107 しがらみを捨てる後押しをしていく
地球からの脱出。
言うなればそうなる事を実行していく。
気力と霊気を使って迷宮を中心とした別宇宙を作る。
その瞬間、トモヒロの迷宮は地球からもこの宇宙からも切り離される。
その為に必要な気力や霊気は莫大なものになる。
貯めるためにそれなりの時間が必要になる。
その時間を稼ぐために、他国の迷宮への干渉を進めていく。
出来るかぎり多くの探索者を迷宮に投入していく。
その中にトモヒロの迷宮で作られた人造人間も紛れ込ませていく。
人間として生まれた怪物であるそれらは、他の多くの者達と共に迷宮に挑み、攻略を進めていく。
同時にそれは迷宮に挑む探索者の意識操作も担っている。
神話や宗教にまつわる迷宮も多い。
そういった迷宮に攻め込む事に抵抗を持つ者は数多くいる。
迷宮に協力する人間すらいるほどだ。
そういった者達との戦いも迷宮に挑めば発生する。
これを躊躇う者達はどうしても出て来る。
そういった者達の考えを修正し、迷宮攻略に踏み出せるようにしなければならない。
他国の迷宮に送り込まれた者達には、その為の道筋を作っていく役目も担う事になる。
でなければとても迷宮攻略など出来やしない。
人間、なじんでるものに攻撃を仕掛けるのは難しい。
たとえそれが害悪であってもだ。
毒親が分かりやすいだろう。
子供にとって害にしかならない存在。
しかし子供はそんな親でも捨てられない。
縁を切った方が良いのにだ。
何かしらてこ入れが必要になる。
悪習であってもそこから脱却するには誰かの手助けがあった方が良い。
自力でどうにか出来る者もいるが、それは小数だ。
大多数は誰かの手助けが必要になる。
それに、たとえ自力でどうにか出来る者でも、助力があった方がやりやすい。
それをトモヒロは提供していく。
悪い因縁を断ち切る手助けをしていく。
今まで浸っていた場所から抜け出せるように。
新たな居場所を作っていく。
一番大事なのはここだ。
抜け出しても生きていける場所があれば良い。
それがあれば、幾らか簡単に人は今までを捨てられる。
それでも全員が今までを捨てられるわけではない。
どうしてもしがみつく者も出て来る。
別の場所に踏み出せる者はどうしても少ない。
だが、ほんの少しでも踏み出せる者がいればよい。
それが最初の一歩になる。
あとに続く者が出て来る。
他の誰かがやってる事ならば、人は続く事が出来る。
誰もいない所に踏み込める者は少ないのだ。
だからトモヒロは、一人でもいいから迷宮に立ち向かう者を作っていく。
続く者達を作るために。
その呼び水として迷宮で作った高レベルの人間を送り込む。
それらが突破口になり、水先案内人になり、同行者になり、支援者になる。
最初の一人を生み出すために。
続く大勢の先鞭をつけるために。
全力でやる。
目的は時間稼ぎでもだ。
この世界から逃げ切るための気力・霊気を集めながら。
そちらの方が最優先だが。
貯め込むのを阻害しない程度にだが。
それでも持てる全てを尽くしていく。
でなければ牽制することも出来ない。
相手は世界有数の迷宮だ。
生半可な事で動きを抑える事は出来ない。
可能な限り全力でいくしかない。
動きを鈍らせるために。
「面倒だな」
現状のうっとうしさをただ一言で語る。
ただの一声に万感を込めて。
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