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題3話 ドキドキのデート?



 そんなわけで俺と莉花は付き合う事になった。


 偽装だけど。


 それで、ちょうど良いことに次の日は休日だった。


 善は急げだ。


 俺は気が変わらないうちに、デートの約束をとりつける。


 そんなワクワクの心地で迎えた休日。


 二人でさっそく出かける事にした。


「とーわとーわ! あたし水族館に行きたい! 動物園はこないだ家族と行ったから」

「おっし! じゃあ、そこにするか」


 二人で出かけることは特別な事じゃない。


 今までも、色んな所へ出かけていた。


 だけど、恋人同士としていくのは初めてだった。


 偽物でもちょーうれしい!


「ふんふんふーん」


 水族館を訪れた莉花は、上機嫌だった。


「薄暗いねー」「青いねー」「魚がいるねー」


 莉花はいちいちそんな当たり前の事を俺に教えてくる。

 でもそんないちいち反応する様もかわいいんだな、これが。


 惚れた方が負けっていう言葉あるけど、ほんとそうかも。


 うへへへ。

 かわいいよ莉花たん。


「かってにどっか行くなよ、人多いんだから、迷子になったら困るだろ」

「ぶー、とーわ細かい」

「迷子アナウンスで子供の時みたいに呼び出されたいのか?」

「むぅ、いじわる」


 しぶしぶ差し出された手を握った。


 莉花の手は小さくて、温かくて、柔らかかった。


 俺達の関係はそれなりに長いから、手を繋ぐのは初めてじゃない。


 でも、今日は特別な感じがする。


「とーわの手、おっきいね。変だね。いつも手は繋いでるのに。今日はなんだか特別って感じがするよ」

「そうだな。俺もだ」


 莉花も俺と同じ気持ちだったようだ。


 俺達はそのまま手を繋ぎながら、水族館をまわっていった。








 深海魚の展示区画に行くと、照明が落ちてて暗くなった。


 ちょっと歩きにくいな。


「足元気を付けろよ」

「ひゃあ!」


 言ってる傍から。


 莉花がさっそくこけた。


 倒れる前に俺は幼なじみの腕を引いて、小柄な体を支える。


 ぐいっと、力をこめて引けば莉花は俺の胸の中に飛び込んできた。


「えへへ、ごめんね。いつもありがとう。とーわ」


 真下から見上げる莉花の笑顔。

 

 このままこの腕の中に閉じ込めておきたくなった。


「とーわ?」


 ぎゅっと、莉花の背中に腕を回す。


 周囲に他に人の影はない。


 さっきまで人いただろ。


 そういや、ここって不人気コーナーとして有名だったな。


 不憫な。


 大丈夫だ魚たちよ。


 お前達の不幸の分だけ俺が幸せになっとくから。


「ねー。とーわ。人、来ちゃうよー」

「来るまでなら、抱きしめててもいんだよな? そういう事でおK?」

「そういう意味じゃないもん。ばか」


 何とでも言え。

 好きな人といつまでもくっついていたいと思うのは、男として普通の事だろ。


「あったかいね。とーわの近くにいるとなんだかすっごく安心する」


 ドキドキしてほしかったんだけどな。


 そっか、安心しちゃうか。


 複雑な気分になった。


 はぁ。

 偽恋人になったのに、進展ないなぁ。



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