3章
だいぶ日が昇ってきたな。
朝の涼しさが段々と暑さに変わってきた。
「ふぅ…、そろそろ洞窟だね。」
『あぁ。外輪山っぽいのが見えてきたな。』
俺としては音々が汗ばんできてめちゃくちゃいい匂いがするからこのままで良いんだけどな。
『お前、ずっと歩いてるけど疲れねぇのか?』
「うん?普段から運動はしてるからあまり気にならないよ?」
『そうなのか?』
「女の子は体型の維持だけでもいろいろ頑張ってるんですー。」
『すげぇな…。俺なんか100m歩いたくらいでもへばりそうだ。』
「肌真っ白だったもんね。引きこもりかよって感じだったもん。」
『あー…、ほぼ引きこもりだったと思う。』
「えぇ…」
『だって外出るのめんどくさいんだもん。』
「どこがよ…」
『え、お前は運動ってどこでやってんの?』
「朝と夕方は城下町でランニングするでしょ、午前中は週に3回剣の練習があるでしょ、午後は週に2回くらい鍛錬の間で軽く筋トレするでしょ、…うん、これくらいかな?あとはテキトーなのをちょこっとやるくらい。」
『鍛錬の間?なにそれ。』
「お城にトレーニング用の部屋があるの。色んなトレーニング用具があって運動するには便利だよ。」
『へー、お城ってなんでもあるんだな…』
「これでも【エクリア】で一番の王国の首都だからね。ほら、洞窟に着いたよ。」
「洞窟の中ぐらいは人でいるか。」
「足引っ張んないでよー?」
「わかってるって。」
洞窟の入口は思ったよりゴツゴツしてるんだな。
中からはヒンヤリした風が流れてきて気持ちいいぜ。
~ディオルカダ地域の入口の洞窟内~
「この洞窟すっげぇ綺麗だな。なんでこんなに岩壁が青いんだ?」
「火山から噴出する鉱物の影響よ。様々な鉱物が混ざって淡い青色になってるの。それに、岩に含まれる冷鉄鉱が熱を吸収して発光するから中は涼しいし、ほんのり明るいでしょ。」
「あぁ、壁が若干水色に光ってるように見えるのは気のせいじゃなかったんだな。おかげで松明も要らねぇから便利だな。」
「洞窟内に地下水も通ってるんだけど、その川もとっても綺麗だよ。夏にはぴったりの観光地でしょ?」
「あぁ、やっぱ観光地にもなってたか。元々入口の洞窟で軽く整備もされてるし、ここ抜けたら村があるって言ってたし、そこに宿もあるだろうから観光には向いてるよな。」
「正解っ!蒼、結構頭良いのね。」
「そりゃどーも。にしても洞窟って割にはそんなに道はキツくないんだな。」
「楽な道を選んでるからね。そもそも外輪山の内側に溜まった雨が岩盤を押しのけて出来た洞窟だから、道は結構楽なの。」
「道理で地面に凹凸が少ない訳だ。元は川だったって訳か。」
「うん。火山性の岩盤だからね。あまり岩の硬さに変わりが無かったのかも。」
「なるほどね…。横道は結構入り組んでるように見えるが?」
「横に繋がってる洞窟は成り立ちが違うの。」
「成り立ち?」
「うん。ここはさっき言った通り、雨が勢いよく岩を押しのけてできてるんだけど、横に見えるのは鍾乳洞とかと一緒で地下水が時間をかけて侵食した洞窟なの。」
「なるほど、鍾乳洞と違って主成分は鉱物ってところか。」
「そうそう!だからあっちの方が入り組んでるし、さっき言った地下水の川とかも向こうにあるんだよ。」
「いつか寄ってみるか。」
「その時は任せて!この洞窟には何回か来たことがあるんだー。」
「そいつは頼もしいな。お、そろそろ出口か?」
「ホントだ、外が見えてきたね。」
「風が外に向かって緩やかに流れてんな。涼しいのもここまでか…」
洞窟を出て景色を見ながらしれっと鞘に入っていったのはバレていなかった。
~ターコイズ村~
『ここがディオルカダ地域入口の村、ターコイズか。』
「そうそう。昔から観光と商業で栄えてきたんだよ。」
村に入ってすぐに大きな広場があるな。そこを囲むように店や宿が並んでるのが見える。居住区はその奥にあるみたいだな。
『思ったより大きな村なんだな。』
広場の奥の方にはもう1つ広場が見えて、その奥にどデカい屋敷が見える。
あれが村長の屋敷ってとこか?
「そうだね。街って言うほど大きくはないけど、村っていうイメージよりは大きいんじゃないかな。」
『そうか、さっきの洞窟と遠くに見えるディオルカダ火山で観光の拠点にもなるし、ディオルカダ地域を出入りする商人が集まって商業も発達してんのか。よく出来た村だ。』
「元々は商人達の拠点だったみたいだよ。そのまま拡大して定住する人が現れたって本に書いてあった。」
『なんというかお前、ゼ○ダみたいだな。』
「誰?その、ゼr」
『おっとそれ以上は言っちゃダメだぜ?』
「え?あ、うん…?」
『とりあえず飯にしようぜ!ガッツリと魚が食いてぇ!』
「蒼って魚が好きなんだね。」
『まぁ、肉より断然魚が好きだな。』
「へぇ~…って、いつの間に私の鞘に!?」
『あれ、ずっと気づいてなかったのか。洞窟出てからずっとだぞ。』
「喋ってる間ずっと鞘に居たのね…」
鞘に居ると女の子特有のいい匂いがするからな、っていう心の声は言わない方が身のためか。
~ターコイズ村の飯屋~
「すげぇな、飯がバンバン進むぜ。」
「うん、美味しいね、これ。よく味が染みててご飯に合うよ。」
「なんの煮付けだっけ?」
「マグマグレっていうお魚だね。ディオルカダ地域の特産品で、火山で温められたあつーい湖とかに住んでるんじゃなかったかな?」
「あらお客さん、詳しいんだねぇ。」
「えへへ、ありがとうございます。」
「マグマグレはこの麓の所よりもう少し登ったとこの川やら湖やらで釣れる大きな魚でねぇ。あの辺は火山のせいで塩が混じってんのさ。だから湖なのに海水魚が釣れるのさ。」
「そうなんですか!面白い事を聞きました。」
「あんたらも釣りが好きならカップルで行ってみるといいさ。恋人と釣るのも楽しいもんだからねぇ。」
「な、ちょ、そんなんじゃないですっ!」
「あら、そうなのかい?お似合いだと思うけどねぇ。ま、楽しんでいってねぇ。」
「お、お似合い…」
「なんだ?どした?」
「い、いや、なんでもない。」
「そうか。ほら、俺はもう食い終わったぜ?」
「え!?はっや…。私もすぐ食べ終わるからもうちょっと待ってて。」
「あいよ。」
~ターコイズ村の宿屋~
昼飯の後は村にいた人達に紅き槍について知らないか聞きまわって(勿論俺は鞘で寝てたが)いた。
「いやぁ、今日は結構歩いたよな。疲れたぜ。」
「蒼が歩いたのは洞窟の中だけでしょ…」
音々はドレッサーの前でなんかいろいろやってる。
女の子って大変なんだなぁ…
「まぁまぁ、そう言わずに。」
「もうっ…」
ボフッ!
…っとベッドダイブはやっておくよな。
「っていうかなんで私と蒼が同じ部屋なのよ…」
「仕方ないだろ、2部屋に1人ずつってなると金もかかっちまうんだしよ。」
「むぅ…」
「ま、俺は先に風呂入って寝させてもらうぜ。」
「ホントにずっと寝てるわね。猫みたい。」
「猫ねぇ…。………にゃーお。」
「きもっ。」
「はぁ!?それは酷くないか!?」
「ふふふっ。まぁまぁ、そう言わずに。」
「なーんか馬鹿にされた気がする…」
「そういえば、蒼って、人の時は髪の毛が青くなってたりしないんだね。綺麗な黒髪だよね。」
「ん?あぁ、言われてみればそうだな。確かに剣の時は柄も深海みてぇに青いし刃も空みてぇな水色してんのにな。」
「でもおとぎ話に出てくる蒼はいつも水色っぽい見た目してるよ。」
「あー…、そういえば力がどうとかも言ってたな。記憶が無いのにも関係してんのかなぁ。」
「さぁ?どうだろうね。記憶が戻れば良いけど。」
「紅き槍だのなんだのを探しつつ、俺の記憶も探してみるか。」
「そうだね、そうしよう。」
・・・
ふぁあ。結構寝たな。…いや、そうでもないか。
何時だ?
んー…、九時前か。ヘッドダイブして寝たのが7時くらいだったような気がするから2時間弱くらい寝てたのか。
もうすっかり夜だなぁ。まだ夕方だったのに。
晩飯は何食べたか忘れたなぁ。
うーん、小腹が空いちまった。なんかねぇかな?
「ふんふふんふふーん…」
ん?
あぁ、音々が風呂入ってんのかな?
浴室から結構な音量で鼻歌聞こえてんぞ。
どんな肺活量してんだ。
にしてもまぁ年頃の女の子らしいキラキラした歌を歌ってんなぁ。
静かぁ~にドアを開けてね。静かぁ~に。
覗きはしないからね。
洗面所のドアを開けたらやっぱり電気付いてた。
脱衣場に続く木の戸が見える。
………行くか。
音を立てないように、静かぁ~に。
そぉ~っと戸を開けると…。
思った通り脱いだ服が置いてある。
すげぇ、いわゆる女の子の匂いってのが充満してるわ…
浴室の磨りガラスの戸が目の前に…。
その奥から水のちゃぷん、ちゃぷん、って音が聞こえるな。
丁度湯船に浸かってんのかな?
てか思ってたより凄い音量で鼻歌歌ってんのな。
これじゃ普通に歌ってんのと変わんねぇぞ…。
さて、服の方は、っと。
あぁ、几帳面だな。全部綺麗に畳んであるのか。
………よし。
ぽふっ。
顔面に女の子のいい匂いが当たってるねぇ。
肌触りの良い高そうな生地が顔に触れてるねぇ。
幸せだねぇ。
…ふぅ。
さて、あいつが上がる前に退散せねば。
そぉ~っと出てね。しれぇ~っと戻ってね。
とりあえず外でなんか買って小腹埋めるか…。
この作品を読んで頂き、ありがとうございます。
なんとか間に合いました、今月分。
なんというか、ただのデート回でしたね。
そういえばPCを購入致しまして、今後は執筆もその他もやりやすくなるかなぁと思っているところです。
なんとか完結できるよう頑張ります。
ついでと言ってはなんですが、知り合いが連載作品を始めまして、お気に入りあたりに置いてあると思うので、是非見てやってください。
まぁ、私みたいな底辺なろわーが宣伝したところで何になる、って感じですが(笑)。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!