つ者に分けた。
外で待つ者は、部屋の扉を開いたままにする。
こうしておけば、部屋に入ってもどちらの方向を向いてるのかが分かるようになる。
開いたままの扉があるのだから。
扉を開いたままにするために、持参したブロックをはさみもした。
こうしておけば、半開きの状態を保てるからだ。
だが、残念ながらこれは失敗した。
自動的に閉まっていく扉は、ブロックを簡単に粉砕したからだ。
人の手で開いておく分には問題ないのだが。
つっかえ棒のようなものは容赦なく破壊するのが分かった。
それでも、人の手で扉を開いたままにしておけば良いのが分かる。
これでどこから来たのかが分かる。
それだけでも分かっていれば、方向はつかめる。
あとは方向を確かめながら進むだけ。
回転床は一度発動したら、新たな誰かが入るまで動かない。
なので、部屋に入ったあとは自由に動ける。
方向を確かめて進む事など簡単にできる。
もちろん、外に待機してる者が部屋に入ったら、また発動してしまう。
ただし、その時に回転床の対象になるのは、新たに入室した者だけ。
先に入っていた者には効果がない。
これは、この時初めて確認できた事でもあった。
今までは、その場にいる全員が対象になると考えられてきた。
回転床の特性をそこまで調べる者がいなかったからだ。
今回のように、順番に回転床の罠を発動させる事などほとんどなかった。
なので、こういう特徴・特性がある事も知られてなかった。
大げさかもしれないが、新たな発見である。
こうやって先に進みながら、調査に来た探索者達は地図を作っていく。
進みはどうしても遅くなるが、方向を確かめながら進めるので迷う事はない。
1区画ずつ慎重に確かめていく。
方向を見失ったら全てがご破算になるからだ。
そうして調べて分かったことだが、この1階部分は異様に広い。
普通、迷宮は縦横に20区画の正方形で作られている。
1区画の大きさが、縦横高さが20メートルずつの空間だ。
なので、奥行きが400メートル。
横幅も400メートルになる。
だが、この地下迷宮の1階はその範囲を超えていた。
まずは奥まで向かおうと、一直線に進んでいって分かったことだ。
「ここまであるのか……」
ようやくたどり着いた行き止まり。
そこまで、まっすぐ進んで100区域もかかった。
距離にして2000メートルになる。
普通に歩くだけなら大した距離ではない。
だが、回転床の部屋を渡りながらだとかなりの距離に感じた。
しかも、調査はまだ終わってない。
これだけの奥行きがあるのだ。
横方向にも同じように広がってる可能性がある。
その全てを調べるのも手間がかかる。
「本当に面倒な迷宮だな」
この迷宮の底意地の悪さを垣間見た思いだった。
それでも調査に来た者達は引き返さない。
限界まで、とはさすがに言わないが、出来るだけ調査をしていくつもりだった。
適当に手を抜く事なく仕事をこなすつもりだ。
手抜きをして信用を無くすつもりはなかった。
それだけに、この無駄に広い、進むだけでも手間のかかる迷宮に頭を悩ませた。
奥までくるのだけでも100区域をまたいだ。
横にも同じくらい広がってるとなると、かなりの区域を網羅する必要が出てくる。
その手間がとてつもなく面倒だった。
「まったく……」
8人の探索者は何度もため息を吐き出す事になる。
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