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第5話「大ピンチ」

その時、私ははじめて、自分が左足に包帯をグルグル巻かれていることに気づいた。

改めて、今考えると自分は、左足に確かに強い痛みを感じていたんだ。

私ははっと我にかえって言った。

こいつになんか、もう会いたくない。

「あんたになんか、二度と会わないんだからね!帰ってよ‼」

男の子は、むっとした表情で言った。

「あー、そうかよ。おれだってお前には二度と会わねーからな!」

病室に、またピリピリした空気がただよう。

唯香が、ため息をついた。

「あーあ、エスカレートしちゃって……ふたりともけが人でしょ?」

すると看護師さんが言った。

「三七さんは、そろそろ検査の時間なのですが……」

あ、そうか。

ならどちらにしても二人には帰ってもらわないとね。

私は、すまないなと思ったけど、仕方なく唯香に言った。

「ごめんね、悪いけど唯香も帰ってもらえるかな……」

唯香は首をひねり、看護師さんにこんなことを言った。

「愛奈が検査している間、ここで待ってることってできませんか?」

……びっくりした。

そこまでしても、唯香はここにいてくれるんだ……

あの男の子とはおおちがい。

でも、看護師さんは申し訳なさそうに首をふった。

「すいませんが、お見舞いに来てくださった方が病室で待つのはご遠慮いただいております。」

ならどうしてもしょうがないね。

私は、唯香を振り返った。

「そういうことだから。」

唯香も、納得いったようにうなずいた。

「わかった。」

そして、二人は病院のドアから出ていった。


入院生活が三日間続いた。

楽しいわけではなかったけど、別に苦しいわけではなかった。

検査はいやだったけど、ね。


やっと退院して、私は教室へ戻った。

久しぶりに学校に通えること、クラスのみんなに会えることがうれしかった。

通学路を歩く道のりも軽やか…… ではなかった。

なぜなら、私は松葉づえをついてるから。

左足の部分だけ、ギプスでグルグルと固めてね。

なにせ、松葉づえだから歩くのも大変なの。

階段なんか歩けないから、エレベーターを使ったりした。

やっと教室にたどりついて、ドアを開けると……

……えっ。

みんなが、こっちをにらんだりくすくす笑ったりしていた。

とても気のせいとは思えない。

やだな、みんなの視線がこわい。

急に、前に進む気がなくなった。

でも、行かなきゃだめだ。

私はびくびくしながら教室の中にはいった。

私が席に着くと、女の子たちの声が間近に聞こえる。

「ほんっと、三七愛奈ってばーか。」

「そうそう、教室の窓から落下とか、けがすることわからなかったのかよ。」

「おまけに、『だめぇ!』だってさ。ぶりっこ。」

「ほんと気持ち悪い。」

ひどい。

そんなに言うことないじゃん。

まあ今考えたら、やりすぎだったかなとは思うけど……

そんな言い方ないよ。

私は、ほおづえついた。

傷ついてため息をついていると、突然声をかけられた。

「三七さん。」

私が振り向くと、クラスのリーダー的な女子、山崎里緒菜が立っていたんだ。

がたがたぶるぶる。

すくみ上がってしまった。

だって、このクラスで一番怖いんだもん。

男子以上にね。

栗色のくっきりした目、眉は細くてきっとしてる。

で、クラス一背が高い。

とても気が強そう。

敵にまわしたらだめだから、山崎さんのまわりには取り巻きが多くいる。

でも私は、そんなのにはなりたくない。

今も、山崎さんのまわりを取り巻きの女の子がかこんでる。

この人たちは、さっき中心で悪口を言っていた子。

なに言われるか、知ったもんじゃない。

どうしよう⁉

私、大ピンチ?






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