初戦闘とピンチの話
マーリンさんの初戦闘お披露目
大剣にしようか片手剣にしようか迷ったけど大剣にしました、大きい剣の方が強そうだしね
「うーん、これ僕必要だったのかな」
そう呟き目の前の惨状を見つめている
はっきり言えばマーリンは普通に強かった、洞窟に案内され中に入ってからしばらくするとゴブリンの群れに襲撃された、いざ初の戦闘と意気込み構えるといきなり後ろから大量の水が飛んできてゴブリンを押し流してしまった、後ろを見るとマーリンは筒のような物を手に持ってるだけだ
「その筒どう言う仕組みなの?」
「これはとある砂漠の商人から奪っ、譲ってもらった空間魔法が付与された水筒で中に大量の水が入ってるんだ、本来は飲み水に困る砂漠の横断などで役に立つんだけどね、今回はゴブリンを押し流して処理しようと思って持ってきたんだ」
今なんか奪ったとか言いそうになってなかったか?と言うより砂漠の横断って…その商人大丈夫なのだろうか、マーリンが一体どんな手口で商人から水筒を奪ったのか気になるがそれよりも
「でも流したくらいじゃまた戻ってくるんじゃないの?」
「かもね、でもいきなり大量の水を生成する人間に直ぐに立ち向かえるほどゴブリンは頭が良くないよ、何が起きたか分からずに混乱する、その間にもっと奥に進む、また戻ってきたら今度は別の方法で確実に仕留めるよ」
つまり今回水で流したような不確定な方法ではなくちゃんと処理できる腕前があるということか…しかしゴブリンの数は30は超えていた狭い洞窟内なので囲まれる心配は少ないがどうするつもりなのだろうか
しばらく歩くと不思議な空間に出た
「急に広くなったね」
「これだけ広いとオーガも動きやすそうだな」
オーガが動きやすい場所?それってつまり、そう考えた途端奥の方から巨大な岩が飛んできた、しかし全く持ってノーコンにも程があるどこを狙ったのか避けるまでもなかった
「お出ましだね、オーガが2体それとさっきのゴブリンが半分って所だね」
「なら僕はオーガを引き付けておくからマーリンさんは先にゴブリンの始末を」
「いや、先に全体に攻撃しとくよ」
そう言うとマーリンはローブのどこにしまっていたのかと尋ねたくなるほどの大剣を取り出した
「それどこに隠してたの?」
「あー僕簡易的な空間魔法が使えるんだ、これは個人領域って言う空間魔法の初期魔法で小さな空間を生み出してその中にいろんな物をしまえるんだよ」
なるほどゲームで言うストレージってとこだろうか、自分も使えるようになるなら大変便利である
「まぁとりあえずさっさと雑魚始末とついでに大物にもダメージを与えておきますか」
なんでもないと言うようにマーリンは言ってのけた
「魔法付与剣撃」
何そのカッコいい技名エンチャントソードってことは何かしらを付与してるのか、その能力は完全に空間魔法であろう遠くに居たゴブリンオーガ共々真っ二つである、全滅とかほんとに自分が来た意味あったのだろうか
「あれ、威力が強すぎたかな、まさか全滅なんて、オーガにしては弱すぎるな」
どう考えても射程外からの斬撃を放つ時点でマーリンがおかしいのである、この世界のオーガの強さは分からないがそれにしたって射程無視は圧倒的なアドバンテージだろう
「えっと、もしかして終わり?」
「キミ、それはフラグになるからやめてくれよ」
困惑したように呟きマーリンは奥に進んでく、確実に仕留めたかどうか確認するようだ
「まだ奥にゴブリンがいると思うけど、進むのも面倒だしここで少し待とうか、きっと出てくるよ」
「分かった、じゃあ待ってる間にさっきの技説明して欲しいんだけど」
「構わないよ、さっきのはこの剣に空間魔法を付与したんだ」
想定通りだ、問題はそれでどうやって遠くに斬撃を与えたのかだ
「剣に空間魔法を付与して斬撃を放つそしてその斬撃を空間魔法が自動的に保存してそれを対象の所まで転移させるんだ、飛ぶ斬撃と違って見えないし、知らないと素振りしてるようにしか見えない、知能の低いゴブリンやオーガならこれで問題なく倒せる」
自信満々に語るマーリン、と言うか飛ぶ斬撃なんてのもあるのか、かなりカッコイイ、自分にも使えるだろうか
「僕も魔法が使えるのかな」
気になったのでそう尋ねてみた
「へ?キミは転生者だから魔法は最初から使えないよ?まぁ物凄く練習すれば無理ってわけじゃないけど今すぐは難しいね」
なんだって?せっかく異世界生活の始まりだと言うのにみんな使える魔法が僕には使えない?しかも転生者だから?なんだそれまたいつもの理不尽なのか、そう思い落胆していると視界の端で何かが飛び出すのが見えた、マーリンは自分を慰めるので気付いていない、マーリンに伝えるか何とかして助けるべきだろう、だが体が動かない、足元を見ると不思議な魔法陣が敷かれていた
物陰から飛び出した小さな人影は動けない自分を無視して気付いていないマーリンに襲い掛かった、ギリギリの所でマーリンは気付いて回避を試みたが間に合わなかった、背後から殴られ吹き飛ばされるマーリン、相手の体格は小学生ぐらいだがその膂力から考えてオーガの幼体だろうか、吹き飛ばされたマーリンはかなりのダメージを負ったようで動けないようである
「マーリンさん!」
マーリンの元に駆け付けて追撃しようとするオーガから助けようにも足元の魔法陣のせいで動けない、いや動けないと言うより物凄く遅くされているのだ
動けない自分に動けないマーリン、そして相手はかなりの力を持ったオーガ、これは不味い二人とも殺され兼ねない、マーリンの注意が散漫なったのは自分が魔法について尋ねたからだろう、つまり原因は自分にある、ならばこの場面自分が動けなくてどうするのか、そう考えても全く持って動けない
「くそっ!この魔方陣さえなければ!」
言い訳気味に呟き足元を見る、いや待ってくれ魔法陣消えてないか?それはつまり今動けてないのは単純に思い込みなのである、大変カッコ悪い、だが今はそれよりもオーガの追撃からマーリンを持った守らなくてはならない
「鬼野郎こっちだ!」
手頃な石をぶつけて気を引こうとする、しかし鬼は1度こっちを見ただけでマーリンの方へと向かってしまう
「僕なんかよりマーリンの方を優先するのか」
戦力から考えれば普通なのだろうがマーリンが言っていた知能の低さから考えればこれで気を引けると思ったのだ、しかしその考えは甘かった
鬼はその小さな体からは想像も出来ない力でマーリンの足を掴みそのまま自分の方へと放り投げてきた、先程のオーガの岩よりも危険な状態だ、避ければマーリンは地面に頭からぶつかってしまう、勢いから考えて死んでもおかしくない、受け止めなければならない、思考の加速も虚しく対処を模索してる段階でマーリンは自分にぶつかり二人揃って吹き飛ばされてしまう、幸いにも意識を落とすことはなかった、マーリンも生きてはいる、しかし意識はない、何とかこの場を離脱しなければならない
「ちょっとタンマ!ストップ!」
話が通じるかわからないが鬼に対してそう叫ぶ
鬼はその叫びに困惑したかのように立ち止まる
「お前は同胞を無残にも殺してくれたんだ、なぜ待つ道理がある?」
もっともらしい意見である、しかしそんなのどうでもいいまずは自分が生き延びることそしてマーリンを生きて返すことこのふたつを最優先に行動する
「キミの仲間を殺してしまったのは悪かったよでもそれは君たちが僕達人間に対して不利益な事をしてきた代償なんじゃないのか?」
今自分に出来ること、それは敵をかっこよく倒すことでもマーリンを担いで逃げることでも無く、相手に話が通じることを祈り対話するのみであった
マーリンさん無双回…とはなりませんでしたね
次回は光君のコミュ力が試される命乞い回ですね