第12話「真凛との再開」
その日、私はもう、満足感いっぱいだった。
だって、特にとりえもなく、偶然に福川くんと知り合った私は、ついちょっとしたことに
幸せを感じてしまう。
お昼を一緒に食べてくれる人がいる。
私の話を聞いて、盛り上がってくれる人がいる。
そして、ときには真面目に、向き合ってくれる人がいる。
みんなにとったら、たいしたことないかもしれないけど、私の毎日は、その小さな幸福を保っていく
ことだけに必死。
だから、だからこそ、山崎さんに大切な人を取られたくなかった。
私の生きがいを与えてくれた人を。
ただ、それだけ。
自分の中で、そう結論づけてるんだけど、最近なぜかそれに、満足できない自分がいるんだよね。
すごくモヤモヤ感がする。
雲り空の中、帰り道を歩きながら、そんなことを考える。
自分が出した結論を冷静に、
『愛奈ったら、福川くんを好きなんじゃないの?』とか、
『山崎さんに、やきもち焼いちゃったんじゃないの?』とか、
自分の考えについて、ついアドバイスを加えちゃう自分が、心の中のどこかにいるというか。
まあ、福川君を好きかもって、一瞬、考えたこともあるよ。
顔も、性格も、タイプだし。
でも、それは自分で、恋じゃないって言っちゃってるし。
どうしたらいいんだろう。
なんてことを考えてたら、いつの間にか私が、同じところをぐるぐる回っていることにきがついた。
小さな住宅街を一周して、さっきと同じ場所に戻っていたんだ。
うわ~~~~~!!
アホだ、私。
私はそのあと、大急ぎで家に帰った。
なんかもう、思い出しただけで恥ずかしい。
絶対、周りの人にも見られてたよね⁉
変って思われたに決まってる。
ああ、自己嫌悪!
立ち直れ、立ち直れ私!
必死になると、つい窓の外を見ちゃう。
見上げると、空にすっかり雲は消え、少し赤くなった、でもまだ青い、そういう風情だった。
こういう空、好きだなあ。
よし、このことを福川君への手紙に書こう。
そうか、こういうことを書けばいいのか!
いままでも、書き溜めようとは思ってたけど、いざ書こうとすると、何を書こうか悩んで、
結局のところ、書けないのよねぇー。
目の前のもやが、パッと晴れていく気分だった。
わからないことが、わかるようになるこの感じ、楽しいな。
次の日、私は授業が終わると、久しぶりに家庭科室に足を運んだ。
行かないと、唯香に怒られちゃう。
コンテストまで、残り時間もないしね。
何より、福川君に会える、大切な時間だから。キャー、恥ずかしい。
私、なんてことを考えてるの!
やっぱり私、福川くんが好きなのかな。
どうしよう、これから。
あったら、なんて話せばいい?
いつの間にか私が立っていたのは、家庭科室の前。
私、相当ぼーっとしてたんだなあ。
周りの人たちも、クスクス笑ってる。
あ、また恥ずかしい。
見ると、中にはもう部員が大勢いて、それぞれ自分の席に座っていた。
こういう集まりって、遅れると気まずいんだよね。
私はそーっと入って、あわてて自分の席を探した。
あ、ここだここだ。
窓際の席が空いていたので、そこに座る。
隣には、唯香と―――
「あっ、真凛!」
私は、友達の渡辺真凛を斜め前の席に見つけて、声をかけた。
「愛奈!久しぶり。」
真凛は、家が隣の幼なじみ。
小学校のときからの友達。
中学のとき、同じ高校に入れるようにってがんばって、二人とも入れたはいいんだけど、クラスが
離れちゃったの。
それが、またこうして、真凛といっしょになれるなんて!
たまにでも、部活を訪れると、いいことあるものなんだね。
「三七。」
あ、福川くん。
見たら、通路をはさんでお隣が、福川くんだったんだ。
ああ、私、部活が好きになれそう。
すごく楽しみ。
この仲間たちと一緒に、コンテストに出られるんだ!




