表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

短編集

あるいは、匿名掲示板と罪人の間にある量子力学的現象について

作者: 佐々木 龍

 作者は、科学の事はよく分かっていない人です。あしからず。

 あの日は雪が降っていました。何年かに一度の大雪だと、夕方のニュースで報じられるのを聞きながら、あと何回、この部屋の窓からいつもの街並みを見ることが出来るだろう、と考えていたのです。


***


 2025年、3月20日。なんと、匿名掲示板に私専用のスレッドが立っているではないか。誰だ、内部事情をこんなところに書き込んだのは。


 ……まあいい。どうせ、ろくでもない事が書かれて……ああ、ちゃんと私の話、分かってくれた人もいるんだな。そう、世界初・量子移動装置実験失敗の背景には、矢部(やべ)教授の不倫騒動があって……番組では言えなかった事も、ちゃんと分かってる人は分かって……いや違う。そうじゃない。私は矢部教授の愛人じゃない。愛人は蒲田(かまた)君。お金に困ってた蒲田君を援助するうちに、そういう関係になったのが事実。何で私と……大体矢部教授は男しか好きじゃないから。いや、矢部教授が愛したのは、自分だけ。そうじゃなきゃ、蒲田君の存在を消したりしない。


 そもそもの発端は、量子移動装置「Memorizer」の研究をしていた「辺境大学・矢部研究室」が突如、研究成果が出ていない事を理由にスポンサー側から研究費の削減を一方的に通告された事だった。

 成果を焦った矢部教授らは、とうとう倫理的な問題を踏み越えてしまった。というよりも、純粋な若者が自ら志願し、「シュレーディンガーの猫」となった。それが、蒲田君だった……


 蒲田君と、蒲田君の犬のジョンは凍結され、仮死状態になった。そして、彼らはそれぞれの場所で装置にセットされ、彼らが蘇生した時、彼らの意識が同期するか私たちは固唾(かたず)を飲んで見守った。


 結論を言うと、彼らは死んだ。私たちは……矢部教授は、実験装置を開錠する事をかたくなに拒んだ。その中身を見てしまえば、生、または死の状態は現実として固定する。確率は、半々。装置の中身……すなわち蒲田君とジョンを見なければ、その生死は分からない。それが、我々「辺境大学・矢部研究室」の共通認識だった。


***


 今私は、凍てつくような部屋でこの手紙を書いています。インタビューの申し入れの事を聞いた時は、また掲示板の噂話のように面白おかしく書かれるのかと、正直に言えば、嫌な気持ちにもなりました。だけど、私はそうやっていわれなき罪を着せられ、余分に罰せられたいような気持でもあったのです。


 あなたの思うままに書いて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 以前 感想をいただいた者です。 上手な方の文章は立体的なのだなぁ~と つくづく思いました。 こちらの文面は 平たい族です。 蒲田君とジョン戻ってきてくれーと思い つつ、辺境大学・矢部研…
[良い点] 「だけど、私はそうやっていわれなき罪を着せられ、余分に罰せられたいような気持でもあったのです/あなたの思うままに書いて下さい」   [一言] ここまで傷ついている人間に対して誰が何を…
2023/01/23 17:29 退会済み
管理
[良い点] どう考えても凍結した段階で死んでいるよね、というツッコミ満載なので、どちらかというとコメディとして設定を楽しませて貰いました。 [気になる点] え、コメディでないの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ