30:大道芸
いつの間にか、私達の周りは人で一杯になっていた。
子供からお年寄りまで、まさに老若男女。所々獣人や魔物の姿も見える。
そんな中で歌っていたが、四曲ほど歌い終わるとさすがに飽きてきたのか、前の方に座っている子供達が騒ぎ始めた。
「ねえ、他に何かやってよ」
私は、苦笑をしながらサザンカを見る。彼女も私と似たような顔をしていた。
「しょうがないな。お姉ちゃん達が、不思議なことを見せてあげよう。どなたか、半ロート硬貨を貸して頂けませんでしょうか」
そうサザンカが言うと、群衆の中から一人の黄色い髪の少女が、前に出てきて貸してくれた。
「有難うございます。折角だから、しばらく近くに立っててくれるかな?」
その少女は、言われた通りサザンカの隣に立つ。
「お名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。わたしはの名前は、タンポポ」
「有難うございます、タンポポちゃん。それでは、早速始めましょうか。不思議なショーの始まり始まり」
サザンカが見せたのは、硬貨が手の中で消えたり出てきたりするものだった。
横から見ていた私ですら、どうやっているのかは分からなかった。
いつの間にか演技は終わっていたらしく、なぜか私に視線が集中していた。
「ラン、何かやってほしいんだって」
「何かって?」
「大道芸」
分かりきった事だったが、私に何が出来るだろう。
せいぜい楽器を演奏する事位だが、それはもうやってしまっていた。
あと残ったのは、術か。
と言っても、上手く誤魔化せなければならない。
「それじゃあ、ラン、これでダンシング・ケーン、出来るよね」
サザンカは、どこからか取り出した杖を私に渡す。今のはアピアリングケーンという手品だろう。
ダンシング・ケーンとは。杖、あるいはケーンを空中浮遊させた状態で自由自在に動かす。
勿論、手品の場合はタネがあるのだが、これから私がやろうとしているのはタネが無い。術を使えば簡単な事だ。
「うん。分かった。それじゃあ、私の手品も、見てください」
手品ではないのだが、あまり術の事は一般に知られたくない。
サザンカによると、魔女狩りが四百年程前から大体二百年間起こっていたのだ。歴史は繰り返される。




