第二章 事前準備はしっかりと! その一
チュンチュンチュン・・・・・・・
グワッ、グワッ・・・・・・
窓の外から聞こえてくる鳥の声。
「んんんん・・・・・・・・」
わたしはゆっくりと目を開けた。でも、少し息苦しい。
目を開けると、目の前は真っ暗だった。
「!?」
周りに手を置いて握りしめると、ムニュッとした感触。
「んんっ」
頭上で真美の声がした。と、いうことは、これって・・・・・・・・・・・
「大和、おはよう。」
真美がわたしの頭をなでる。わたしがつかんでいたのは真美の胸で、わたしは真美の胸の間に顔をうずめていたんだ。
(しかも、何気に気持ちいいじゃん・・・・・・・大きいし)
わたしのまな板とは大違いだ。さすが保存会一のスタイルの良さと美貌を持つ真美。
「んんんん・・・・・・・・」
わたしの背中越しに、カンカンの声が聞こえた。
「あ、おはよぉ。そうか、昨日は同じベッドで寝たんだったね。」
「そうだよー。で、今日は野口自工に行って車輪旋盤の整備。」
カンカンが言い、それに真美が答える。
「じゃあ、朝ごはん食べてからいこっか。」
わたしたちは私服に着替えると、一階に向かって降りて行った。
「はぁ!?旋盤をいじらせろ?」
フライス盤をいじってた翔悟がこっちを向いて言う。
「そう。ダメかな?」
「ダメに決まってんだろ・・・・・・・・素人にいじらせられるかよ」
翔悟がフライス盤に向き直る。
「でも・・・・・・」
翔悟がこっちに向き直った。
「俺という『経験者』が指導するならいじらせてやってもいい。」
わたしたちの顔がぱぁっと輝く。
「ありがとう!翔悟!」
真美が翔悟に抱き着き、キスをした。
「ちょっ、やめろ!」
翔悟の顔が一瞬で赤くなる。
リア充どもめっ!爆発四散し(以下自粛)と心で思うわたしとカンカンだった。
「まずは、分解する」
翔悟がそういって、天井につられているホイストを動かした。
「はーい!」
真美が工具箱をもってきて、中からスパナを取り出した。
わたしたちも、スパナを取り出す。
「こことここを同時に緩めろ。ボルトは間違ってもなくすんじゃねーぞ!」
翔悟の指導の下分解が進んでいく。
その後も同じような作業を繰り返したけど、それは割愛!
夕日が西の山に沈むころ・・・・・・・・・・
「終わったー!」
地面に座り込んだ真美が声を上げる。
国鉄蒸機の動輪削正にも使えるくらい大きな旋盤はバラバラに解体されて、翔悟が部品一つ一つを丁寧にチェックしていた。
「あしたまた来い。それまでにはあらかた準備はしとく。」
翔悟がこっちを向いて言う。
『ありがとう!』
みんなで一斉に頭を下げると、翔悟はひらひらと手を振った。
今日の作業はここまで!