第1話「気づいたら転落死してました」
「はーい、今日は新入生みーんなタダです!ここにいる子全員成人してるよね?遠慮せずに飲み食いしてください!今日はぶれいこーでーす!グラス持ったかな?乾杯!」
俺と同回生で、幹事である如月みつるがハイテンションで乾杯の音頭をとり、その場にいるサークル員、新入生が一斉に乾杯する。
「かんぱーい!」
乾杯後、座敷の大広間でそれぞれが酒を飲み、既に場酔いするには完璧なムードが完成していた。
今日は俺が入部しているイベントサークルの新歓コンパで、2週間前に入学した新入生を囲うためサークル員が場を盛り上げて入部してもらおうと必死だ。
このサークルは月一くらいでどこかの場所を借りて酒飲んでどんちゃん騒ぎをしているのだが、俺はとりあえずイベサーに入っているという、なんだかパリピ感がある肩書きが欲しいためだけに入ってみた。
正直俺は世間から見れば陰キャで、大勢いる場なんて嫌で仕方がない。いつもの飲みなんてあまり参加していない。でも、全く参加しなかったら参加しなかったで「こいつ付き合い悪いな」と思われるだろうから程々で参加している。
こういう新入生と関わる場では、ある程度顔を出して、新歓頑張ってる感を出しておけば良いように見えるでしょ?という魂胆である。
まあ、俺も今年から2回生になって先輩面できるわけだから悪い気もしない。
そして俺にはもう一つ参加する理由があった。
彼女いない歴=年齢(20)の陰キャ童貞ワイ氏こと、小谷裕史様は、今日はお酒の勢いに任せて新入生女子たまをお持ち帰りしようと考えているぐへへ(自己紹介乙です)。
ちょうど今横の席に、及第点の顔をしたおなごがいる。こやつは化粧をしたらかなり良い点数になりそうだが、イベサーの陽の奴らは気づいていないし、もっと良い顔をした可愛子ちゃんを狙っているらしい。
「こういう場苦手?」
俺は恐縮してるらしいその女子に話しかける。
「あ、はい…。同じ授業を取っている友達に誘われたので来てみたんですが、ちょっとこういうの初めてで…」
彼女はそう言い、既に空席となった横の席を見てから彼女の友達らしい女子の方へ目を向けた。その友達は既に席移動をして、イケメン先輩の横に座ってウェイウェイしてた。
なるほどなるほど、この子絶対に絡む友達間違えたな、彼女と友達では住む世界が違う気がするゾ。まあ俺がいて良かったね♡良い話し相手になってあげるよ。
そんな拗らせ脳で、俺はこの子にターゲットを絞り、更にアプローチする。
「そうだよね、初めてだったら緊張しちゃうよね。でもちょっと怖いかもしれないけど、お酒飲んだら途端に楽しくなるよ!」
陰キャによる、アルハラまがいな発言がこれである。我ながら引いた。しかし、今回のミッションはお持ち帰りなので多少直球でもこれがいいんじゃあないか。
「そ、そういうもんなのですか?最初の注文は怖くてお茶にしましたが…。じゃあちょっと飲んでみようかな…」
彼女が少し飲む意思を見せたので、俺は待ってたかのように料理を出していた店員さんを呼び止め、カシスオレンジを注文した。
すぐに注文のカシオレが届き、彼女が飲む。
「うわぁ。飲んだ途端ちょっとフワフワします〜おいしいです!」
彼女は飲むペースも心得てないようで、一気にカシオレを飲み干す。これは良い。
「もうちょっと飲んでみたいかもです。他にオススメありますか?」
こうなればもうこっちのもんよ。俺は梅酒ロックを追加で注文して彼女に渡し、彼女はまたすぐに飲み干す。
彼女は飲むスピードは早いが、お酒にはそこまで強いわけではないらしい。少し眠そうな様子を見せる。
「梅酒?もおいしいですね〜。なんだか初めて知る世界って感じですごく気持ち良いです〜」
おいおいなんだか薬やってる言い方やしないか?ちょっと罪悪感が…。
その後も追加で注文し続け、彼女は完全に出来上がった。
「せんぷぁいがさんにんもいますぅ〜ぶんしんのじゅちゅでもしてるんですかぁ〜」
あー呂律もダメになってきた。そろそろ良いかもしれないな。
「思ったより飲みすぎちゃったね。君の家まで送ってあげたいけど場所分かんないし…。今日は俺の家で寝たら良いよ」
彼女はもはやこれに対する返事すらできないだろう、聞こえてないんじゃないか?
俺は彼女をおんぶし、盛り上がっている大広間から出ようとした。
「おいおい、小谷が珍しく女を連れてるぞ!」
「ちゃんと送ってあげろよー(笑)」
色々な冷やかしが飛んできたが、今日の俺は童貞を捨てると決めた強い勇者なので物ともせず、出口付近の席に座っている幹事の如月に自分の分の金を渡し、ついに外に出た。
うひょひょ、ついにワイも卒業。
童貞を捨てるぞ!ジ○ジ○!
女子をおんぶするとか本当に初めてで、成熟しているおっぱいが俺に当たってすでに興奮状態。
新歓コンパの居酒屋から俺の家までは5分も歩けばすぐ着く。実はこの家の近さ故の決意でもある。
だが、5分もおんぶして歩くのも中々しんどいんだな。俺はお酒をセーブしてたからそこまで酔ってる訳じゃないが、中々の疲労だ。
おっぱいの堪能と疲労とを感じながら、ついに我がボロアパートに着き二階にある俺の下宿先まで行く。
「とりあえず鍵を開けなきゃだから、この子を一旦床に寝かせて…」
ぶつぶつ独り言を言いつつ、彼女を通路に寝かせ、俺はカバンから鍵を探す。
鍵を見つけ、鍵穴にはめこもうとした時。
ミシミシ。
ん?なんだ地震か?いや俺もなんだかんだで酔ってたんだな、ちょっと足がおぼつかないじゃないか。
ドン!!
一瞬俺の体が宙に浮き、下の階へと落下する。
そしてその下の階の床に体が打ちつけられた後、俺の頭は激しく強打した。
どうやら頭の打ち所が悪かったらしく、俺は死ぬようだ。
って、なんでだよ…。一階と二階の間の高さってそんな無いだろ…。ワイ…死ぬんか…?
ファイナル○スティネーションとかで死神によって殺されるアレみたいだな…。
ざんねん‼︎わたしの じんせいは これでおわってしまった!!
つづく