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牛肉1年分

ワタルは冒険者ギルドにいた。

秋の味覚を堪能しようとキノコ狩りに出かけたワタルだったが、スライムを連れて帰ることになり、ついでにキラーベアの毛皮と内臓を買い取ってもらおうと考えたからだ。

スライ亜夢に関してはテイマーではないのでこの世界でいうところの「契約」はしていないのだが、そうなると魔物を町に連れ込んだということになってしまうため、従魔であるという名目で登録することにした。

いずれにしても宿暮らしは面倒が多くなりそうだ。

魔王討伐の旅で十分すぎるくらい命を削り、戻ってくれば謀略によって報酬を踏み倒されたうえで命まで狙われたことに辟易し、大好きな山のふもとでスローライフを送りたい。そう考えていた。

幸いこの国は共和国であり、貴族だの、王族だの、皇族だの煩わしい人間関係に悩まされることもない。

この国のどこか静かな場所に拠点を探そう、ワタルはそう考えるようになっていた。

テントが完成するのはまだ当分先出。

そこで、いったん町を離れることにしたのだった。


ギルド受付で、エレナを呼んでもらう。

「あ、ワタルさん、今日は何でしょう。」

たまたま席を外していただけだったらしい。エレナはすぐに受付におカウンターにきてワタルに話しかけた。

「買取をお願いします。」

そういってワタルは、先日山で採集したキラーベアの内臓と毛皮を収納から出した。

採集してすぐに収納したため、鮮度の良い内臓にも驚かれたが、毛皮に至っては、後ろ足の膝裏から、首まで、1枚でつながっており、傷一つtない。

これにはエレナもしばし言葉を失っていた。

「えーとどうやったらこんな毛皮が手に入るんですか?」

「運がよかったみたいです。」面倒なので詳細は省いた。

「このまま買取もできますが、これほど大きくてしかも無傷となると、素材としての買取よりも、オークションにかけたほうがよいと思います。この国の富裕層だけでなく、隣国の貴族もこぞって求めようとするのではないでしょうか。」

まあ、予想通りの展開だった。

「急がないので、そのあたりはお任せします。ただ、出品はギルドの名前で、匿名になるようにしてください。。面倒事には巻き込まれたくないので。」

時折、状態の良い素材が流通すると、採集者に指名依頼が来ることがあるのだが、そういうものにかかわりたくなかったのである。

「あと、半年先くらいには戻ってきますが、ほかの町に行こうと思います。買取の代金は口座に入れておいて頂けますか。」

「わかりました。。よその町に行ってしまわれるんですか。ギルドとしては、腕の立つ冒険者さんには長く滞在してもらうほうが嬉しいのですが。」

討伐依頼や素材の買取と販売によって手数料が収入源となるギルドにしてみれば、高い報酬になるランク上位の魔物討伐であったり、多角れる素材を調達できる冒険者は文字通り金の卵であるから、できれば引き止めたいと考える。高ランクの冒険者に専属の受付がつくのも、便宜を図ることで、多く利用してもらおうという意図がある。

「お世話になりました。」そう言ってワタルはギルドを出た。

「次はどこに行こうか。」

誰に聞かせるでもなく、そうつぶやきながら、ワタルはフランフールの町を後にして、街道をゲルマニアの首都ベルリーに向かって歩き出した。

ベルリーまでは馬車で2週間かかる。のんびり歩いていくなら、途中の村や町に立ち寄って1か月半というところか。

どうせまたこの町にテントを引き取りに戻ってこなければならないのだから、あまり遠くまで行くのは戻ってくるのが面倒になる。


1週間後、ワタルは、フランフールとベルリーのちょうど中間点くらいにある町、ノインフェルトにたどり着いた。

ここまで野営を続けている間に、スライムは、お皿を食べずに残してくれるようになった。

ワタルが、スライムのご飯を皿にもって、スライムが食べ物だけを消化した時点で持ち上げてお皿を回収するという作業を3日繰り返したところ、4日目からは、皿に乗っている食べ物だけ食べたところで、体内に取り込むのをためたのだった。

どうやら学習してくれているらしい。

夜は最初の時と同じようにテントの天上からつるした籠に入れようとしたが、すぐに降りてきてシュラフの中に潜り込むので、そのままにすることにした。寝返り魚うったとおきに下敷きにするんじゃないかと心配ではあったのだが、朝起きるとシュラフの上からワタルの上を転がってよじ登ってを繰り返している。

ノインフェルトの町では早速食糧を買いに行った。

クマ肉がアイテムボックスの中にあったが、獲ってすぐに収納したため、熟成されておらず、おいしくない肉を食べるつもりはなかった。


ワタルのように定住場所をもたない冒険者にとって、採集した肉を自分で食べるには、肉の熟成というのは一つの課題であった。


どうせなら、自分で獲った肉をおいしく食べたい。

この町での課題をお肉の熟成にすることに決めたワタルは、とりあえず、当面の食糧として、パンとチーズと肉と野菜を、1か月分買い込むことにした。

肉やで「ここからここまで全部」といって陳列ケースを空にしたときは、店員が驚きながらも満面の笑顔で対応していたのが印象的だった。

ワタルは買い物を終えると、オークションの代金確認もかねて町の冒険者ギルドに足を運んだ。

フランフールに比べると規模の小さな町であるノインフェルトの冒険者ギルドは、滞在する冒険者の数もそれほど多くはなさそうで、冒険者の数もまばらだった。

受付はアリアという名前の女性だった。

「オークションでの代金の振り込みを確認したいのだが」そういってワタルはギルドカードを差し出す。

フランフールの町で、オークションは1週間に一度開催されると聞いていたので、そろそろかと思ったのだった。だが、

ギルドカードを受け取ったアリアはカードを手元の水晶にかざしながら、「え^と確認させていただきましたが、ワタル様のキラーベアの毛皮は、3日後に行われるオークションに出品の予定でして、お時間をかけてしまい申し訳ございません」アリアが申し訳なさそうに謝罪した。

「あ、いえ、先のギルドで1週間に一度オークションが行われると聞いたもので、いつというところまで確認しなかったこちらの落ち度です。気になさらないでください。」そう答えたワタルだった。

そうなると、このん町で補給も終わったし、次の町に移動するか。

「あのー、もしお急ぎでなければ、ワタル様を腕の立つ冒険者と見込んでお願いしたい依頼があるのですが。」

ギルドカードでワタルがAランクであることを確認したアリアがそう切り出す。

うげー、面倒事に舞いこまれた予感がする。

それでも、必死に頼み込むアリアの目が潤んでいる。

女の波立って強力すぎるよなあ。

ベヒーモスの体当たりをものともしないワタルであるが、目の前のうるうる攻撃には勝てそうもない。

「とりあえず、お話は聞きますが、依頼を受ける受けないは内容を聞いてから判断します。」

ワタルに残された反撃はそれしかなかった。


ギルドをでたワタルは、町を出ると、すぐに来たに向かっていたアリアがお願いした依頼、それはキマイラの討伐だった。

ノインフェルトの町から北二反日ほどのところにある村の裏手にある山の中腹に広い高原があり、ショートホーンブルの生息地となっているのだが、2週間前くらいに、キマイラが住み着き、ショートホーンブルを餌にしているため、ショートホーンブルの数が激減しているらしく、無狩猟や酪農で生活している村の暮らしがなりたたなくなっているらしい。

寒村のため、遠方から高ランク冒険者を呼ぶだけの報酬も払えないため、キマイラの討伐ランクb何度にも関わらず、Cランク程度の報酬しか出せないそうであるが、足りない分は、村で作っているチーズとショートホーンブルのお肉1年分でなんとかならないかというものであった。

牛肉1年、ワタルが暮らしていた前世でも耳にしたことのある言葉だが、人を動かす力があるよね「お肉一年分って。1日分がどれほどなのか、詳細を確認しないとびっくりするくらい予想と違う内容になるけど。

まあそれはそれとして、酪農家さんとハンターさんが困っているならやるしかないか。

美人さんを泣かせるわけにみおいかないし。

ということで即答で依頼を受けたワタルだった。



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