第3話「最悪な出会い」
私が、ライバルが増える衝撃で固まっていたら、唯香が、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、派手に大けがしたから、運動部には当然入れないわけだけど、その福川達也っていうやつが、
どうしても部活に入りたいって言うからあたしが家庭科部を進めたわけ。けがしてても入れるしね。」
だとしても、どうしてその転校生の男の子はどうしても部活に入りたかったの?
私なんて、今までは部活、行きたくなかったのに。
「友達が欲しかったらしいよ?転校してきたばっかりだもんね……」
あ……
私は、転校生の男の子が友達がいなくて寂しい、っていう気持ちと、早く友達が欲しいから部活動に
入ろうとするっていう行動にすごく同意した。
だって、私も家庭科部に入った一番の目的は友達をつくるってことだもん。
はじめはそうだったんだけどね……
私、気づいたんだ。
女の子たちに、かげで悪口を言われている人を見てね。
もしも、友達がいることで、傷つくようなことがあったとしたら。
私は、友達なんていらないなって。
私、ほんとは憶病なんだ。
傷つきたくないんだ。
自分のためなら、友情だって、恋だって捨てる卑怯な人間なんだ。
そんな女の子なんだ。
すると、静かで落ち着いた雰囲気の声がした。
「おれの話?」
一瞬、時間が止まったかのように、全員が固まった。
あんまりにびっくりしたんで、思わず、
「ぎゃあああああああああ‼」って叫んじゃった。
病院の床も壁も、地響きでがたがたゆれて、外にまで声が聞こえるほどだった。
だ、だって、部屋のドアのところに、あの転校生の男の子が立ってたんだもん。
びっくりしすぎて、ベッドの上に置いてあった自分のかばんを投げつけてしまった。
「おっと!」
男の子が、私が投げちゃったかばんを、慣れた調子でよけた。
でも――
男の子の頭に、かばんがばさっ。
男の子が、うつぶせになって倒れた。
「大丈夫っ⁉ ごめん私が、かばん投げたから……」
私は、思わず声をかけた。すると、
「あいて――……」
頭をさすりながら、男の子が頭を上げる。
男の子と目があった。
さらさらヘアーの黒髪に、美しい顔立ち。でも、がっちりした肩幅。
ちょっとかっこいい。
と、思ったら……
あれ?
男の子はいつまでたっても、私から目を離さない。
私をじっと見てるんだ。
やだ、わたし、格好どこかおかしい?
変?
私、思わず顔を赤く染めた。
すると、男の子がぶっと噴き出した。
かと思うと、真っ黒な目でにらんで言い放った。
「おまえ、なにかばん投げてんだよ!よく考えろよ!」
え……
男の子の言葉が、針のように私の胸にちくっと刺さった。
目の前が、真っ暗な闇におおわれた気分だった。
初対面なのに。
少しは、言い方ってもんがあるでしょ⁉
今度は、怒りで私の顔が真っ赤になった。