3 西園寺七海は最弱だった!?
「その小娘に魔王を倒せるはずがない。」
そう言って立ち上がったのはグラム王国の参謀、セレルだ。
「陛下はこのような、か弱い娘に魔王が倒せると本当にお考えですか?この娘には魔法の才などあるようには見えません。」
「セレル。落ち着け。代々、国の危機で召喚された巫女や勇者たちには天賦の魔法力があったと聞いておる。」
「ですが、私は納得いきません。ここで証明して貰わないと。」
そういって、その武人は七海の前に近づいた。
「おい、娘。お前の魔法力数値を教えろ。」
「まほうりょくすうち??」
七海は聞き慣れない言葉にきょとんとした顔をしている。
「そんなのもわからないのか。お前の視界に映っているであろう!意識をするのだ。」
「はっ!はい」
七海は慌てて、"魔力"の言葉をイメージした。すると視界にうっすらと文字が浮かび上がってきたのがわかった。
「1です。」
「ん?なんだって?」
「1です!」
「はあ???最弱じゃねえか!」
これには部屋にいた貴族や兵士たちも一同に動揺した。
(えっ!レベル1なのか、俺達兵士でもレベル10はあるっていうのに。)
(私達の世界の命運をこんな約立たずの娘に託すことなんてできないわ!)
(おいおい、グラハムの伝説の書とやらは本当なんだろうな?)
もはや、王宮の召喚の間は不安で包まれていた。そこに畳み掛けるようにセレルが叫ぶ。
「陛下!やはりこの娘は無能の約立たずです。所詮、グラハムのたわごと。聞くに値しません!それよりも我が軍に出動命令を出してください。今すぐにでも10万の兵が魔王軍を叩きのめします!」
これには自信のあった王ウォルシュも傾きかける。
「そ、そうかのお。でも隣国のギー卜は7万の兵力でも大敗したと聞くが。」
「心配に足りません。私が率いれば、造作もないことです。そもそも奇跡の赤石の力はこのような小娘にはもったいない代物です。我が国の発展に使うべきです。」
あまりの議論の急展開に危機感をつのらせたのは文官グラハムだ。
「陛下、そしてセレル。伝説の魔法書の予言は絶対です。先走ってはいけません。兵力を無駄にするだけです。彼女を信じましょう。」
「信じるだって??魔法書もこの娘のことも信用なんてできないだろ。そもそも魔法力1の時点で予言がハズレてるじゃないか!」
セレルは決定的な矛盾をつく。
(そうだよなあ。)
(魔法書とはいえただの紙っぺらだからなあ)
周りの貴族たちもセレンの意見に同調気味だ。
七海はこのままでは奇跡の赤石を取り戻すことはできない。彼女も直感的に大きな軍勢だけでは魔王を倒せないと思った。しかし、この場にいる大勢のことを説得できるだろうか。いやできない。だって彼女はこの国では最弱なのだから。だが、元の世界に帰れないのはいやだった。また親友と何気ない会話がしたかった。
彼女は意を決し、王の横へ向かった。
「わ、わたしは必ず魔王を倒します!!」
召喚の間にいた全員が彼女の方向を向いた。