loop.0 ABILITY
僕、七条計はタイムリープの能力を持っている。
この能力を保有しているのに気付いたのは、小学校三年生の時。今は高校二年生なので八年ほど前になる。始めは何が起こっているか分からなかったが、体感時間で何日間か経ったときにやっとループしていることに気付いた。多分それが最も長いループだったと思う。
それからはいつループするのか、何がトリガーでループするのか。それが分かるようになり、ループを脱出しやすくなった。
いつループするのか、これはバラバラだ。気付いたらループに入っていて、元に戻っている時が多い。
何がトリガーだが、これもバラバラだ。しかしこちらはいつループするかより、規則性がある。基本的には困っている人の存在だ。
例えば迷子の子供を親の元まで送ってあげたり、老人の物を持ってあげたり、外国人の道案内をしたり。
そしてそれを助けてあげればループは脱出できる。そして助けられる可能性が限りなく0に近づいたときにループする。助けること自体はとても簡単だ。だから今までこの能力で困ったことはない。
しいて困ったことを挙げるならいい子ちゃんぶってると批判されることだが、実際に行動し人を助けることには変わりないので優しいと言われることの方がよっぽど多い。
あと他にある制約といえば、他人が遂行してはいけないということだ。他人が遂行したらループという感じだ。落とし物をしたら警察に届けて、持ち主に返すということが通用しないということだ。しかし警察などに頼るよりも自分でやってしまった方が速いので、これも困っていない。
この通り、漫画やアニメとかでよく出てくるタイムリープの能力とほとんど変わらないが唯一、明確に異なることがある。
それはループで失ったものは元には戻らないということだ。
ループの途中で花瓶が割れたとしたら、次のループでは、その花瓶は元から割れていたものだった、という感じで進んでいく。
これが一番、厳しい制約だと思っている。だがループの原因は簡単な救済だけで取り除ける。これの影響を大きく受けることはないと思っていた。
だがこの制約のおかげで僕の人生は終わった。ループに閉じ込められた。
ずっとこの能力は神から与えられた恩恵だと思っていた。これがあることで自分は色んな名誉を手に入れてきた。分かりやすいものだと、警察からの感謝状。
自分は神に選ばれたのだ。そう思った。それは周りの有象無象との差としては十分すぎるものだった。
しかしそれは神によって与えられた恩恵ではなかった。業なのだ。僕はこの能力を悪用したことはない。だが少なからずこの能力を持っていないと思っていた者を卑下した。
その結果がこれだ。もう元には戻らない。打てる手もない。
それなら少しくらいそこまでに至る話をしてもいいだろう?
時間はたっぷりあるのだから……。
どうも!初めましての方は初めまして!いつも読んでくださっている方はありがとうこざいます!明日野ともしびです!
自分は「16歳ニートの職場体験」というものも連載しているのですが、それはヒューマンドラマで今回は初ファンタジー作品となります。楽しんで頂けると幸いです!