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一方、謁見の間では、勇者クリスを始め、聖女マリア、賢者リディアが国王の前にいた。


ブリタニア国国王チャールズ7世は勇者たち3名を前にして重むろに口を開く

「此度の魔王討伐大儀であった。再びこの世界に平和がもたらされたことを心から嬉しく思う」

「貴殿ら3名には、恩賞として、勇者クリスを一代限りの伯爵とし、聖女マリア、賢者リディアを子爵とする。」

「え?3名」

クリス達は聞き間違いかと思い後ろを振り返るが、そこには魔王討伐に苦楽を共にしたワタルの姿はない。

「あの、ワタルはどこに?」

チャールズ国王は言いよどむこともなくこういった。

「あやつはお役御免だ。とりたてて褒章を与える必要もない。」

国王の言葉に驚きを隠せないクリス達は相手が平価であることに多少躊躇しながらも、これまで自分たちの魔王討伐の旅を支えてくれたワタルが評価されないのは納得できないと説明した。

それでも、国王はもはやこの話題についてはこれまでと言わんばかりに、「今後もこの国のために貴殿らの尽力を賜りたい」とだけ述べて、謁見は終了となった。


この後、王都をパレードするとの説明が控室に案内する騎士よりあったので、クリスはワタルが今どこにいるのかを尋ねたが、案内の騎士は自分は知らないというばかりだった。


クリス達は王城の控室として用意された一室に入ると、先ほどワタルを閉じ込めようとした来住町が落ち着かない様子でクリス達勇者を迎えていた。

そこで、クリスは騎士長に訪ねた。

「ワタル」は今どちらに?」

すると来住町は動揺を隠せない面持ちで「彼の者は討伐の褒章を与えると、そのまま白から出ていきました」と説明した。

なぜ、自分たちに一言もなく出ていくのかとちょっと腹立たしくも感じたが、ワタルの性格からすれば、自分たちの魔王討伐に同行するときも、職業としてやっているという態度に終始していたので、そんなこともあるのかもしれないとクリス達は考えることにした。

ちょっと寂しくはあるけど。


王都でのパレードも終わり、クリス達3人は、宿に戻る前に久しぶりの王都での食事をしようと3人でレストランにやってきた。

そこは、魔王討伐に向けてパーティーが初顔合わせをした場所で壮行会をした場所であった。


「で、この後どうする?」

3人の中で一番年齢の低いリディアが切り出す。

魔王討伐の褒章として叙爵を受け貴族になったとはいえ、領地をもたないため、社交界に引きずり出されるほか貴族としてすることもない。

「そんな柄じゃないしね」

今度は最年長のマリアが口を開く。

リディアが最年少でマリアが最年長といっても、マリアは22歳でリディアは16歳、勇者のクリスことクリスティーナは18歳で、3人とも妙齢の美女であった。

さっきから店内にいる男性がチラチラと視線をお送っているのは、なんとかして声をかけられないかと考えているのだろう。

そう珍しいことでもなかった。

「どうせ暇だし、引き続きこのパーティーのまま冒険者を続けないか」

最後にクリスがそういうと、

「そうね」「そうだね」

二人m同意してなんとなく話がまとまった。

「ワタルも一緒ならいいのに」

ポツリとリディアが言った。

ほかの二人も同じ気持ちだったが、

「ワタルとは最初から魔王討伐の旅の間だけ、という約束だったからな」

初めて結成式の場で顔を合わせたときは、男一人だけ、自分たち女性3人のパーティーに加わるのはいろいろと支障があるのではと思っていたが、その後行動を共にしていくうちに、紳士的であり、細かい気遣いのできるワタルに信頼を寄せていったのだった。

「異性としてみてもらえなかったのは自信なくなるけどね」

マリアが呟く。

「それにしても最後に別れの言葉くらいあってもいいのではないか」

クリスが天井を見上げながら、独り言を言った。


翌朝、

宿を出たクリス達3人は王都にある冒険者ギルドに行った。

勇者として魔王討伐の旅に出るときにワタルの助言で冒険者ギルドで登録した。ブリタニア王国から討伐の旅の資金援助を受けるにあたり世界中にある冒険者ギルドを通じて資金を受け取り、また討伐の旅の途中で魔物の討伐をした際にも討伐報奨金や、素材の換金などに必要だからと言われていた。

魔王を討伐する実力の持ち主である3人は、討伐の遠征における実績もあって、Sランクにまで登り詰めていたが、旅の雑用をワタルが一手に引き受けていたので、冒険者カードはワタルが持っていたままであり、再発行してもらう必要があった。


冒険者ギルドの受付に来訪の目的と冒険者カードの再発行を依頼しようと、受付に近づくと、受付の女性が「あー、勇者様、この度は魔王の討伐本当にありがとうございます。お疲れ様です。」

その言葉にギルド内にいた冒険者が一斉にクリス達に視線を浴びせた。

「面倒なことにならなければいいのだが」そう考えていたクリスは、受付の次の一言がすぐに理解できなかった。

「クリス様たちの冒険者カードをワタル様よりお預かりしてます。」

「え?今何と?」

「ですから、クリス様達の冒険者カードをワタル様よりお預かりしています。」

なんでも昨日ワタルがフラッと冒険者ギルドに立ち寄り、クリス達3人の冒険者カードを宮廷騎士団経由で返却しておいてくれと言づけたそうだ。

渡しに行こうと思っていたところへクリス達が来たのである。

「ワタルは今どこにいる?」

あわててクリスは受付の女性に訪ねたが、

「存じ上げません。カードを渡されるとすぐにギルドを出ていかれました。あ、あとギルドに預けられたお金の残高は確認しておいてくれ、とのことです。」

急ぐこともあるまいと思いながらクリス達3人が確認すると、3人の名義でとんでもない金額が預けられていた。金貨1717枚、それは王都の市民が生涯生活できるだけの額で、王都の大通りに面した区画に平均サイズの家が買えるだけの金額であった。

「いったいこれは」

と訝しんでいたところに、受付が、ワタル様がこれをと紙切れを渡した。

開いてみると、

「別れの挨拶もできずに済まない。預かっていた冒険者カードを返す機会もなかったので、ギルドから返してもらうように頼んである。君たちの魔王討伐の路銀にと、ブリタニア王国から毎月金貨30枚を支給されていたが、遠征中の食事代と宿賃を差し引いても、討伐した魔物素材や報奨金すら残る状態で、お金がたまっていく一方だった。私は別途君たちのガイドとしての報酬を月額金貨10枚もらっているので、そこから自分の食費と旅費は出している。それではこの先の新しい人生も幸多かれと願ってお別れしよう」

そう書いてあった。



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