表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/53

プロローグ6

 これだから、ランは困る。

 ちょっとした事で、すぐに怒り出すのだ。

「ラン、止まれー」

 振り返った。私の声にはなんとか反応するようだ。

「何?」

「外に出ない方が良いよ」

 これは本当だ。舞踏会の会場である講堂とこの図書館は近い。しかも舞踏会に行った女性達のほとんどが、あの王子目当てだ。よって、今外に出て姿を見られたら大騒ぎになる。

「こっそり見てごらん」

 ランが扉に手をかけて、わずかに開け、すぐに閉められた。

「人がいっぱいだよ」

 やはり、そうだったか。止まってくれてよかった。

「だから、開けるね」

 しかし、ランはそう言うと、扉を開け放した。

 講堂の周りにいた女たちがこっちを振り向き、ラン、私、シロツメさん、そして王子を見止めると、次々と駆け寄ってきた。

 すっかり失念していた。

 ランは悪戯が大好きなのだった。

 シロツメさんは王子を抱えて、とてつもない速さで裏口から出て行った。


 その後どうなったかは聞いていないが、たぶんあのシロツメさんのことだろう、無事逃げ切れたに違いない。それにあの後、無事に舞踏会が執り行われ、定刻に終わったようだったから。

 怒り気味のランは自分の家に戻って、旅の支度をしているだろう。明後日出発だ。

 本当は明日だったのだが、王子のせいで一日ずれる事になった。まあ、目的地すら曖昧な旅なのだ。いつ出発しても問題は無いだろうとは思うが。

 その目的とは、ランの魔法――当人は否定しているが、魔法と定義しても良いだろう――の存在理由を調べる事だ。

 自分が成人したらすぐに出発する、とよくランは言っていたものだ。それが明後日に実現のものとなる。

 最初は私と二人で行く予定だったのだけど、町長がシロツメさんを同行させてくれると聞いて、お言葉に甘える事にした。シロツメさんがいれば道中は安全だろう。

 すでに準備が終わっていた私は、机の上に置いてある『物質の原子説』という本を手に取る。

 これが読んでみるとなかなか面白い。

 たとえば、鉄を精製するときに必要となる炭素と、発生する気体を、こう考えれば理解できるそうだ。鉄をI(オダマキ語でIronの頭文字)という原子の集まり、炭素をC(オダマキ語でCarbonの頭文字)という原子の集まり、あと何かもうひとつの原子Aがあるとすると、最初は分子IAというものがあって、それを高温高圧下で炭素と合わせる事で、AがIから離れてCにくっつく。そうすると、IとCAというものができる。CAが気体ならば、精製機内の炭素が減っている説明にもなるし、鉄が軽くなった事の説明にもなるわけだ。

 原子説は本質を突いているのかもしれない。

 そんな事を考えながら、サザンカは眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ