一方そのころ王城では
ここは、リバープルの町でクリス達がワタルと別れてから数日後のブリタニア王国の王城の謁見の間
そこには、あの日の魔王討伐報告以来再び国王と勇者が相対していた。
まさか、私たちをねぎらう優しいお言葉の陰でワタルを殺そうとしていたなんて。
その後も連日催される王族貴族のパーティーに招待され、その都度魔王討伐の英雄譚を求められてきたクリス達
今となっては苦々しい思い出にしかならない。
「あの日、魔王討伐の最大能聾者だったワタルはお金だけ受け取ってさっさといなくなってしまったとご説明を頂きました。」
「ワタルがいなくなった経過はその通りだ、しかし、魔王討伐の最大の功労者は勇者であるそなたであろう。彼の者は、パーティーの事務会計と野営のサポートだったと聞き及んでいるぞ」
そう、国王は世間知らずであり、まあ物討伐においてワタルが果たした役割を正当に評価することなどできるはずがない。
そもそもいつ魔物に襲われるかわからない森や遺跡やダンジョンにおいて、先頭を歩き、危険を回避するだけでなく、戦闘時に全英にいながら、全体への指示を出し、加えてパーティー全員の戦闘時の支援をしながら、しかも相手の攻撃を防御するなど、勇者クリスからみても化け物にしか見えない。
なのに、野営をすれば、暖かくておいしい食事を出し、風呂もトイレも用意し、あまつさえ、快適にンエムるための寝具とテントまで用意してくれているのである。
長期にわたる戦闘の日々において、ストレスを軽減するどころか、翌朝には解消されている環境がどれだけ助けになったか、何度もそう説明しているのに、勇者殿は謙虚ですなあ、で終わってしまう。
ワタルがいなくなった今、魔王討伐のような功績を期待されることが間違っている。
「わたくしたちはリバープルの町でワタルに会ってまいりました。あの日ワタルがどのような目にあったかも聞いております。」
ともすれば国王に対する不敬罪として処罰されかねない発言だが、「勇者免責」、勇者の功績はブリタニア王国一か国のみが享受するものではなく、魔王の脅威にさらされた全世界にとって共通の憂いを排除したのである。全世界の尊敬と感謝を受ける勇者は一国の長とも対等で発言する権限を与えられている。それは齢18の小娘でしかないクリスにあっても同じことであった。
「それはワタルとやらが勘違いしておるのだろう。」
あたかもこの場におらず、弁護の発言ができないワタルを非難すれば、話が終わると考えているかのようである。
そうくるなら、こっちにも考えがあるわ、クリスは決意し口に出す。
「わたくしたちの使命である魔王討伐は果たしました。勇者としてのパーティーは解散でよろしいですわね。」
「それは、待たれよ。貴殿らのような英雄をかかえる我が国にとって外交の席に貴殿らが同席することは国益にとっても重要なのだ。」
「勇者を政治利用しないことは他国との取り決めであったのではありませんか。」
そう、勇者が国境を越えて迅速に活動できるよう、他国においても勇者免責を与え最大限の協力をする、その中には支度支援金の応分負担も含めて、代わりに、一国の所有物として扱わないという取り決めがなされていた。
「いや、利用しようというのではない。勇者も妙齢のうえ類まれなる美貌の持ち主、先日パーティーで引き合わせた公爵家の次男を筆頭に紹介を求めるものが後を絶たなくての。」
クリスは内心でため息をついた。
そう、クリスを婚姻によって王国貴族の家につなぎとめておけばその政治手系価値は計り知れない、そんなゲスい打算によるお見合いのようなパーティーへの出席を求められ続け、クリスはうんざりするだけでなく、精神を削られていた。
これは聖女マリアについても賢者リディアについても同じで、それぞれタイプこそ違えいずれ劣らぬ美貌の持ち主である。
だが、悲しいかな、クリスについては勇者の血を取り込もうとする貴族のターゲットとして政略的な結婚を打診する反面相手は同年代に限定されていたが、3人の中で最年長であり、聖女の肩書もあいまって、慈母愛の象徴のような雰囲気を持ちながら、スタイルも3人の中で突出しているマリアには、あからさまに目的を勘違いしているヒヒj・・伯爵様や、実年齢よりも幼く見える外見にもかかわらず、闇属性を除く6属性全ての上位魔法を習得し最年少で賢者の称号を得たグループ最年少のリディアについては、ロリk・・・どちらかというと希少性のある性癖の初老の男性までが言い寄って、アンデッドの攻撃すら蚊に刺されたほどにも効かない精神異常耐性をもつ彼女らに、ゾンビロードですらなしえなかったダメージを与え続けていた。
「魔王討伐によって勇者としての使命は終わりました。今後はSランク冒険者パーティーとして国内外の人のために魔物討伐を続けることに致します。以後は外交の場への出席依頼はご遠慮いただけないでしょうか。魔王討伐の功績者という名目でどうしてもとお呼びになるのであれば、ワタル様も同席でなければ応じません。それではこれで失礼いたします。」
そういってクリスたちは謁見の間を後にするのであった。
宿の1回の食堂で、クリス達3人は今後について話し合う。
「この後どうする?」
年齢が多少離れているといっても、一緒に長年魔王討伐の目標に向かって苦楽を共にした仲間である。はた目には昼休みの女子高生くらいの雰囲気を漂わせて話をする仲である。
「どうしよう?」
質問に質問で返すのもこの年頃のお約束である。
「私みんなについてく。」
大体3人以上いれば一人はこんな感じだ。
「で、どうする?」
一周した。
「面倒だけど、勇者の名において、強力な魔物退治を放り投げてワタルに会いに行くというわけにはいかないのよね。
クリスがため息交じりで口を開き始める。」
「けど、定期的にお休みを取ることはこの先はしてもよいと思うのよね。だから、お休みになったらワタルに会いに行かない?」
「「賛成」」
なんだかんだいってもワタルと一緒に魔王討伐をしていたころが楽しかった。それなのにワタルが突然さよならも言わずに姿を消した。
あまりにも薄情だと憤りながらリバープルで問い詰めようとしたら、真相は命を狙われてたなんて。
それにしても、ワタルはワタルは手を出してくれないのかな。
もしかして人には言えない性癖の持ち主?
私たちだけ宿を手配し、自分は情報収集があるからと数日いなくなって、戻ってくるとダンジョンの地図まで出来上がっている。
私たちがいない間何をしてたのかしら。
今はお休み取れるように一生懸命勇者としての役割を果たそう。
そして最初の休みになったら、会いに行ってみよう。