2 西園寺七海は異世界に召喚された
「おお、これが、かの伝説の巫女であるか」
グラム王国国王ウォルシュは口元にたくわえた白ひげをさわっている。
気を失っていた七海は目を覚ますと、見知らぬ場所に倒れていた。
「ここは......」
「ようこそおいでなさいました。光の巫女さま。ここはグラム王国王宮であります。この国を救うためにあなたを召喚しました。」
声がする方向を向くと、現代とは思えない古式な服をまとった男性がこちらを向いていた。
「失礼、私はグラム王国魔法騎士団隊長のグラハムと申します。」
「なぜ......私がここに?」
「私たちがあなたを召喚したのです。今、この世界は魔王軍の侵略を受け、危機に瀕しています。我が国に伝わる伝説の書物には、異世界より召喚されし巫女が危機を脱する鍵となると書いてあるのです。」
気が動転してる七海は何を言ってるのか、最初の数秒理解できなかった。
ただしばらくすると、この異常な世界から早く脱して、インターネットをしたい、さやかと話したいという気持ちが沸き上がってきた。
「私は、元の世界に帰れるのですか?」
そう聞いた七海に、その魔法文官は目を光らせた。
「はい、ただひとつだけ方法があります。それは......」
「それは......?」
七海は息を飲んだ。
「魔王を討伐し、所有物である奇跡の赤石にキスをすることなのです。その石には莫大な力が秘めてあるのです。」
七海はまだ可能性が残っていることに少し安堵した。
「その魔王とやらを倒して、石を取ればいいのね?」
「はい、ですが魔王軍は日に日に勢力を増し続け、あと半年足らずでこの世界を掌握してしまうでしょう。もし今、魔王軍を止められなければ、最後に残ったこの王都に入り込み、赤石を使い一瞬で私達を滅ぼすでしょう。」
「その石は、ひとつしかないものなの?」
「はい。ですから、あなたは二度と元の世界には戻れません」
「あと半年...」
思ったよりもはるかに短い期間をつきつけられ七海は動揺した。
「しかし、あなたには私達のしらない知識と優しさを兼ね備えています。さらにこの巫女の秘具も.....」
文官がそういった後、七海にはこの国の王と思わしき人物が近づいてきた。
「私は、この国の王ウォルシュである。奇跡の巫女よ、わが国の命運はそなたにかかっておる。できることはほとんどないが、せめて王家に伝わる秘具を授けよう。無事、魔王を打ち取ることができれば、元の世界に帰れることができるであろう。」
そういって、エメラルド色の宝石がついた首飾りを七海の首にかけた。
国王が席に座ろうとした直後、横にいた武人が立ち上がった。
「まった。その小娘に魔王が倒せるわけがない」