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loop.1 STAGE

  僕はただ歩き続けることが好きだ。

  一応言っておくが、ジョギングじゃない。健康のためでもない。ただ頭を空っぽにして歩く。そうすることで自分の周りのことが入り込みやすくなる。理由は自分の思考のリソースが少なくなるからだろう。それが好きなんだ。

  だからその日も歩いていた。結果を言うとその日は頭を空っぽには出来なかった。8月の真夏日なら当然のことだと思う。

  ニュースによると猛暑日が5日連続で続いたらしい。そう考えると今日みたいな真夏日は少し涼しいのかもしれない。でも身体はそうは感じない。温度を感じる神経が馬鹿になっていた。

  だいたい気温を測っているのは、風通しのよい場所で少し涼しくカウントされる。そう考えると街中は猛暑日と同じくらいの気温はあってもおかしくない。

  頭を空っぽに。その言葉で頭の中が埋め尽くされる。そのせいで集中できなかったのもあるだろう。


  ということで少し休憩を取る。こういう時は気分転換するのに限る。ちょうど公園があったのでそこに入り、ベンチに腰をかけた。

  目の前を見てみると、子供たちが元気よく遊んでいる。この暑さでこんだけ動ける子供を見ると、彼ら彼女らは体の中で太陽光発電をしてるのではないかと思った。

  その遊んでいる子供たちを尻目に日傘をさして、談笑しているのは彼ら彼女の母親だろう。その光景を見ると、とても母親が健気に見える。この暑さの中、子供に連れられるなんて地獄ではないか。

  少し子供たちが遊ぶ光景を見ると心が和み、暑さを忘れる。ちなみにショタコン、ロリコンではない。そして俺はもう少し散歩しようと腰をあげた。

 

  ふとそこで気付いた。ベンチの隣にぬいぐるみが落ちていることに。

  ぬいぐるみは動物とか一般的なものではなく、たしか今、子供の間で人気があるアニメキャラクターだった。

  なんとなくそれが次のループのトリガーになりそうな気がした。ここで拾って、あの母親たちに渡せば、ループせずに済んだろう。

  だが俺はそうしない。優しさというのは諸刃の剣であることを分かっているからだ。

  無闇に人に優しくすると、それは嘘っぽく見える。なぜと言われれば、人の本性は悪だからだろう。それを皆知っているから、優しさを振り撒くのは危険なのだ。優しさは必要最低限でいい。

  ここぞという時に優しくすることが優しい人の条件なのだ。いつも優しい人は腹黒く見える。

  まあ……本当に助けが必要ならループするしね……。原因がすぐ分かるなら、これでもいいだろうと思った。

 

  そして散歩を再開する。今日は暑いので数キロが限界だが、春とか秋の暖かな日なら20キロはいける。

  先ほどループのトリガーが落とし物のぬいぐるみだと思ったが、一面を見渡すと困ってそうな人はいくらでもいる。もちろん少し頑張れば彼ら自身でどうにかなりそうなものも多い。

  車がそこそこ通る割に信号がない横断歩道を渡りずらそうにしている妙齢の女性。真夏だというのに道に段ボールをしいて、眠っているホームレスらしき男性。 

  だからあのぬいぐるみでトリガーは確定ではない。全て推測なのだ。分かるのはタイムリープの能力を与えた神のみ。


  しかし暑さには参った。夏を楽しめる人間というのは、きっと友達が多い人なんだろう。海で泳いだり、山でキャンプしたり、心霊スポットで肝試ししたり。そういうイベントに積極的に参加することが暑さを忘れられる最もよい方法だから。

 

  夏の日射しが肌をジリジリと焼く。身体中が火だるまになっていくようだ。そうすると意識が朦朧としていった。

  熱中症かと思ったが、水は飲んでいるしさっきベンチで休憩もした。しかしそれだけでは熱中症という疑惑を晴らすことは普通できない。人間はリスクを嫌う生き物だから。

  しかし僕はリスクというのをあまり考えたことはない。ループ出来るから。ループのトリガーは困っている人の存在なので、自分の人生を大きく変えることはあまり出来ない。しかしループしてる間の行動なら変えられる。だからあまりリスクはないと思っていた。


  そう考えている間にも意識が暗くなっていく。しかしこれは熱中症ではない。この感覚はループする直前の感覚だ。今までの経験から分かる。


  そうして抗いようのない意識の混濁。それに何の危機感も抱くことなく、やがて視界はブラックアウトした。 

ナンバリングはloop.〜となっていますが、それ=〜周目ということではないので気をつけてください。ちなみに今回の話は0周目です。いきなりややこしくてすみません!

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