第6話
この世界は転生者が何人もいるので魔眼もいます
「サナちゃんとファナちゃんの2人ついてなのですが、魔眼を持っている可能性が高いです。その為詳しい検査のために医局へ行くことをおすすめします」
私とファナ以外の家族を連れて戻ってきた先生は父親のルーンと母親のアルスリネに向かってそう言った。2人は目を丸くしてベッドに座っている私たち2人を見る。
「2人とも、ですか?片方ではなく」
「はい、2人とも魔眼と思われます。この紙の文字が読めないにもかかわらず装飾は細かい部分まで見えているようです」
先生は私たちに見せた物と同じ紙を両親に見せる。あの紙には魔力を含まないインクで文字を、魔力を含んだインクで装飾を描いているのだという。
「サナの体力が戻り次第連れていこうと思います」
アルスリネがそう答える。ルーンが先生を呼び出したと言っていたが、それほど体調が悪いようには見えない。やはりルーンが過保護だっただけのようだ。
魔眼とは幼い頃の病気などで稀に顕れる視覚異常のことである。多くの場合、魔力を含まない物は見えにくいとされるが、ほとんどの物に魔力が含まれているため生活に支障は無い。魔法は感受しやすく効きやすいため、激しい魔法には注意が必要。
「魔眼なんておとぎ話だと思っていたら実在したのね」
アルスリネに連れられて私とファナがやってきたのはたくさんの本が壁一面に並ぶ図書室だった。嫁入りした時にこの家へ持ってきたアルスリネの本なのだそう。中には魔眼について書かれた物もあるらしく、中身をかみ砕いて説明してくれた。
「激しい魔法とは何ですか、お母様?」
「そうね......他国の魔法部隊が使う強力な攻撃魔法は危ないかもしれないわ。この国には魔法部隊がないから特に危険は無いと思う」
アルスリネ曰く、遠くには魔法に長けた国もあり、そこでは些細な紛争にさえも攻撃魔法が使われるのだそう。
「魔眼と言ってもいくつか種類があるようね。これは医局で診て貰わないと分からないみたいよ」
早く体力をつけないとね、と優しく微笑むアルスリネ。確か身体が弱いこと以外欠点の無い天才と天界で読んだ。ファナとサナの身体が弱いのは遺伝のようだ。
「副団長ー、その子がサナちゃんですかー?」
騎士団で副団長を務める父親のルーンが私とファナを連れてきたのは、自宅の近くに設けられた騎士団の訓練場だ。家の中で訓練するよりも動きやすい事と、身体の弱いアルスリネより適任の指導役である女性騎士がいるのでいつも隅を借りて訓練している。
「ファナちゃんは少し走りましょうかー!サナちゃんはー、ストレッチから始めた方が良さそうねー?」
間延びした話し方をする騎士のお姉さんは他の女性騎士とファナを送り出すと、私のストレッチの補助をし始める。ずっと動いていなかったからか少し伸ばされただけでとても痛い。少しずつ慣らしていかないといけないようだ。
ストレッチから始まり、ウォーキングやランニング、木刀の素振りを経てようやく十分な体力がついたと判断された。ちなみに時折やって来た姉のリーダは私たちと違って本格的な剣術を教わっているようで、女性だけでなくがたいの良い男性騎士とも手合わせしていた。アルスリネ譲りの天才肌で身体も弱くないまさに万能な子だという情報は嘘ではないようだ。姉と比べられても差がありすぎて劣等感さえ生まれていない。憧れの姉という感覚だ。
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