第4話
投稿まで時間がかかってしまってすいません(T^T)
ユリィの正体について語られます
「お話の前に私の正体についてなのだけど、確かに私はこの世界では縁と健康の女神ユリーナティスよ。でもあなたはこの世界の子じゃないから信仰する必要なんて無いわよ。むしろ神側の人間になって貰いたいのに堅苦しいのは嫌だわ」
彼女曰く、私を呼び出したのは神の使者として頼み事を請け負って欲しいからだったのだそう。地上には余程の緊迫した理由が無ければ降り立てない神々の代わりに密かに行動し、定期的に報告をする者を神の使者と呼ぶらしい。
「あなたに頼みたいのはある人の観察なのだけど良いかしら?その人の様子に何か変わったことがあったら教えて欲しいの」
「ある人って誰ですか?怪しい行動はしたくないのだけど」
いくら神様の頼みといえども、ストーカーにはなりたくない。しかもサナの身体は弱いのだから長時間の観察には向かない。
「観察して欲しいのはファナよ。正しく言うとファナとして生活しているあなたのお姉さん。性格があまりにも変わっていると思わない?」
「そう言えば甘えん坊っぽくなってましたね。姉じゃないみたいです」
いきなり抱きついてきたり、訓練に行きたくないとただをこねたり、姉とは思えない行動が短い間でもたくさんあった。
「そうなの、幼児退行というのかしら?精神が子供帰りしているみたい。転生の影響で稀に起こる事でね、もしもの時に備えて監視を付けることになっているのよ」
転生者は神々にとって有用でありながら危険でもある。下手に世界を変化させると制御がきかなくなり、最悪の場合世界の滅亡もあり得るのだそう。子供帰りした状態では自制心が無く、無意識の内に重要なことを洩らしてしまうかもしれないということだ。
「私も転生者だから神々への報告は問題なし、その上双子の姉だから遠く離れることはほとんど無い。確かに私が適任ですね」
「理解が早くて助かるわ。念のため1週間に一度報告を頼めるかしら?あなたは私の加護が付いたお守りを持っているからそれで祈ればここに来れる」
祈るときは1人になること、緊急の報告がある時は神像の前で祈ること、ファナが何かおかしな行動をしそうだったらそれとなく止めさせること、などの注意を聞き、一息ついてお茶を頂く。
「お茶が出てきたということはまだお話があるということでしょうか?」
「うーん、別に伝えなくても良いかもしれないのだけどね。あなた視力測った?」
「いえ、この後かかりつけ医が来るみたいなのでその時じゃないですかね」
「この後、か......」
ユリーナティス様は天井を見上げるようにして何かを悩んでいるようだ。
「何か問題がありそうですか?」
「端的に言うと、あなたは転生の影響で日常生活に支障が出るほど視力が弱いの。それを補うために魔眼を授けたと連絡が来てたのよ。視界に違和感がなかった?」
そう言えば見えるのにぼやけているというか、見える部分と見えない部分にムラがあったような気がする。
「魔眼はその性質上魔力を帯びたものは見やすく、魔力を持たないものは見えにくいのよ」
幸いこの世界のほとんどの物に魔力が含まれているので全く見えないということは無いそうだ。
「お医者さんには見えるものにムラがあることを説明した方が良いわよ。魔眼については実在していることが医師界で広まっているから。ちなみにファナも同じ理由で魔眼よ」
一気にファンタジー的な要素が現れたな、と思いながら私はお茶を飲む。元日本人の私に配慮したのか緑茶だった。少し懐かしい。
「さて、そろそろ戻った方が良いわね。次は1週間後、頼んだわよ」
「分かりました。ところでここに来てる間地上の私はどうなっているのですか?突然目の前から消えた、とかなってませんよね?」
「安心して、大丈夫よ」
天界に来るのは魂だけであり、地上に残された身体の負担を軽減するために一瞬しか経っていない身体へ戻されるのだという。神様は驚くことを次々とするようだ。
「他に何か聞いておきたいことはないかしら?」
「1つだけ聞きます。姉さんは妹になりたかった、だから意図的に子供帰りしているとは考えられないですか?」
「......考えられるのだけど、それにしては自然過ぎる。念のためだから深く考えなくて良いわ。それからこれは案内人ユリィとしてのお願いだけど優しいお姉ちゃんになってあげてね」
それからあなたはリーダに甘えなさい、とユリーナティス様、いや、ユリィは言う。その目は何かを懐かしむように細められていた。
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