表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

題2話 偽物でも恋人になりたい



 俺は幼なじみの莉花の事が好きだ。


 舌足らずな口調で「とーわ」と呼んでくれるその声が好きだ。

 無警戒に俺の近くに近寄って来るところが好きだ。

 無邪気に笑うその顔も好きだ。

 何にでも一生懸命になれる性格も好き。


 けれど、莉花はまだ恋愛についてよく分かっていない様だった。


「好きだ! 莉花ちゃん、俺とつきあってくれ!」

「えーっと、ごめんなさい」


 たまに莉花に告白する男子がいるが、恋愛とかよく分からない莉花はそれらをみな断っていた。


 俺はずっと気になっていたので、俺は学校帰りに何とか勇気をだして、何でそんな風なのか聞いてみる事にした。


 誰かと付き合わないってのがいいけど、このままだと俺もつきあえないし。


 それは困る。


「なあ、莉花。もし俺がお前の事好きだっていったら、お前はどうする?」

「えっと、うーん」


 返事の入り方が、歴代の玉砕野郎達と同じだった事に少し絶望する。


 たまに告白現場をのぞくと、大抵こんな始まり方だった。


 一人絶望タイムに入る。


 これは駄目かもしれないと思った。


 だが、莉花は意外な言葉を返してきた。


「とーわだったら、良いよ。つきあっても」

「え、じゃあ」

「でも、恋愛とかよくわかんないけどね!」

「ええー」

「だって、恋ってどうやって落ちるの? みんなよく人を好きになってるけど、あたしは不思議だな」

「えええー」


 俺は緊張しながらも、最後のオチにがっかりした。


 でもがっかりはしてられない。

 いいアイデアを思い付いたから。


「だったらさ、試しに俺と付き合ってみないか? ほら、告白断る時に、言い訳できるぞ。彼氏いますからって」


 こういう形なら、玉砕せずに付き合えるかも!


 けど、莉花は渋ってるようだ。

 唇をとがらせてる。

 むくれてるのもかわゆい。


「でも、それ不真面目じゃない?」

「形から入るカップルだっているだろ。ほら、お見合い結婚とかあるじゃん」

「けど、告白断るために付き合うなんて、告白してきた人にも失礼だと思うよ」


 ぐぬぬ。

 もっともな正論だ。


 やはりこの手はだめだったか。


「とーわは困ってるの?」

「ん?」

「すっごく困ってそう。よく分からないけど、何か困った事があるなら、とーわと付き合っても良いよ」


 えっ、どうしよう。

 そうしちゃおっかな。


 いやいや、さっき莉花が失礼だって言ってただろうが。


「ぜひ、おねがいしまぁぁぁす」


 でも、俺の心は正直だったようだ。


「決定! はい決定! 俺達は今日から恋人同士だ! カップルだからな!」

「えぇー。なんか、うーん、ちょっと早まったかも」


 莉花、渾身の引き顔。

 うっ、やっちまったか。


 でも俺の口は取り消しの言葉を、一文字も放とうとしない。


 今さら取り消しはできませーん。って感じになってる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ