決着
肉に消化され、よくわからんプロセスでリポップ。
そしたら神になった俺は……って字面だけでもひどいな。
とりあえず神である。なんの神かわからんけど神なのである。
管理権限であらゆる攻撃は念じただけで攻撃の方からそれていく。
まさに最強……つまりだ。
光の神をぶん殴れるわけだ。
俺は光の神の前に進む。
「傲慢で愚かな子どもだ」
収束された光線が俺を狙い続ける。
だが俺はその光を次々と曲げていく。
神殿は焼け、溶けもせずに灰になる。
そして俺はと言うと……。
うっわ! これきつい!
脳みそとろける!
集中してないと一発で死ぬ!
と泣き言を脳内で反芻していた。
いきなり死にゲーやらされたら誰でもそうなると思う。
【ご主人様がんばれ!】
おうよ! やるぜ! やったるぜー!
気合だ!
「あははははは! 面白い! 神になったばかりだというのに力を使いこなすか!」
使いこなせてないでゴザル!
脳みそフル回転でなんとか食らいついているだけっす!
さらに次々と光が俺を襲う。
光を曲げるたびに俺の戦闘形態が剥がれていく。
その代わりに俺の姿は冬山での獣。
あの熊を倒した獣の姿に変わっていった。
素早く、しなやかな姿に。
狼でありながら狼ではない。
鹿の足と狼の牙と爪、毒を持つ獣に。
俺は光を曲げながら神に突撃する。
頭から最高のスピードで。
「あはははははは!」
神は笑っていた。
ぐちゃり。そのニヤけツラに俺は頭をぶち当てた。
神は飛んで行き、地面に激突しながらバウンドする。
湿った音が神殿に響いた。
光の神はピクリとも動かなかった。
あ、あれ……死んじゃった?
【え、嘘……神が死ぬなんて……】
だけどそいつは杞憂だった。
神は「ごふっ」っと咳をし、呼吸を始める。
「は、はははははははは! 死んだか! 私は死んだのか! 久しぶりだ! ああ、数千……いや数万年ぶりに死んだのか!」
神は……喜んでいた。
心の底から愉悦していた。
興奮した声を出す。
俺はリアクションに……困った。
神はもう一度咳をした。
赤い血がびしゃっと口から飛び出した。
「ふ、ふふふふふふ……驚いたか。神は死んでも滅することはない。強制的に復活させられるのだ」
あー……要するに攻略不可能ってこと?
なにそのクソゲー。
発売直後の洋ゲーかよ。
「くっくっくっくっく……安心しろ。お前を我と対等のもの神として認めよう。ようこそ新しき神よ」
……あ、わかっちゃった。
そういうことか!
人類の絶滅って俺を本気にさせる嘘だったのか!
俺を追い込んで神にしたんだ!
こ、この野郎おおおおおおおおおっ!
「それにしても……アデルのやつ。こんなに面白いやつをスカウトするなんて。くくく、ぐわーはっはっは!」
ぶちり。
俺の中で何かが切れた。
俺は獣の姿から戦闘形態になる。
そして光の神の前に立つ。
「くくく……もういいぞ。楽しかったぞ! あーはっはっは……」
「歯食いしばれ」
「は?」
俺は拳を握る。
そして思いっきり神の横っ面にぶちかました。
たぶん人生最大威力の拳だ。
「げぶっ!」
光の神は飛んでいく。
まずは顔がグッチャグチャになり、体のあちこちを破壊しながらパーツをぶちまけた。
「ふう、すっきり!」
俺は転生してから一番の笑顔を作った。
爽やかに。なにもかも荷を降ろした顔で。
【この人……光の神様ぶん殴ったよ!】
うるせえええええええ!
あのバカは一回殴んないとわからないんだ!
俺は何一つ悪くない! 悪いのは光の神だ!
文句言うやつは滅ぼしてくれる!
オラァッ! 文句あっか!
すると俺の頭の中に声が響いてくる。
「うむ。見事な拳であった。我も神になったときに殴ったぞ。殴り殺したのはお前くらいだが。なあ地母神」
「そうですね勝利の神よ。私も殴りました。よくやってくれましたラルフ! 軍神、たしかあなたもですよね?」
「うむ。儂も殴ってやった。よくやった小僧!」
神様からの「俺も殴った」宣言と祝辞が次々と。
要するに……神になるときの通過儀礼だったのだ。
光の神との戦いも拳をくれてやるのも。
そして神々からの祝辞が止まるとアデル様の声がした。
「ラルフ、すぐに神の国に来ますか?」
えええええええええええ!
いやねえっすわ。
夜に最終話アップします。




