暗闇の少女
青白い閃光と共に僕のもとに舞い降りた存在。その姿は凛として、顔や身体を覆う純白のコートが幻想的な雰囲気を醸し出している。またフードの中に覗く瞳は鋭く、そこにはさっきあの青年が向けた敵意と同じような冷たさを感じる。
しかしさっきのあの言葉が僕の耳にある。
『大丈夫?』
その言葉は紛れもない本物で、確かな温かさがそこにはあった。
戸惑いを隠せない僕のもとに彼の手が差し伸べられる。
「立てる‥?」
さっきと比べて比較的柔らかい声が届く。僕は小さく頷きその手に捕まるしかなかった。
手を少し引かれると共に顔が近くなり、フードに隠れていた長い髪が少し見えた。そういえば声のトーンが少し高かった気がする。でもそんなことを考えるや否やそれ以上の異様な感覚が来た。
(‥え‥?)
僕は生まれつき成長が遅く、先週の測定でもクラス内の男子で一番低く、女子でも真ん中より下だった。それだというのに‥
立ち上がった僕の目線より明らか下に,彼女の頭はあった。
思わず戯ける僕を前に彼女の目がより一層鋭さを増す。機嫌を損ねたのかもしれない。
「ご,ごめん‥ありがとう‥」
「ううん、まだ」
おぼつかない声での陳謝とお礼はその子の冷静な一言で一蹴された。
その刹那、上空に漂っていた煙が一瞬にして吹き飛び、中からあの青年が現れる。再び現れた敵意の目は今度は彼女のみを狙っていた。
「下がってて」
彼女の鋭い指示がとぶ。僕はその指示に従って慎重に4,5歩ほど下がった。
視界には敵意の眼差しを向け合う両者、そして一陣のそよ風が吹くや否や、両者は互いの方へとそれぞれの色の線を描き始めた。
僕の目の前で繰り広げられる熾烈な攻防。僕は目で追うのがやっとだったが、それでも彼女が優勢なのは明らかだった。最初のうちは両者とも互いの間を考えながら使い分けていたが、彼女が秘めていた短剣を使い出して以降青年は遠距離重視の防戦一方となっていた。
そんな中、ふと青年が僕を見つける。僕は目が合ってしまったことに動揺した。そしてその刹那、彼は今までと違う行動をとる。彼が標的にしたのは僕だった。
突如赤白い光が僕をめがけて来る。
(やられる…!!)
身の危険は察知出来るも、よけられるとは思えなかった。
そしてそのまま光は僕めがけて一直線に進み、
はじかれた。彼女に。
彼女はその攻撃が僕の方へとぶのを察知して駆けつけたのだった。
はじかれた光はその後すぐに爆発し、巨大な煙幕を張った。そしてその煙幕が晴れた頃には、もうあの青年の姿は無かった。