山のラーメンは正義(1)
とりあえず、テントの注文はしたけど、ポールはどうしよう?うっかりしていた。
ため息をつきながらワタルは店を出て、冒険者ギルドに向かう。
ポールの素材になりそうなもののヒントをもらうためだ。
再び冒険者ギルドを訪れる。
ギルドの受付の人がワタルを見つけて声をかけてきた。
「あれ?店の場所わからなかったですか?」
「いや、店はすぐにわかったありがとう。実は、テントのポールにする素材が思いつかなくて。」
「銅製ではダメなんですか」
そうこの世界では、一般的に銅を筒状にしたものが用いられる。モノポールのテントだとひどいときはその辺の木の枝を拾ってきてつっかえ棒にしている。
「いや、訳あって撓る金属を探しているのだが、心当たりはないか?」
「金属というのは固いものです。細い板状にすれば曲がりますけど、テントにならないですよね。」
そう、そうなのだ。アルミニウムのないこの世界は、アルミ合金もない。
銅に別の鉱物を混ぜることでできる真鍮もない。
「それよりワタルさんは冒険者なのでしょう。この町から馬車で2日間北に行ったところにある鉱山までの護衛のクエストがあるのですが、受けてみませんか」
暗い顔をしているワタルに向かって受付の女性が励ますように言った。
なんでもココフランフールにも支店がある大きな商会の持ち物である鉱山から精製した銀を運搬するのに、道中を警護してほしいという内容らしい。
鉱山の主要な鉱物は銀だそうだが、ごくまれにミスリルの鉱脈が見つかることもあるらしい。
このため道中の商会の馬車が盗賊に襲われることもあり、護衛が必要だとのこと
「もしかしたらお求めになっている素材のヒントがあるかもしれませんよ」
報酬は往復で余裕を見て1週間で金貨3枚、まあまあな条件だ。食事はつくらしい。
どうせ、テントが出来上がるまでは遠出もできないことだし。
「わかった引き受けよう」
ギルドカードを差し出すと受付が何やら推奨にカードをかざしたところで、大声を上げた
「えーーー?ワタル様って、勇者パー ッモゴッ」ワタルは慌てて受付の女性の口をふさいだ。
世に出回っているのは勇者クリスと聖女マリア、賢者リディアの名前だけでワタルの名前は表には出ておらず、もちろん知っている人は知っているにしても、まさかこんな地方の町のギルドの受付にバレるとは思っていなかった。面倒なことになりそうなので、言葉を遮った。
「その依頼は終わったんだ。公にするのは控えてもらえないかな。面倒なんだ。その話をするなら町を出ていかなければならなくなる。それにしてもどうしてわかった?」
ギルドカードに最近の依頼の成否が記録されているのです。ランクが合致してても、受任できる依頼できない依頼というのもあるので、これで確認するんです。」
「くれぐれも内緒にしてくれ。ところで私は条件に合っているのか?
「あ、はい。もちろんです。というよりAランクの人には安すぎる報酬じゃないですか?
「構わない。どうせ暇だし。半年後にはテントを受け取らなければならないのだし、あまり遠くにはいけない。」
「わかりました、依頼完了の手続をいたします。あと申し遅れましたが私はエレナと言います。この町の冒険者ギルドの受付をさせていただいてます。高ランクの冒険者様の場合、受付従業員の指名などもできますのでよろしければぜひ。」
「わかった。」
「それでは以来の日時は明日朝9時に町の入り口の門の前で。商会が荷馬車を用意して待ち合わせることになっています。」
翌日朝、ワタルは門の前に予定時刻の156分前に到着した。荷馬車が3台待機しており、それぞれの馬車の御者のほかに、15人の作業員、スリーピーっすの上等なスーツを着た初老の男性がいた。
身なりからすると責任者はこの人だろう。
「どなたかな?」初老の男性が訪ねてくる。
「ギルドから派遣されて参りました護衛を担当させていただきますワタルと申します。」
「冒険者にしては礼儀をわきまえた対応感心いたします。」
「わたくしはヴォルフガング商会のフランフール支店長代理をしておりますベルクと申します。此度は急の要請にも関わらず、護衛をご快諾賜り感謝いたします。本日より無事積み荷を持って再びこの地に戻るまで、よろしくお願いいたします。」
挨拶を済ませたところへ、集合時刻に遅れて、体格のいい冒険者風の男性2名が現れた。
「ギルドが手配した護衛の任務というのはあんたらか?護衛を担当する冒険者パーティー「紅の朝陽は沈んでくれない」のワルダーとグルカンだ。二人ともBランクだ大船に乗ったつもりでいてくれ」
「おーそれは心強い、ぜひお願いいたします。」
え?何そのネーミングセンス。マイナスになることはあってもいいこと一つもないんじゃないの?
しかも名前がワルだとかグルだとか、これってあれか?もしかしてフラグか?
「それでは参りましょう」ベルクの合図でワタル達は鉱山に向けて出発したのだった。